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ページ10 わたしの物語

「愛生、明日は一時間早く着くように行くからね」


 あれはまだ雪のちらつく二月のこと。

 中学三年にして人生初の入試にわたしは心躍らせていた。

 前日に響恋ちゃんの家でお泊まりをして、一緒に登校である。


「一時間ってことは……えぇ!? 六時起き!? ムリ無理。わたしそんなの起きれないよぉ~」


「大丈夫よ。そのためのお泊りなんだから」


「……う、うん。いつもありがと」


 わたしに選択肢はなかった。

 晩ご飯の時間まで勉強をして、おばさんの作った豪華なご飯を頂いた。

 それから一緒にお風呂に入って、八時過ぎにはお布団にイン。


 響恋ちゃんがベッドでわたしはその下でお布団だ。


 それにしても寝るの早過ぎない?

 お婆ちゃんかっ!

 もぉぜんぜん眠れないよぉ。


 不安だからギリギリまで勉強したかったのに。

 響恋ちゃん曰く、前日にいくら詰め込んでも無駄らしい。

 頭のいい人は言うことが違うよね……。


 真っ暗な部屋でぼーっと天井を見上げていると、勉強付けだったこの一年のことが頭に浮かんでくる。


「響恋ちゃん、起きてる?」


「うん」


「わたしが響恋ちゃんと同じ高校に行きたいって言った時のこと、覚えてる?」


「うん」


「わたしね、前日にお母さんと進路のことで喧嘩して、本当は自分の学力じゃ無理だってわかってたのに。でもそれを認めたくなくて、響恋ちゃんと同じ高校に行きたいって駄々こねたの」


「……知ってたよ」


「え?」


「だって愛生が言ったの、進路の紙をもらった次の日だもの。それも朝から目元を真っ赤に腫らせてね……バレバレよ」


 バサッと布団から飛び起きた。


「えぇぇ~~~っ!? いつ話そうってずっと悩んでたのに~」


「はいはい、言えてよかったわね。おやすみなさい」


 話は終わりと響恋ちゃんは布団の中でこちらに背を向けてしまった。

 こっちは真剣に悩んでたのに、なんか納得がいかない!


「むぅ~~~」


「あっ、こらっ、何こっち来てるのよ」


「だめ……?」


「だ、だめなんて、言ってないでしょ……」


 照れたように語尾がどんどん小さくなっていく。

 暗くて顔はよく見えないけど、たぶん真っ赤だ。

 えへへ、可愛い響恋ちゃんを独り占め。


「わーい、響恋ちゃん大好きっ」


 大切な親友のためにも明日は頑張ろう。






  ◆ ◇ ◆






 明くる日。


 私立赤神学園高等学校。

 元は女子高だったこの高校は、今でも女子の制服が特に可愛い。

 女の子なら一度は誰でも通いたいと考える高校なのである。


「きょ、響恋ちゃん…………」


 そんな歴史ある試験会場で、わたしは腹を下していた。

 きゅるる~って言ってるし、ホント最悪。


「ちょっと愛生大丈夫なの? 立てる?」


「だ、だい……じょう、ぶ、響恋ちゃんは……ここに、居て」


「ぜんぜん大丈夫そうには見えないのだけど……」


「ま、まだ40分あるから……トイレ、行ってくる。這ってでも……戻ってくる……から、心配……しないで」




 十分後。


 ま、迷った……。

 女子トイレどこおおおお!?


 きゅるるるぅ~~~。

 うぅ……、お腹が……もう限界かも……。

 斯くなる上は、男子トイレに──


「あ、あの~、すみません」


 絶体絶命の大ピンチ。

 突然後ろから声を掛けられ、わたしは飛び跳ねるようにして振り向いた。


「ひゃい!?」


 声までひっくり返ってもう顔は真っ赤。

 逆に声を掛けてきた学ラン姿の男の子はクスリと微笑む始末。

 こっちは必死だっていうのになんて失礼な!


「──オレ、昨日福岡(・・)から来たばっかで道に迷いっぱなしでさ、1ーCってどこか知らない?」


 わたしは腹痛を悟られまいと必死に堪えながら答えた。


「そ、それなら、二つ前の教室がそうです」


「そっか、ありがと。あ、これお礼ね」


 そう言って彼はわたしの手を取り、何かを握らせた。


「えっ?」


 わけも分からず声を上げるわたしを残して、彼は去っていった。


「それ、腹痛に効くから! あと女子トイレは下の階だよ。ガンバ」


 手にはプラスチックとアルミに挟まれた錠剤が二錠。

 名前も知らない男の子に応援されてしまった。

 一人取り残されたわたしはしばし呆然。

 でもまたすぐにお腹が痛くなってきて、急いで下の階のトイレに駆け込んだ。


 そして、薬を飲んだ後は嘘のように痛みもなくなり、入試は見事合格。


 ──そう。

 あの時も彼はわたしを助けてくれた。


 本当は勇気を出して何度も声を掛けようとした。

 けれど、その度に緊張してタイミングを逃していた。

 まだ何も始まってないのにここで終わるなんて()だ。


 もっとたくさん話がしたい。

 もっと彼の顔が見ていたい。

 もっと彼のことが知りたい。


 だからわたしは、生れて初めて心から願ったのだ。


 ──神様(・・)お願いします。

 どうか、影山くんを助けてください。

どうも、ロングブックです。


以前お話しました影山友人の死ですが、

この話で愛生の願いは無事聞き遂げられ、死者蘇生を果たします。

これが彼女にとって初めての魔法発動ですが、本人は気付きません。


また、何故願いを聞き遂げたのかは、設定上一章では解き明かされません。

いつかまた機会があえればその時に……。


この作品が少しでも『面白い』、『続きが読みたい』と思って頂けたら、

作者が死者蘇生する夢をみますので【評価】【ブックマーク】をお願いします。

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