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第四話 「必要とされる場所」

 二日後。


 《木漏れ日の羽》から正式に加入の返事が来た。


「よろしくお願いします、レインさん!」


 少女――リナが頭を下げる。


 槍使いの青年ダグは少し複雑そうな顔をしていたが、魔術師のエミルは露骨に緊張していた。


 まあ当然だろう。


 Aランクパーティー経験者が加わるんだ。


 プレッシャーくらい感じる。


「まず確認しておく」


 三人を見回しながら俺は言った。


「今後、戦闘時の判断は基本的に俺が行う。異論は?」


「……ないです」


 ダグが少し間を空けて答える。


 素直で結構。


 やはり未熟な連中ほど、経験者の助言を受け入れるべきなんだ。


 その日の依頼は、《灰森》でのゴブリン討伐だった。


 新人向けの簡単な依頼。


 本来なら緊張するような相手でもない。


 だが、森へ向かう道中で三人の動きを見て、俺は早くも頭痛を覚えていた。


「隊列が甘い」


「え?」


「周囲警戒。あと足音がうるさい」


「す、すみません……」


 リナが肩を縮める。


「あとダグ。槍先を下げるな。奇襲に対応できないだろ」


「ああ、分かった」


「エミルはもっと周囲を見ろ。魔術師は後衛の目だ」


 三人は大人しく従った。


 悪くない。


 やはり指導役がいると違う。


 《銀翼の剣》も、俺が抜けた今頃は連携が崩れているはずだ。


 カイルは感覚派だからな。


 全体管理ができるタイプじゃない。


「レインさん、ゴブリンです!」


 リナの声。


 茂みの奥から、小柄な緑色の魔物が二体現れる。


 普通なら問題ない数。


 だが俺はすぐに違和感を覚えた。


「待て」


「え?」


「数が少なすぎる」


 ゴブリンは群れる習性がある。


 二体だけ前に出てくるのは不自然だ。


「周囲に伏兵がいる可能性が――」


 その瞬間。


 横の茂みから三体飛び出した。


「っ!?」


 ダグが反応する。


 だが遅い。


「散開しろ!」


 俺が叫ぶ。


 しかし三人は一瞬動きが止まった。


 連携不足だ。


「リナ下がれ! エミルは右!」


「は、はい!」


 戦闘自体は数分で終わった。


 ダグが二体。

 リナが一体。

 残りをエミルの火球で仕留める。


 被害は軽傷のみ。


 新人にしては悪くない。


「すごいですレインさん! 本当に伏兵が――」


「当然だ」


 俺は腕を組む。


「ゴブリンの習性を理解してれば読める」


 実際、俺が指示を出さなければ危なかった。


 三人だけなら混乱していた可能性も高い。


「やっぱり経験が違うな……」


 ダグが感心したように呟く。


 少し気分が良くなる。


 そうだ。


 本来こうあるべきなんだ。


 俺の価値を理解する奴が、ちゃんといる。


「ただ、お前たちはまだ動きが遅い」


 三人の表情が引き締まる。


「特に最初の反応。俺の指示を待つ前に動け」


「でも、散開って言われて――」


「だから遅いって言ってるんだ」


 リナが口を閉じる。


「戦場では一瞬の判断ミスで死ぬ。甘えるな」


 空気が少し重くなる。


 だが、必要なことだ。


 馴れ合いじゃ強くなれない。


 その後も俺は細かく指摘を続けた。


 歩幅。

 視線。

 武器の構え。

 呼吸。


 改善点はいくらでも見つかる。


 だから教えてやっているのに、三人の表情はなぜか徐々に硬くなっていった。


 森を出る頃には、ほとんど会話もなくなっていた。


 ……まあ、仕方ないか。


 自分の未熟さを突きつけられるのは辛いものだからな。


 だが、いつか感謝する日が来る。


 俺みたいな人材に教わる機会なんて、本来ならないんだから。

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