5.友人
「ミラ!フィル!おはよう!2人と同じクラスで嬉しいわ!今日も2人とも素敵ね!」
ミラとフィルとの出会いは11歳まで遡る。当時の私は順調にトレーニングを積み、剣にもすっかり慣れていた。同じ師に教わっていたミラこと、ミランダ・ハウエルは伯爵家の三女でオレンジ髪に青い瞳の背が高い迫力美人だ。ミラとは同じ年で同性、打ち解けるのに時間はいらなかった。女騎士を目指しているミラには敵わないことも多く負け越してはいるが、それでも勝つこともあり、そんなときは大いに喜んだ。ミラは負けた悔しさをバネに更に強くなり、私も負けるのはなんだかんだ悔しいので、更にトレーニングを重ねた。良きライバルと言えよう。当初の予定より随分と強くなったが、まぁ致し方ない。
そんなミラと切磋琢磨している頃、ミラがフィルを連れてトレーニング場へやってきた。初めて会うフィルこと、フィリップ・バイゼルは伯爵家嫡男で金髪に緋色の瞳の天使のような悪魔のような美しい少年だった。ミラとは同じ伯爵家で親戚同士だそうだ。幼い頃から領地で共に過ごしていたらしい。フィルは他の師の元で剣術を教わっていたが、どうにもミラに勝てないため、同じ師に教わることにしたそうだ。
「はじめまして!私はオリビア・フォードヒルよ。ミラとは友達なの。あなたとも仲良くなりたいわ。私のことはオーリーと呼んでちょうだい。」
ここはトレーニング場であるため淑女の挨拶は不要だろうと、満面の笑みで手を差し出す。しかし、
「…フィリップ・バイゼルだ。」
と、そっぽを向いたままボソッとつぶやく。ん?耳を澄ましてようやく聞き取る。なんというか無愛想ね。というか、この差し出した手をどうしてくれるのよ。ハハハ、と乾いた笑い声が出たわよ。仕方ないので手は引っ込める。
「フィリップ君は人見知りなのね。」
と嫌味を吐いたことも仕方なかろう。
「別に。」
イラ。天使じゃなくて悪魔だったか。落ち着けー落ち着けーと自分に言い聞かせる。今世は11歳とはいえ、前世も込みで考えたら私は大人である。
「すまんな、オーリー。フィルは照れ屋なんだ。オーリーが天使のように愛らしいから緊張しているみたいだ。」
とミラがフォローする。ミラ、ありがとう。でも私の見た目は悪魔と言われても天使ではない。天使なんて思ってくれるのはミラと家族だけであろう。仲良くなれるか不安に思いながら、トレーニングが始まる。
まずは私とミラが打ち合う。彼は見学だ。2人とも軽く打ち合っていたが、どんどん力が入っていく。接戦だったが最終的には剣が弾かれ、勝負がつく。今日も負けだ。悪魔がジッと私を見ているようで、視線が気になり集中できなかったのも敗因であろう。まだまだ甘いな私も。彼の元へ2人で戻るとフッと聞こえた。え、鼻で笑いました?ムカつくムカつくムカつく。こうして彼の第一印象は悪いまま1日を終えた。久々にムカついたため、寝る直前までマリアに話を聞いてもらい、ようやく消化したものだ。次のトレーニングの時も感じ悪かったが、もう気にしないことにした。今日はミラと彼が打ち合うところを見学だ。いい勝負だがミラの勝ちだ。2人が戻って来た時にフッと鼻で笑ってやった。すると、彼は顔を赤くし私を睨む。ふふん!なんとも大人気ないが一矢報いてやったことに私は満足した。
その後も何度か顔を合わすも打ち解けることなく、ついに私と彼との勝負の日が訪れた。彼と対峙する。絶対に負けたくない。私たちはお互い睨み合い闘志を燃やす。はじめ!と合図がかかり、軽く…なんてことはなく初っ端から飛ばしていく。先手必勝だ!子どもとは言え、11歳となれば男女の力の差・体格差も出てくる。彼も強くなかなか勝負がつかない。粘りに粘ったが私の体力も尽き、最後には負けてしまった。悔しい…と言うよりも清々しかった。戦い切った満足感だろうか。息を切らしたまま彼に近づき、
「私の負けよ!楽しかった!!ありがとう!」
と笑顔で手を差し出す。彼も今度こそ手を取り、
「僕もだ。こちらこそありがとう!」
と言ってフワッと笑う。あ、天使になったー。顔が赤くなったのが自分でもわかるが、運動後で元々火照っていたため皆には気づかれていないだろう。良かった。そんな私たちをミラが聖母のような微笑みを浮かべて見ていた。
「やっと打ち解けた。私の好きなもの同士、仲良くなれそうで良かったよ。」
「今まですまなかった。大人気なかったな。僕のことはフィルと呼んでくれ。あと…オーリーと呼んでもいいかい?」
とフィルから折れてくれ、私は嬉しくてモチロン!!と大声で答えた。かくして私たちは友人となった。




