条約会議
赤の広間に1人の宰相と7人の参議長が座っている。私は机の天板の短いところに座った。
「では、出席者の確認を行います。名前を呼びましたら挙手をお願いいたします。
宰相、セルゲイ・イヴァンノヴィチ・リーン殿下...はい。
外務参議長、アレクセイ・アガフォーノヴィチ・アルトゥール...はい。
軍務参議長、ボリスラフ・ヴァシリーエヴィチ・アンドロポフ...はい。
歳出参議長、グリゴリー・アイラトヴィチ・セミョーン...はい。
司法参議長、ヴラディーミル・ドロフェヴィチ・ダニール...はい。
都市参議長、ドミトリー・エヴドキーモヴィチ・エゴール...はい。
商業参議長、エロフェイ・ザハーロヴィチ・イラリオーン...はい。
工業参議長、コンスタンチーン・クリメントヴィチ・オニーシム...はい。
全員居ますね。
...この度は会議に参加して頂きありがとうございます。今回はノスエウロパ同盟、特にスオミ王国に対しての講和案についてのご意見を戴けたら、と思っています。どうぞ、よろしくお願いします」
「「お願いします」」
「ではまずどこから...」
あ、外務参議長が挙げたわね。
「どうぞ、外務参議長」
「有難う。
...さて、我々外務参議会ではスオミ王国をノスエウロパ同盟から脱退させ、緩衝国にするのが最低限行うべきだという結論に至った。
何故ならそれを行うだけで我が国にはポルシュカという仮想敵国しかあまり考えなくても良いからだ。
...正直言いづらいが未だ国内インフラの整備が進んでいない。だからそちらを優先的に進めるべきだと判断したのもある。
...ただ、ある筋からの情報だがスオミ王国に我が国の安全保障に関わる者の親族が人質にされているらしい。それも奪還すべきであると私は思っている。...以上だ」
...完全にマーリンの妹よね?これ。...確かに安全保障に関わるって言えば関わるけど...
だって私のメイドの妹だもの。
...さて、他には...あ、軍務参議長が手を挙げたわね。
「軍務参議長、どうぞ」
「有難う御座います、エカチェリーナ様。
...さて、我々軍務参議会も外務参議会の意見にほぼ賛成である。ただ我々も一応国内とはいえ損害が出ている。その為証拠が完全に有るというのであるならば各国から最低で50万ミールを賠償金としたい。以上だ」
...ん、歳出参議長も手を挙げたわね。
「歳出参議長、どうぞ」
「私達も軍務参議会と同意見だ。現状で軍のみの支出で相当国庫から出ている。...ほら、また340ミールも減った」
ちょ、その言葉はいけない気が...
「...それは我々軍務参議会に対する挑発か?歳出参議長」
あぁ...、やっぱり怒るわよね...流石にあれは私でも怒るわ...
「さて、どうでしょう」
ああ!?油を注いだ...?!
「...エカチェリーナ様の前だから我慢をしていたものを...貴様は我々を愚弄する気か?!」
あ、耐えては居たんだ...まぁそうよね。実質上官の前で喧嘩をするのと同じでしょうからね...
...さてと、自分達で元に戻せるかしら...
「私は事実を申し上げただけです。...大体平時では全く役に立たない者達が...」
あ、流石にこれはぶちギレそうになったわ。これはもう止めた方がいい感じね。
「なっ...!では常備軍を無くせというのか?!馬鹿な!どうやって国を護れとッ...?!」
「その方が無駄遣いにならn
バァンッ!!
「...いい加減になさい!!」
「っ...!」
「...軍務参議長、よくここまで感情を抑えました。ここからは私に任せてください」
「え、エカチェリーナ様...」
さてと...どう叱ろうかしら...とりあえず...
「...歳出参議長、これ以上軍の悪口を言うのならば貴方の首を飛ばしますよ?」
「し、しかしこれは事実で...」
「ええ、事実でしょう。その通りです。実際平時には役立ちませんからね。ええ、その通りです。
...しかし、貴族の反乱からこの国を護ったのは何処の誰ですか?...まさか歳出参議会とは言いませんよね?」
「っ...」
「貴方達文官が宮殿で縮こまっている間彼ら軍人は自分の職務を全うしていたのですよ?それとも何ですか?貴方達が貴族の反乱を抑えますか?出来ませんよね?
