授業 ~公爵令嬢、授業を行う~
...何でこうなっちゃったのかしら。
私の前に多くの人が座って、一部の人は目を輝かせていた。
約五千人だろうか、席に座れず立って受けようとしている人も居る。
...私は溜め息をついて、再び呟いた。
「...何でこうなっちゃったのかしら」
数時間前...
「どうしようかしら...」
「どうしたの?お姉ちゃん」
「あ、えっと、ね?今から授業をしたいのだけど、場所が無くて...」
「人数は...?」
「そうね...約千人位かしら...」
「...じゃあ帝国騎士団の講堂はどうかな?そこなら許可も取りやすいし」
「もし取れるなら...お願い出来るかしら...?」
「うん!」
...この後の事は詳しくは分からないけど、取り敢えずナターシャが言うには何とかお願いして、条件付きで確約を貰ったらしいわ...
で、条件が「帝国騎士団にも授業を受けさせる事」。
...ってどういう事よ?!何があったらそうなるの?!
...まあナターシャちゃんが何とか取り付けてくれた条件だもの。頑張るしか無いわよね...?
「El We connect」
...よし。
「皆さん、おはようございます」
「「おはようございます」」
「昨日会って知っている方もいらっしゃると思いますが、改めて私の自己紹介をさせて頂きます。
私の名前はシャイデル・キーフ・フェルト。トゥール王国、ローニン公爵領生まれ。次女ね?
...ええ、そのまま次女で居たかったわ...って、ごめんなさいね?暗くしちゃったわね...
って、そんな暖かい目で見ないでよ...!もう...
取り敢えず今はお母様が万全の状態に無いから私が臨時でフェルト家を引っ張ってるわ」
あ、ざわつき始めた...
まぁ仕方無いわよね...こんな小娘が引っ張ってるなんて思えないもの...
私はまた話し始めた。
「...ま、この話は横に置いておいて...さて、まず貴方達の職業は何かしら?」
「「軍人です」」
「ええ、職業軍人ね。では職業軍人は何をすべきか分かるかしら?」
「国、臣民を敵から守る事です」
「正解よ。でも、もう一つあるわ。何だと思う?」
「「......」」
「誰も居ないかしら?」
...あ、一人手を挙げたわね。
...って、うちの大隊長じゃない。まぁ、当てるしかないわね...
「はい、サハロフ大隊長」
「...文明、でしょうか」
「...ええ、正解よ。
...この暗い時代、我が帝国の文明を守る為に必要とされているの。
私達は殺す為に必要なのでも、死ぬ為に必要なのでもないわ。
私達の仕事は維持する事、守る事。
...来る日も来る日も、汚く感謝される事の少ない仕事を、力の限りに遂行する事よ」
あ、皆表情が変わって来たわね...姿勢を正す人も居るし...ここから全力よ...!
「何故なら、誰かがやらなきゃ我が民族の文明が滅びると解っているから。
...という訳で、貴方はそれを引き受けているの...
貴方の生涯に渡って、貴方に、貴方の御家族に、貴方の全ての業に神、英霊の御加護がありますように...
さ、授業を始めようかしら?」
......
...結果?うん、好評だったわよ。
これからも追加授業をお願いされた位に、ね?
...軍事の長まで許可するんだもの、仕方無いじゃない...
という訳で『帝国軍顧問兼教官待遇』になったわ。
...ねぇ、どういう事よ。
何で私みたいな小娘に『帝国軍顧問兼教官待遇』が与えられてるのよ?!
...絶対名誉職よね...?
まぁ、与えられた役職だから頑張るしかないけど...
そしてこの書類の山ね...
やっぱりフェルト家長って辛いわね...
さてと、あと一束で終わ...り...?
私は目の前に誰かが居るのに気付いた。
そこに居たのは...
「お嬢様、追加の書類です」
...五十センチにものぼりそうな書類の束を持った鬼が居た...
「...嘘、でしょ?」
マーリンは満面の笑みで言った。
「頑張って下さい、お嬢様」
「...アハハハハハハ...」
私は渇いた笑いをして確信した。
文官雇わなきゃ。(使命感)
文官はお母様の手元に残っている分だけで後は全部暇を出しちゃったからね...
理由?節約よ、お金の。
...まさかここまで大変だなんて...はぁ...
まぁ、進めないと終わらないわよね...
...これは大隊の正式な再編許可ね。
署名、ね...臨時家長、シャイデル・キーフ・フェルト...
