ページ3 夢
夢をみた。
昔の夢だ。
あの頃はまだ自分に秘められた力があると、本気で信じて止まなかった。
力を覚醒させるために色んな修行をした。
中学一年では、身体を鍛えることは当然として、大自然の中に力を求めた。
春は自然公園でシャドウボクシングに野良犬と格闘。
夏は手足に重りを付けて、海で水泳とサンドアート。
秋は近くの山へ登山に行き、下界の景色を眺めながら瞑想した。
冬休みに行った滝行では凍死しかけた。
そんなオレにも一つのルールがあった。
それは人に迷惑を掛ける行為はしない。
ただ目立ちたいだけの虚言は、二流三流というもの。
──能ある鷹は爪を隠す。
学校や私生活ではなるべく普通の学生を装った。
でもその裏では、絶え間ない修行を繰り広げていた。
空気椅子や足音を消して誰にも悟られずに歩く練習。
幽霊、妖精、精霊も学校中を回って探した。
どんな力が覚醒するかわからなかったので普通に勉強もした。
国語や英語は難しかった。
でも、ヒエログリフやルーン文字はすぐに習得できた。
北欧神話やクトゥルフ神話を読み。
ユグドラシルと名付けたミニトマトを植えた。
タロットカードを覚え、毎日のように女子の運勢を占った。
そして、一年の終わりには、不良共との戦いが待っていた。
彼らとの戦いは、この一年の集大成と言えよう。
武術の心得がなかったオレは、初めは苦戦を強いられた。
だが、友と協力することで策を講じ、罠にハメ、葬り去ることに成功した。
厳しい修行の数々だった。
それもこれも力を得るためと思えば苦にならなかった。
けれど、オレは力を手にすることが出来なかった。
そして考えた。
自然の中に、オレが求める物は無いのではないかと。
そこで、中学二年からは仮想空間で修行をすることにした。
この頃のオレは力が手に入らず少し焦っていた。
中学の終わりに共に戦った友が、修行の旅に出てしまったからだ。
時間を無駄に出来ないと思った。
学校へ行くのを辞め、今まで以上に修行にのめり込んだ。
手始めに、当時サービス開始したばかりのネットゲームに着手した。
ただ強さを。
誰にも負けない強さを求めて、ひたすらレベルを上げた。
二十四時間以上ぶっ通しで狩りをして、ぶっ倒れたことが何度もある。
飯を食う時間も風呂に入る時間も惜しかった。
なんで人間は眠らないといけないんだろうと本気で悩んだ。
無限にある時間も、いくらあっても足りなかった。
途中で辞めてしまいたいと何度も思った。
所詮、データ上で数字がゼロとイチ入れ替わるだけ。
そこに何の意味があるのか。
それでも──
それでも頑張れたのは、そこに仲間がいたから。
仲間といるのが楽しかった。
仲間と競い合うのが楽しかった。
仲間と喜びを分かち合うのが楽しかった。
気付けば自分よりレベルの高い者は居なくなり、一年が過ぎていた。
それでも、オレの求めた力は手に入らなかった。
──力とは何か。
答えは出なかった。
けれど、視野は広がった。
中学三年になると同時にオレは悟った。
まだその時ではないのかもしれないと。
では、今は何をするべきか。
その時にふと親の顔が浮かんだ。
力はまだ得ていない。
だが、この世にオレを生んでくれた親に何か恩返しがしたいと思った。
具体的に何が恩返しになるのかわからなかったので、絶対に不可能なレベルの高校進学を希望し、受験に挑んだ。
こうして、夢見る少年は不可能を可能にしたのである。
どうも、ロングブックです。
主人公は気づいていませんが、実はクラスの人気者です。
ぜんぜん爪は隠せていません。
幽霊や妖精、精霊探しの際には、クラス総出で彼の後を追ったそうです。
そしてタロットカードでは、昼休みに彼を巡って、他クラスの女子達が喧嘩を繰り広げていました。
この作品が少しでも『面白い』、『続きが読みたい』と思って頂けたら、
作者も少しは爪を研ぎますので【評価】【ブックマーク】をお願いします。




