61話 面倒だった
突然ですが、緋煉について質問させていただきます。
ずばり、緋煉はヒロインに昇格した方が良いか否か。です。
いやぁ、前言を翻すようでなんですが、読者の皆様に楽しんでもらうのが一番ですからね。今ならギリギリ修正も出来ますし、どうでしょう?
感想でも個人メッセージでもいいので、希望があれば一言くださいな。あ、1人1票ですからね。
※これに関しては完全に多数決となります。もしこんなことに熱意を持って下さる方が居たら、申し訳ありません。
※期限は12/25までとします。26日になったら締切りです。
タクが王城に忍び込んでから一夜が明け、再び日が沈んだ頃。
きちんと区画整理がされている王都の中の、夜は全く人気が無くなる商業区。そこの中央にある時計台広場で、
「でやぁぁぁ!」
「……っ、ふっ!!」
「ぎっ!?」
赤の勇者3人と、白い仮面を着けた艶やかな黒髪の女性が戦っていた。漣は片手剣を、玲湖は弓を、祐樹は装飾剣(笑)を持って、2本の細剣を巧みに操る女性を苛烈に攻めている。
しかしその刃や鏃は緩やかに優しく逸らされ、魔法はその尽くを斬り払われ、もしくは躱されてしまって効果は1つも出ていなかった。
(ふむふむ……十分に対応可能か。……それにしても衛兵が多い)
黒衣の少年は哂う。その手に血濡れで虫の息の衛兵をぶら下げながら。
眼下では彼の恋人であり従者でもある女性が赤の勇者と対等に、いや、むしろ押している雰囲気すらある。今も切り込んできた漣の剣を逸らしてから腕を斬りつけているのだ。その技量には歴然とした差があるのは誰の目にも明らかだろう。
祐樹から飛んでくる魔法は女性が使う、とある秘術によって酷く減衰されてしまう。女性に届く頃にはちょっとした火種のようになっていて簡単に細剣で払われる。
漣の後方から飛んでくる矢もまた労せず弾かれていた。そもそも普段の組手で飛んでくる拳の方が早いのだ。しかも矢は軽い。女性にとってそんなものは障害でも何でもなかった。
「くっ、強いね」
「赤井、ホントにあの女のこと知らないの? 手紙だってタキツの名前で書かれていたんでしょ?」
「知らないっつーの! アイツの女は金と蒼だっ! 《メラ・スピア》!」
「じゃああの娘は誰なんだい?」
「だから知らないって! くっそ! なんで魔法が効かないんだよっ!!」
「ブチブチ言ってないで撃ちなさい! あたしだって矢が当たらなくてイライラしてんのよ!」
(バカは連携も出来ないのか。というか何故コイツらは1ヵ所に固まってんだ? 普通、後衛職の方が多いなら別方向からの攻撃だろ。前衛は搖動・攪乱が基本なんだが……あぁ、そうか、バカだもんな)
少年は嗤う。あまりにも上手くいきすぎて。
それは彼の眼下で繰り広げられている光景のことではない。最近は表舞台に出ることが多かったから忘れがちだが、本来なら自分が関係しないところで全てを終わらせるのが彼のやり方なのだ。彼自身が活躍している現状を歓迎できるわけがない。
と、その時、黒髪の女性が動いた。
「……『扇壊』」
バガァァァァァァアンン――!!!!
(おいおい……いやまぁ禁止はしてないが……それはそこらの魔法よりも性質が悪いだろ……)
『扇壊』。超速で得物を振るい、衝撃波によって敵を殲滅する技だ。有効射程距離は10~15mほどと短いがその速度と扇状に広がる攻撃範囲は凶悪である。今は武器の耐久度とか、女性の身体強化のレベルとかの理由によってこの程度に収まっているが、本来はこれよりもさらに鬼畜な技だったりする。
さて、そんな技を食らった勇者達はというと――
「う、ぐっ……」
「………………(ぴくぴく)」
「なん、なのよ……」
たった1撃で壊滅していた。一番離れていた玲湖が辛うじて話せる状態のようだが、漣は衝撃波がモロに当たってボロボロ。祐樹は離れていたはずなのに気絶していた。
「ふむ」
「あげっ!?」
「……あ、マスター」
「フィム、実験は終わりだ。《色彩調整》も解いていい」
少年――タクが漣の意識を刈り取りながらそう言うと、今まで艶やかな黒髪だった女性が輝く金色の『天女』に早変わりした。言うまでもなくフィムだ。そのフィムも玲湖の意識を刈り取っていた。これで勇者の3人は完全に敗北したことになる。
「どうだった?」
「……問題ない。余裕」
「だろうな。コイツらが成長すればどうかは分からないが……ま、その頃にはフィムも成長しているだろうしな」
「……ん」
「にしても、『扇壊』を使う必要があったか? 普通の剣技だけで十分に圧倒できたと思うが」
「……面倒だった」
「……そか」
最近のフィムはタクとその仲間以外はどうでもいい、というスタンスを作りつつある気がする。『扇壊』だって至近距離で放てば内臓破裂などを引き起こし、簡単に人を殺せる技なのだ。今回はタクから殺すなという命令が出ていたから良かったものの……そうでなければ漣は死んでいたかもしれない。
「後はこれを縛るだけか。呆気ないな」
「……あの手紙、ズルい」
「知らん。のこのこと出てくるのが悪い」
ちなみに、タクが書いた手紙とは次のような内容だ。
『どうも日本人の祐樹さん。先日はとても無様でしたね。
さて、グダグダ書くのもあれなので本題に入りましょうか。実は私は神様からチートを貰いました。ええ、勇者なんかよりもよほど使えるものです。
このチート、実は殺した人が奪えるのだとか。つまり祐樹さんが私を殺せば便利なチートが手に入るわけですね。どうします? 勝負しませんか?