よし、次は...大隊再編による臨時軍事費ね...大金貨七枚...70万ミール...出せるかしら...保留ね、ええ。
最悪借金をしてでもしないといけないわね、ええ...
で、次は...帝国軍顧問兼教官待遇についての書類ね...
えっと...授業日は日曜日以外...?
いや、まぁ確かに元の世界だったら当たり前だったから良いけど...こんな小娘に普通こんな重労働頼むかしら...?
...で、一日90分×三...?
...90分話しなさいって...?何処まで隅々話せば良いのよ...元の世界の戦史も話せって言うの...?
...まぁ、やってあげるわよ...
...で、有事は帝国軍の指揮、近衛軍団の副指揮権...
...えぇ...?
何よこれ...何でこんなに権限が与えられてるのよ...期待されてるの?ねぇ、陛下...
そして給与...ね...月給赤金貨二枚...?
「200万ミール?!」
「ど、どうなされました?お嬢様」
「わ、私って軍の顧問兼教官待遇じゃない?」
「ええ、そうですね」
「私、名誉職だと思ってたのよ、授業の為だけの...
それが色々な権限が与えられての200万ミールの給与もあるって書いてあって...
流石に驚いちゃったのよ...」
「どんな...権限ですか?」
「ん?これよ」
私はマーリンに書類を見せた。
「え...?これ本当ですか...?」
「ええ...こんな小娘にこれよ?それだけ信頼されてるのか、それとも他に何か意図があるのかしら...」
「...となると守りは...」
「あ、いえ。何でもありません...」
「そう?なら良いけど...まぁ受領するわね。よし、次は...」
...文官貸し?
いや、確かに有難いけど...
あれ...?陛下の署名...?
絶対陛下のご好意ね...うぅ...受けるしかないじゃない...ありがとうございます、陛下。
...そういえば陛下が私達を出迎えて戴いた時陛下の近くに一人も貴族らしい人が居なかったのよね...
確か近衛兵と文官だったわよね?
そしてこの国に入る時の兵士の目には義務の目には見えなかったし...まさか!
「マーリン!その辺りに居る近衛兵を連れて来て頂戴!」
「わ、分かりました!」
...もしそれが出来てたらこの帝国凄いわよ...?
流石に...そんな筈...
「お嬢様、連れて来ました」
「ありがとう」
「失礼します、シャイデル様。何かありましたか?」
「幾つか質問があるの、軍事機密以外はちゃんと答えて頂戴...良いかしら?」
「はい」
「...近衛に所属している人達は志願で?」
「はい、陛下を御守りする為に」
「...末端の帝国軍兵士も?」
「そこは...」
「言えないのね?つまり...そういう事なのね...?」
「...」
「...うん、ありがとう。...ねぇ、貴方は私が陛下に謁見した際、陛下に言った言葉、覚えてるかしら?」
「...はい」
「...どう思ったかしら?」
「...流石、トゥール王国の元公爵令嬢と思いました。...大公になって頂きたいとも...」
「...分かったわ。良く教えてくれたわね、ありがとう」
「いえ、シャイデル様も皇族のお一人ですから」
「そう...貴方、名前は?」
「オデッサと言います、シャイデル様」
「...オデッサね、覚えておくわ。
...そして...全力で私の職務を遂行し、事に臨んではこの身を顧みず断行する事を、誓うわ。そう伝えて頂戴」
「はっ!...では失礼します」
...何よ、この帝国...改めて思うけど良い国じゃない...
他の国に悪く思われていたからどうなるかって思っていたら...
でもまあ、貴族は腐ってそうね...幾ら皇族って言っても外国生まれの私にここまで言ってくれるって相当よ?
まぁ、それほど私を信頼してくれてるのかも知れないけど...
そして完全志願制...最強じゃない...
徴兵制では出来ない強みがあるもの...
...ああ...多分定員制で4万人に抑えているのでしょうね...多分もっと国力を上げれば増やせるでしょうね。
軍人は少ないよりは多い方が良いし、この国は大きいから沢山の様々な職人が居るかもしれないわ...
でも、武器は町工場でも作れるようにしたいわね...そんな楽な武器はあったかし...AK―47があるじゃない!
...でも、どんな構造だったかしら...
...一度原稿用紙に書いて、それを打ち直してるから時間が掛かるの...
本っ当にごめんなさい!
次も更新は不定よ。
...本当にごめんなさい...




