幕間:各々の考察
〜テスカトリポカ・地下入口〜
ここはこの各闘技場の裏の入口だ。
CTFの二代目の覇者に鬼山遼太郎が君臨した。
客は盛り上がるが、俺達からすればつまらないものだった。
とは言っても、大統領警護隊の現役隊長が赤子同然とは恐れ入ったよ。
まず無いと思うが、あの爺さんを敵に回したら最期だな。
──────これも拡散されねぇのかよ。相変わらずガードが固いな。
神楽は火消しの手際が良い。
信龍がやらかしたお家騒動も内外問わず限られた人間しか知らない。
外部の人間に限れば俺と繁邦、そして神楽しか知らない。あの子、小野寺翔太は言わば信龍の制御装置。それをみすみす壊すとは到底思えない。
神楽があんな初歩的ミスをするとは思えないし、なにより対応が迅速“すぎた”。
信龍の暴発を表向きにはギャングの抗争と喧伝し、ついでにそこから得た警察組織との癒着の情報を世間にぶちまけて、世間の目を逸らせた。
そして、あの女達をいきなり付き人にしたのも怪しい。
神楽め、裏で一体何を企んでるんだ?
でも、俺や繁邦には手が出せない以上、気にしても仕方ない。
──────師よ、今尚強くなり続けてるか。
私の所業を聞いた貴方は、否定も肯定もしなかった。
私は自分の道を進むだけだ。
──────師匠はやっぱり強い。敵わない、到達できないと分かっていても、俺はその背中を追い続ける。末代まで追いかけてやるよ。
───────どうでもいい、と言いたい。なんで私を日本に連れ戻したのか、そしてなんで事実上の配下にされたのか。肉体労働は私の仕事じゃない。
最悪だ。
──────分からない。神楽がなんのために動いてるのかまるで分からない。そもそも“星の嬰児計画”についても私と優は何も知らない。いや、知る必要はなかった。星を動かすもの、文明の発展を促すもの。それこそが星の嬰児。そして、私と優はその出来損ない。
──────星の嬰児計画に興味は無い。
その日暮らしのクズ女のコンビを拾った理由は分かる。出自を聞いた瞬間にはむしろ喜びすら感じられた。
面白いことになりそうだ。
──────やはり、今回も動きませんでしたか。
この情報戦は、天王山の取り合い。お互いにガードが固く、攻めあぐねている。
膠着状態。
新たな手駒を手に入れて、多少は戦力が補強出来ましたが、現状は変わらない。
私は“平穏”を望み、彼女は“争い”を望む。
果てしなき争い、その先に待つのは自壊。
平穏と戦争は表裏一体。
──────戦いは胸が弾む。
まさに生物の自己表現究極だ。
あのお爺さんの戦いは素晴らしいものだった。底辺と最高峰には惚れ惚れさせる戦いだ。
あの者達は終盤つまらなさそうにしていた。
そう戦いだ。
“遺産”があれば戦争を起こせる。この御時世、色んな国が様々な火種を抱え込んでいる。
この地球は爆薬だ。無数の信管を突き刺した巨大な爆薬のようなものだ。
戦争は美徳だ
星の嬰児の地位を利用すれば容易い。
“正義”の為なら人間は残虐になれる。
“星を動かす”。文明を発展を促すという名目で争いを起こさせる。
私は戦争、彼女は平穏を追い求める。
遺産を手に入れたものが勝つ。
そして、この私は────
───────イルニアは戦争を愛している。




