3.行動開始
翌朝、スッキリと目覚め、まずは筋力のないこの身体をどうにかするため、朝と寝る前にストレッチ、スクワットを行った。まるでトレーニングなんてしてませんって顔で、屋敷の階段を1日に何往復もした。初めはスクワット5回ですら、脚が折れるかと思うほど弱っちかった足腰も、今じゃ走り回れるくらいになった。もちろん、レディが走り回っては怒られるので、誰にも見られないようにコソコソと行った。自信がついたため、次の段階へ進もう。
コンコンコン…
「オリビアです。」
すぐに返事があり、部屋の中へと入る。1番上の兄、アルベルトお兄さまの部屋を訪ねたのだ。
「アル兄さま、お忙しいところごめんなさい。少しお時間いただけるかしら?」
「もちろんだよ!オーリー、こっちにおいで。」
優しく人好きのする笑顔で招き入れてくれる。アル兄さまこと、アルベルト・フォードヒルは5つ上の12歳で、銀髪に翠色の瞳を持つイケメンだ。わたしと違ってタレ目で、いつも優しく笑顔が眩しい。アル兄さまはソファで本を読んでいたようで、私は早速隣に座ろうと近づくと、ヒョイと抱えられ、アル兄さまの膝上に座らされる。甘い…。これからお願い事をするのに、膝上では話しにくいんだが仕方ない。甘ちゃんな私はこの状態を受け入れた。だって、アル兄さまって温かくて良い匂いなんだもの。
「今日はどうしたんだい?何かお願い事かい?」
「え!スゴイわ!どうしてわかったの?お兄さま!」
「ふふふ、オーリーを見てたらなんとなくね。」
「そうなんですの?実は…私、身体を鍛えたいの。騎士になりたいとかそんな立派なものじゃなくて、体力をつけて色々やってみたいの。馬にも乗りたいし、剣術も教わりたいし、護身術も身につけたいわ!」
「オーリーは、いずれお嫁さんに行くのに、それは必要なのかい?淑女教育はどうするんだい?」
「もちろん、全部頑張るわ!それ以外にもたくさんお勉強したいの!素敵なレディになって、立派なお嫁さんにもなるけど、今のままじゃつまらないわ。」
「うーん。可愛いオーリーが怪我したりしないか心配だな。」
「危険なことはしないし、危険だと思ったらやめるわ!強くなくてもいいけど、弱くありたくないわ。お嫁に行くにも選択肢が多い方がいいと思うの!幸せになるには努力が必要よ!」
ふぅ、少々興奮しすぎたかしら?と思い、恐る恐るお兄さまの顔を見上げると、柔らかい笑顔で私を見ていた。
「そうか、小さいと思っていたオーリーも色々と考えていたんだね。お兄さまは嬉しいよ。」
「では…!」
「いいよ。お父さまのところに一緒に行って欲しいんだろ?僕から父さんに話ができる時間を作ってもらうよう頼もう。」
「嬉しい!お兄さま大好き!!」
と振り返り、お兄さまに目一杯抱きついた。はぁ良い匂い。頬にキスをして膝から降りる。姿勢を正し、
「お兄さま、ありがとうございます。お忙しいところ失礼いたしました。では。」
とカーテシーをし退室する。その豹変ぶりがおかしかったのか、お兄さまは声を出して笑いながら見送ってくれた。
後日アル兄さまがお父さまに掛け合い、おねだりの場を設けてくれた。その際にお母さまと2番目の兄エル兄さまも同席する。エリオット・フォードヒル、2つ上の9歳で銀髪に青い瞳を持つ。エル兄さまはつり目で、エル兄さまと私はお母さま似、アル兄さまはお父さま似である。アル兄さまにお願いしたことをエル兄さまにも前もってお話ししておいた。家族なのに除け者にされたら嫌かなと思い、報告という形でお話ししたところ、僕も一緒に行くよと言ってくれたのだ。
そして無事お父さまに自分の思っていること、やりたいことをプレゼンし、最初は娘可愛さに渋っていたが、お兄さまたちも一緒になって説得してくれ、ついには了承をもぎ取った。ちなみにアル兄さま、エル兄さまったら、ちゃっかりと2人とも自分のお願い事もしていた。おいおい。でもそんなところも素敵だと思う。後日マリアの話によると、実はお母さまもお願い事をしていたそうだ。血は争えないと言うことだ。
かくして、私はトレーニングを始めることができ、馬術・剣術・護身術と順調に修得し、夏には領地の湖で泳ぎの練習もした。同時進行でダンスや刺繍、音楽に歴史、周辺国の勉強等々、忙しい毎日を送ったのだ。