条件は他の勇者2人も連れてくること。場所は商業区中央の時計台広場。時間は0時を予定しています。奮ってご参加くださいませ。
追記:頑張れ勇者(笑) ――タキツより』
普通に嫌がらせの類である。しかしこの文を読んで頭に血が昇ってしまった祐樹は、残りの2人に詳細な説明をせず、そのままここに連れてきてしまった。まぁ、無駄にゲームのイベントっぽい指定があったのも良くなかったのかもしれない。勇者の側からしてみれば。
「……あと、2枚?」
「そっちはまた面白くなるように置いてきた。明日には呼び出されるだろうな」
タクが予め手紙として準備していた羊皮紙は3枚。1枚はもう祐樹に送られた。では残りの2枚は? という話だ。その内1枚は王妃の枕元に置かれていて、現在の王城内部は大騒ぎになっているのだが。
「タク様ー!」
「龍瑠か。そっちはどうだった?」
「概ねは上手くいきましたよ。ただ、そろそろ衛兵が来てしまいます」
「じゃあ手早くやるか」
「……ん」
その後タク達は、とある仕掛けを施してその場を後にした。それから30分ほど後に衛兵達が押し寄せてきたが、そこには気を失った衛兵7人が無傷の状態で寝かされていただけで特に異常は見られなかったという。
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翌朝。タク達が泊まっているホテル『森の水飲み場』では、ちょっとした騒ぎが起こっていた。
「――ですから、ここは通せません!」
「ここに国賊が潜伏しているかもしれんと言っておるだろうがっ! それを庇うと言うなら貴様らも反逆罪に処するぞ!!」
「うっ……」
王都でも最高級のホテルに王国騎士団の一部が押しかけて来ていた。国賊が居るとか寝耳に水なホテル側は、事実確認のために駆けずり回っている最中だ。よりにもよってタク達が泊まっているのは最上級の部屋であり、たとえ国賊の疑いが掛けられていても無礼な対応は出来なかった。
そこに――
「クッ、ハハ……勇者を倒しただけで国賊かよ」
「……自己中?」
「国を運営するのは大変だということでしょう。タク様が悪く言われるのは許容できませんが」
――失笑気味のタクと、若干機嫌が悪そうな女性2人が出てきた。それと同時に、その場に居た全員が黙り込んだ。鍛え上げられた騎士達も、鎧をガチャガチャと震わせて脂汗を滝のように流している。
「さて、騎士サマ。どうやら俺は国賊らしいな?」
「っあ、あぁ、そうだ。貴様がアカイ様を卑劣な罠にかけ、貶めた――」
キンッ! バガン!
「……言葉、選ぶべき」
「次はその中身の無い頭を潰しますからね?」
先ほどまでホテルの店員に向かって怒鳴っていた騎士の全身鎧の右半分が断ち切られ、左半分が殴り砕かれた。騎士はもう真っ青だ。それでも怪我1つしていないのだから、ある意味では感謝するべきかもしれない。
「ひ、ひっ」
「悪いな。怒らせたのはアンタだからそっちで何とかしてくれ」
縋るようにタクを見る騎士だったが素気無く断られた。実はここまで予定通りの三文芝居なのだが……タクが発する威圧と、フィムと龍瑠の本気の怒りで相手の士気は半ば折れ掛かっている。これでは冷静な交渉もできないだろう。
「……燃やす?」
「殺すのは不味いらしいですよ? 取り敢えず四肢を砕いておけばいいのでは?」
「……そうする」
「ま、待て! 待ってくれ!」
「……言葉」
「待ってください!!」
フィムが尻餅を着いた騎士の膝に足を乗せたあたりでその男は降参した。
「じゃ、お城に連れて行ってくれよ、騎士サマ」
「……了解した。きさ、君を王城に案内する」
「……やっぱり」
「妾達なんかよりタク様の方がよっぽど怖いですよね」
「……ん」




