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29.涙のお別れ

「うわーん!嫌だよー!!パグぞうさんに会えなくなるなんて嫌だよー!!うう~~~」


「オイラだって寂しいよ!でも・・・」


 その時、真っ暗な空の上からまぶしい光が差してきた。


「あっ!神様がいらしたわ!」


 ハナがそう言うのと同時に、フサフサな毛の神様が空から降りてきた。


 神様はあたし達を見て言った。


「・・・お別れは、済んだかの?」


「・・・ぐすん、ぐすん」


 あたしは何も言えなかった。


「はい、大丈夫です。神様」


 一方、パグぞうさんはピシッと背筋を伸ばして言った。


 神様は、おだやかに切り出した。


「まずはパグぞうよ。ワシの試練を無事にクリアできてよかった。おめでとう」


「はい、ありがとうございます」


「そしてリリィよ。そなたの協力があってこそ、パグぞうは試練を達成できたのじゃ。ありがとうの」


「・・・うん」


「“うん”って、友達じゃないんだから!」


 パグぞうさんがツッコんだ。


 神様は笑って言った。


「さてパグぞうよ。約束通り、もう一度おぬしを天使に任命しよう。今度こそ、投げ出さずに天使の仕事を全うするのじゃぞ」


「はい!ありがとうございます」


「では、そろそろ行こうかの。ワシもちょいと忙しいのでな。ハナよ、リリィのことよろしく頼むぞ」


「はい、神様」


 ハナが返事をすると、またも暗い空の上から光が差してきて、神様とパグぞうさんを包んだ。

そして二人は、光と共にゆっくりと空へ昇っていく・・・あたしは思わず叫んだ。


「待って!パグぞうさん!」


 すると神様がニッコリ笑って言った。


「リリィよ。そなたとパグぞうは、またいつか必ず会える。その時まで待っておるのじゃぞ」


 パグぞうさんが言った。


「リリィ!今までありがとなー!!」


 そして二人は天へと昇っていった。




◇  ◇  ◇




「ぐすん、ぐすん」


 真っ暗な屋上で泣いていると、ハナの優しい声がした。


「さあ、おうちに帰りましょう。大丈夫、神様の言うことは絶対よ」


「ハナ・・・はっ!そうだ!ハナは?ハナも天国へ行っちゃうの!?」


「ううん、私はこれからもずっとリリィのそばにいるわ。私、神様にお願いしたの。今まで以上に天使のお仕事を頑張るから、リリィやママやパパのそばにいさせて下さいって」


「そっか・・・あーよかった」


 あたしはホッとしてハナの顔を見た。ハナは、いつも通り優しい顔で笑い返してくれた。




◇  ◇  ◇




 そして・・・パグぞうさんのいない日々が戻ってきた。


 あたしは時々、窓から空を見上げる。パグぞうさん、もう天国で天使の仕事やってるのかな?


 そうそう、天使の仕事といえば!ハナが地上でどんな仕事をしてたかっていうと、あたしがずーっと前に聞いた、『おまじないを唱えると願いを叶えてくれる』ことだったんだって!!


あたしは “神様が”叶えてくれるって聞いたんだけど、実際は神様が忙しいから天使のハナが代わりにやってたんだってさ。あたしがハナに話した時は「ウソだ」って言って笑ってたくせに、あたしの言ってたこと当たってるじゃん!!


 そのことで文句を言ったら、「だって、『私が願いを叶える天使です』なんて面と向かって言えないでしょ。天使であることを隠して、普通の犬として暮らしてるんだから」って返されちゃった。まあ、それもそうだけど。


 ハナは、『あたしとパグぞうさんが試練をクリアできるか見守って、時々神様に報告する』っていう仕事が入ったから、それまでの『願いを叶える』仕事は別の天使に代わってもらったんだって。


で、パグぞうさんが天国へ行ったあとは、またまた全然違う仕事をしているらしい。

「だって、願いを叶える天使に戻ったら、リリィが何でもお願いしてくるでしょ?」ってハナは言ってたけど、あたし、そんなに厚かましくないもん!


 ハナは時々、おじさんとおばさんが寝静まった頃に天国に戻って仕事の報告をしているんだって。でも、パグぞうさんの様子を聞いても教えてくれないの。ハナの今の仕事のことも教えてくれないし。天国のことは、何も話しちゃいけないんだってさ。

ちぇっ!つまんない。


 でも、そんな日常にもちょっと変化があった。それは、詳子がたびたびウチに遊びにくるようになったことだ。


 詳子は時々新しいオモチャをくれるし、一緒に遊んでくれるし、今ではとっても仲良しだよ。

あたしが心配していた、『のけ者にされる』っていうことも全くなく、サトルも今まで通り・・・とはいかないけど(だって、彼女も大事にしなきゃいけないし)ちゃんと可愛がってくれる。

だから毎日楽しいよ。パグぞうさん、天国からあたしのこと見えてるかな?


 ある日、サトルと公園に散歩に出かけた。空を見上げたらなんだか、声が天国に届くような気がして思いっきり叫んだ。


「ワンッ!ワンッ!ワォォーン!!」(パグぞうさーん!元気ー?あたしは元気だよー!!)




◇  ◇  ◇




 そして、十年後。


「リリィ、リリィどこー?」


 また、あたしを呼ぶ声がする。でもまだ隠れていよう。






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