第三話 「新しい居場所」
結局、その日は夕方までギルドにいた。
だが成果はゼロだった。
「悪い、もう支援役は足りてる」
「うちは前衛募集なんだ」
「……また今度な」
三組。
声をかけたパーティーは全て断られた。
しかも妙だった。
断り方がどこかよそよそしい。
露骨ではないが、距離を置かれている感じがする。
「……チッ」
ギルドの壁にもたれながら舌打ちする。
やはり噂が回っている。
カイルたちが余計なことを吹き込んでいるに違いない。
そうでもなければ、俺ほど経験豊富な支援役が敬遠される理由がない。
その時だった。
「あの……」
遠慮がちな声。
振り向くと、小柄な少女が立っていた。
茶色の短髪。
革鎧。
腰には短剣。
新人冒険者か。
「もしかして、パーティー探してますか?」
「ああ」
「なら、うち……どうですか?」
思わず眉が動く。
少女の後ろには二人。
槍使いの男と、ローブ姿の魔術師。
装備は安物。
等級も低そうだ。
駆け出しパーティー――。
「俺を誘うのか?」
「はい! 《銀翼の剣》にいた人ですよね?」
その瞬間、少し気分が良くなった。
やはり分かる奴は分かる。
さすがにAランクパーティー所属の実績は伊達じゃない。
「……まあ、話くらいなら聞く」
酒場へ移動し、簡単な自己紹介をする。
パーティー名は《木漏れ日の羽》。
全員Eランク。
冒険者登録して一年も経っていないらしい。
なるほど。
だから俺の価値に気づけたのか。
未熟だからこそ、支援役の重要性を理解している。
「それで、今はどんな依頼を?」
「薬草採取とか、小型魔物討伐です」
「昨日は角ウサギを三匹倒しました!」
少女が嬉しそうに言う。
……レベルが低い。
低すぎる。
だが、まあいい。
今は足場が必要だ。
「正直、お前たちだけじゃ厳しいな」
三人が緊張した顔になる。
「連携が甘いだろうし、戦術もまとまってないだろ?」
「あ……はい」
「だろうな。そういうパーティーはすぐ崩壊する」
魔術師の男が少し顔をしかめた。
だが事実だ。
むしろ助言してやってるだけありがたいと思うべきだろう。
「まあ、俺が入るなら改善できる」
「ほ、本当ですか!」
「ああ。ただし、戦闘指揮は俺がやる」
槍使いの男が戸惑ったように口を開く。
「えっと……リーダーは一応俺なんだけど……」
「形式上はな」
木杯を置き、俺は続ける。
「だが実戦経験が違う。お前たちだけじゃ判断が遅れる」
実際、《銀翼の剣》でもそうだった。
俺が支えていたから回っていた。
「それに、前衛は感覚で動きすぎる。全体を見られる奴が必要なんだよ」
槍使いは黙り込む。
新人だからまだ理解できないのだろう。
だが、そのうち分かる。
俺の指示がどれだけ重要か。
「……少し、考えさせてもらってもいいですか?」
少女が申し訳なさそうに言った。
「別に構わない」
答えながら、少しだけ苛立つ。
何を悩む必要がある?
Aランクパーティー経験者が入るんだぞ。
むしろ頭を下げる場面だろうに。
だがまあ、いい。
初心者は視野が狭い。
俺ほどの人材の価値もすぐには理解できないだけだ。
席を立ち、酒場を出る。
背後で、小声が聞こえた。
「……なんか怖くなかった?」
「うん……」
「でも実績は本物だし……」
聞こえている。
だが、悪い気はしなかった。
実力のある人間は、時に圧を与えるものだ。
それだけだ。




