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18話 ステータスプレート

「ええっと……すいません、もう一度最初からお願いできますか?」


「はい。まず、この教会は四属教しぞくきょうを信仰している方々のために建てられたものです。

 四属教は、全ての元となる4属性を司る女神様方を信仰しています。タチバナ様はご存じないかもしれませんが、この世界は〔火〕〔水〕〔風〕〔土〕の4つで構成されているのです。

 4柱の女神様方はこの世界を脅かす敵と戦い、この世界のどこかへと追いやったと伝えられています。それが元になり、四属教も戦い、敵を退けることが教えとなりました。それが私たちの装備の理由ですね」



 タクはつい先ほど聞いたばかりの説明を聞き、心中で盛大な溜息を吐いた。

 要約すると、ここは超好戦的な集団なのだ。目の前にいる女性も身長と同じくらいの大剣を背負っていて、お世辞にも穏やかとは言えなかった。



(まあ女神とやらが戦ったのは納得できるよ? だけどさ、だからってそれを教えにするのもどうなんだよ。上司が喧嘩腰だからって部下まで短気になる必要はないだろ)



 まあ、つまりはそういうことだ。普通ならば戦いが終わった後に、平和を守ることが教えになるのが定石セオリーだろう。それをどう間違えたら「戦い続けろ!」という教えになるのかタクには理解できなかった。



「……そうだったんですか。色々と納得できました(嘘)。それでですね…俺たちのステータスプレートというものって今から作れますかね?」

「はい、できますよ。すぐに始めますか? 10分ほどかかりますし、1枚作成するのに半銀貨1枚が必要になりますが」

「それくらいなら問題ないです。フィムもいいな?」

「……ん」

「じゃあこれ、お金です」

「はい、たしかに。それではこちらに」



 ガチャガチャとうるさい鎧に案内された部屋には、床一面を覆うほど大きな魔法陣が描かれていた。淡く黄緑色に発光していてどこか幻想的な光景だ。



「ここは?」

「この部屋は地理的に魔力の濃い場所にあるのです。その膨大な自然の魔力を使って魔法陣を発動させ、乗っている人物の魔力を読み取ってその人の適性や素質を解析します」

「それを書き込んだものがステータスプレートということですか?」

「そういうことです。では陣に乗ってください」

「2人同時でもいいんですか?」

「問題ありません。同時に10人までならプレート作成も出来るので」

「そうですか。よし、フィム」

「……ん」



 2人で魔法陣の中心に立つ。それを確認してから大剣を背負った女性が詠唱を始める。

 それは1つの長い歌だった。時に燃えるように、時に流れるように、時に吹き荒れるように、時に恵みを与えるように。

 その歌も終わりを迎え、魔法陣がより一層輝きだす。しばらくしてその光が収まると、2人の足元に金属のようで違う、不思議な半透明の材質でできた片手サイズの板が置かれていた。



「……ますた、これ」

「ん? これが……?」

「ふぅ、はぁ…そうですよ。それがお2人の…はぁ……ステータスプレートです」

「ありがとうございました。ゆっくり休んでくださいね? これを作るのがここまで大変なことだとは知らなかったので……」

「いえ…ふぅー……大丈夫です。お気遣い感謝します。早速ですが、見てみては?」

「それもそうですね」



 約10分間の聖唱せいしょうを終えた女性はくたくたになっていたが、すぐに息を整えた。どうやら見かけだけではなく中身(体)も鍛えられているようだ。その事実に内心で呆れるタク。実は戦争の準備をしています、と言われても納得できそうだった。

 それはともかくステータスプレートだ。そこにはシンプルに名前とレベル、適性のある属性が表示されていた。



==========


名前:立華 沓木

Lv:8


適性:戦闘技能〔暗殺〕〔遊撃〕〔対集団〕

   魔法属性〔空〕〔癒〕〔速〕


==========



==========


名前:セラフィム

Lv:1


適性:戦闘技能〔体術〕〔双刀〕〔補佐〕

   魔法属性〔聖〕


==========



(意味わかんねぇ……だってさっき4属性が全ての云々うんぬんとか言ってたじゃん。それなのに〔空〕とか〔聖〕とか出てきちゃったんだけど? てか俺が魔法使えても無意味に等しいんだが……)


「……ますた、フィムよめない」

「宿に帰ったら教えてやるからちょっと待て」

「……ん」


(しかもフィムの名前ってセラフィムだったのか? 本人はフィムだと思い込んでるみたいだけど……つーか熾天使セラフィムって……なんか魔法もそれっぽいし。いや、セラフィムって階級であって個人の名前ではないよな、うん。ならフィムとはなんら関係のない偶然の一致だということだ。そうに違いない)



 タクはフィムの名前を見て瞬時に最高位の天使を思い出してしまったが、いくら異世界だからって天界はないだろうと、そう決め付けることにした。これ以上の心労の種は早々に忘れてしまいたかったとも言える。



「すいません。よく分からない適性が出たのですが、これって何処かで調べたり出来ますかね?」

「知りたい項目を触れば詳細を見ることができますよ?」

「……そうですか。帰って試してみます」



 礼を言いつつも、さっさと立ち去ることにしたタク。

 どう考えてもステータスプレートがスマホにしか見えなかったので、色々と精神的に疲れたタク。なんかもう早く帰りたかった。どうせ明日は調査の依頼で忙しいのだから休める時に休みたかったというのもある。



「今日はありがとうございました」

「いえ、これも私たちの役目ですから」

「……ますた、おなかへった」

「またかよ。すいません、そろそろ帰りますね」

「ふふ…では、お気をつけて」



 チートっぽい適性が判明した以外は特に問題はなかった。まあその適性が問題なのだが。

 勇者、迷い人、熾天使セラフィム、適性、大進行……考えるべきことが増えてげんなりするタクであった。



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