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8.解決

気配を消して廊下を進む。階段があり、下から数人の声がする。1、2、3人か…。


「今日の獲物は特上だな!」

「これなら相当高く売れるな!」

「今日はいい酒が飲めそうだ!」


全く好き勝手言ってくれちゃって!フィルに先程のナイフを渡す。

「いい?もし奴らとかち合ったら戦うの。こんなナイフでも十分戦えるわ!」

「え!?オーリーがナイフを使ってよ!」

「私は女の子だから相手は油断するはずよ。あなたの方が危険だわ。声の数だと少なくとも3人はいるし、きっと私の相手は少なく見て1人よ。フィルに2人以上つくわ。あくまで少なく見てなのはわかるわね?」

「う、うん。」

「たぶん私たちはそこそこ強いわ。大人との模擬試合にも勝ってきたじゃない?出会したら自信を持って立ち向かうのよ。今逃げないと、どこか遠くに売られてしまうわ。こんなチンピラたちじゃなくて、プロの手に渡る前の今がチャンスよ。」

「うん!わかった!オーリーは縄で戦うの?」

「ふふふ、そうよ。レディの戦いを見せてあげる。」

と私はニッコリと笑ってみせた。


私たちは意を決して前に進む。物音を立てないように階段を降り、奴らがいるリビングの前も通り過ぎた。あとひと息だ。角を曲がったところで、4人目の男と出会す。くそっ!4人いたのか!あと少しなのに!

「おい!おまえら!どうして!おいー!!逃げられたぞー!」

と大声を上げる。チッ!私は盛大に舌打ちをして、行く手を阻む男に向けて、縄をムチのように操り、男の目を狙う。まさか反撃されると思ってない男はガードが遅れ、目にヒットした!よし!男が怯んだ隙に、フィルの手を掴み横をすり抜ける。

「ぐぉぉぉ!てめぇらブッ殺すぞ!!」

と痛みに悶えながらも追いかけてくる。その先は玄関だ。あと少し。外に出ればどうにかなる。玄関のドアを開け、外を確認したところで、フィルが捕ってしまった。


「捕まえた!!ふざけんなよ!この綺麗な顔をズタズタにしてやる!」

と、私たちはいわゆる商品なのに、この男は怒りで我を忘れているようだった。ちなみにフィルの美しい顔をズタズタにすると聞いて、私も怒りで我を忘れた。そんなこと許せない!!

「汚い手でフィルに触るなーーー!!!」

私の叫びと共に、前世で取得した空手の技を披露する。飛び蹴りだ。もちろん狙うは男性の最大の急所。力一杯蹴り、崩れ落ちるところ、顎を目がけて蹴り上げる。男はうめき声を上げ、意識を失くし崩れ落ちる。フィルは解放されたが、騒ぎを聞きつけた仲間たちが追いついてしまった。フィルもナイフを構える。大人3名を相手にするには、少々心細いが、もうここは屋敷の外だ。あと少し時間を稼ぎたい。

「あなたたちはもう終わりよ!潔く降参しなさい!」

と大声で呼びかける。あと少し。

「坊ちゃん、嬢ちゃんに何ができるってんだ!そんな小さなナイフで戦おうってのかい?舐めてもらっちゃ困るぜ!」

…来た!!

「別に舐めてないわ、汚らしい。本当にあなたたちは終わりだもの。」

そう、私は腐っても侯爵家令嬢。脱走を繰り返すうちに、脱走を止めるのではなく見守ることに方向転換したようで、護衛をつけられていたのだ。煩わしいと思っていたが、助かった。閉じ込められていた部屋の外から、街の喧騒に混じり、護衛たちのお嬢さまどこですかー?的な合図が聞こえていたのだ。近くにはいるが場所が特定できていなかったようなので、私は大声を出し騒ぎ立てた。そうして来るであろう護衛たちを待っていたのだ。


そこからはあっという間に、ならず者たちをお縄にし、警備隊に渡して無事解決。ひと段落し、気が抜けたのか私はその場に座り込んでしまった。

「オーリー!大丈夫!?どこか怪我をした!?あんな無茶して!僕は!僕は!!」

とフィルがまた泣きそうな顔で、私に怪我がないかあちこち確かめる。

「ハハハ、気が抜けただけよ。フィルが無事で良かった。あいつに捕まった時は頭に血が昇っちゃった。」

と言って、フィルの手を借りて立ち上がる。すると、同時に身体がふわっと浮き、気づいたときにはフィルにお姫様抱っこをされていた。

「え!ちょっと!立てるから降ろして!」

「ダメ!このまま馬車に乗ろう。きっとミラも心配しているよ。早く顔を見せなきゃ。」

えー、ズルい。ミラのことを出されたら大人しく従うしかない。あぁ、本当に心配させているだろう。しかも、私のせいでフィルを危険な目に合わせてしまった。申し訳なくて、不甲斐なくて、私はキュッとフィルに抱きつく。フィルは小さく笑って馬車まで運んでくれた。一緒に乗り込み、ミラの元に辿り着く時には、私たちは仲良く眠ってしまっていた。


その日は休ませてもらえたが、翌日には大人たちにこっぴどく叱られ、または泣かれ、外出禁止になったのは言うまでもないであろう。でも私たちのおかげで人攫いの大元も捕まえられたのだから、少しは感謝してくれたっていいのに。その間も3人で手紙のやり取りをしていたが、ようやく外出禁止が解け、無事再会を果たした。良かった、二度と会わせないって言われなくて。


そして、私の見事で鮮やかな蹴りを見ていたフィルに教えを請われ、護身術の一種だと適当に言い訳をし、フィルとミラの2人に空手を教えたのであった。

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