...歳出参議長、これ以上軍を愚弄するのなら皇帝陛下が黙っていませんよ?そこをお分かりの上で発言をお願いします」
「...分かりました」
「...私、ジョージア・ヨセフ・エカチェリーナはこの国を愛しています。だからこそ、利権や欲で仲間割れし、腐敗して行くのは見ていられないのです...お願いです、互いに傷付ける事はせず、高めあって行ってください。これが私の...
...いえ、畏れおおくも」
ガタガタガタッ...!
...全員直立不動になったわね。
「...陛下の願いです。私のような者が陛下の代理で申し訳ありませんが、お願いいたします...」
私はゆっくりと頭を下げた...
「な、何をおっしゃいますか。早く頭をお上げください、エカチェリーナ様」
「そ、そうです。早く頭をお上げください」
「...分かりました」
私はゆっくりと頭を上げ、皆、着席した。
「...では続けましょう。現状出ている意見をまとめますと、ノスエウロパ同盟各国から50万ミールの賠償をさせ、ノスエウロパ同盟からスオミ王国を離脱させ、緩衝国にする事。そしてスオミ王国から人質の救出を行う事、これで良いですね?」
「「はい」」
「分かりました。...では敢えて聞きましょう、最大どこまで請求出来ると思いますか?スオミ王国の国民感情の矛先がこちらに向かない程度で、ですが」
...歳出が挙げたわね。
「歳出参議長、どうぞ」
「...恐らくノスエウロパ同盟各国から100万から150万ミールは請求可能と思います。この辺りがノスエウロパ各国の国家予算の10分の1程度でしょうから」
軍務参議長も挙げたわね。
「軍務参議長、どうぞ」
「我々は出来ればカンニナ地峡が欲しい。もし出来たのならば安全に海に出る事が可能だからな。今まではスオミが虎視眈々と我々を狙っており、海に出にくかったがこれが出来るならば相当幅が広がるからな」
...確かに。ソ連がカレリア地峡を取ったのもペテログラードの安全の為、だった筈だからね。
...カンニナ地峡の沼地って泥炭が取れるのかしら。取れるなら暖炉の燃料にしてよし、ね。何処かに無煙炭か瀝青炭ないかしら...
...あ、ここで初めて商業参議長が。
「我々もそれには賛成です。あの場所から自由に船を動かす事が出来たら相当の貿易収入が入ると思います。船も自由に作れるでしょうから」
...誰も挙げないわね。
「他にありませんか...?」
「まぁ、正直取れるものが無いからな」
「「ハッハッハッハ!」」
「...では私からも。恐らくカンニナ地峡には泥炭という炭があるのですが...それの採取を...」
「ではカンニナ地峡も最低限の方に移したらどうですか?エカチェリーナ」
「あ、なるほど...確かにそうですね。ありがとうございます、宰相」
「いえ。では纏めましょうか、エカチェリーナ」
「はい。現状はこのようになっています。
最低限
・ノスエウロパ同盟からスオミ王国を離脱させ、緩衝国にする。
・スオミ王国からカンニナ地峡を譲渡してもらう。
・ノスエウロパ同盟各国から50万ミール賠償させる。
・人質の救出
最大限
・上記+スオミ王国の自治国化。
・賠償金の100万から150万ミール辺りへの引き上げ。
...これでよろしいでしょうか?よろしかったら拍手をお願いします」
...うん、全員が拍手ね。
「では、この講和案を外務参議会に送付させて頂きます。よろしくお願いします」
「分かりました。全力で叩き潰してきます」
「お願いします」
ーーーーーー
私達は第三執務室に戻ってきた。
「疲れたぁ...マーリン、紅茶をお願い」
私はソファーに座った...
「はい、分かりました」
「...あぁ...何とか上手く行ったわね...」
「はい」
「にしてもどこの筋の話よ、貴女の妹のは」
「勿論私ですよ?エカチェリーナ様」
いつの間にか私の前のソファーにカメーネフが座っていた。
...ねぇ、今貴方どこに居たの?部屋入ってきた時居なかったわよね?ねぇ?
「...貴方って神出鬼没ね、カメーネフ」
「それほどでも」
いや、褒めてないから...
「まぁ取り敢えず上手く行ったわ。あとは外務の頑張りね」
「良かったです」
「...取り敢えず今は休ませて頂戴」
「でも大量の書類が...」
「やめて...?!今現実を見せないで...!良い?!」
「は、はい...」
「...取り敢えず一度紅茶飲んでから休憩して取り掛かるわ。それまで待って頂戴」
「分かりました」
...あぁ...今日も忙しすぎよ...




