鬼山流古武術
〜テスカトリポカ・会場〜
『さあ〜!場内興奮の坩堝!』
『今宵、あの伝説のファイトが蘇る!』
『そう!それは最強にイカれた戦い』
『CTFが始まるからだぁ〜!!』
「なにそれ?」
村雨はリングアナの言ってることが分からなようだ。
「雑に言えば、エクストリーム十人組み手だよ」
「「はあ?」」
村雨と夕立の声がハモる。
「過去数度に渡って開催されてきた、狂気のレギュレーション」
俺の説明に幽摩が補足する。
「そして、このレギュレーションを制覇したのはただ1人」
「───織田信龍だ」
「えっ?あの、信龍?」
「信長の末裔にして、“最凶の龍”。織田信龍か」
「いや冷静に分析してる場合!?」
村雨が夕立にツッコミを入れるが、本人は何処吹く風だ。信常を交えた小話に「親戚?」「うん」という会話が聞こえた。
「現場を見たんだ。不思議でもなんでもない」
「………確かに」
村雨は納得したようだ。
「で、導師殿」
ここで本題に入り込む。
「今回、アホみたいに直観※の予約が殺到したりしてたけど、それほどインパクトがある人なのかい?」
※直接観戦を略したもの。
『青コーナー!』
その直後リングアナが衝撃的すぎる発言をかました。
『なんとあの織田家の生んだ化け物姉妹に、その武術のことごとくを叩き込んだ、格闘界の生きる伝説!』
「え?」
「は?」
「「?」」
「………」
俺幽摩唖然、村雨夕立困惑。そして信常は無言。
『鬼山流古武術27代目元当主!鬼山遼太郎ォ〜!!』
観客達はどよめきの声が聞こえる。
「いや!ジジイじゃねぇか!!」
「導師殿!?マジかい!?」
「遼太郎はあの姉妹の師匠です」
導師のその言葉に更に場内は騒然とした。
そりゃそうだ。見方によってはあの姉妹を怪物にしたって事になる。
『齢90を越えても、その強さは全盛期!今も尚衰えを知らない!』
『あぁっとぉ!?その後ろについてくるのは信龍と、その妹の京花だ!』
え?なに?弟子達がセコンドにつくと?ええ?
「あの人、私達のおじいちゃんと親しかったの」
信常が唐突に昔語りを初め出した。
「じいちゃん?」
夕立の疑問符。
「織田信綱。生前は文武両道の教養人でした」
神楽が信綱という人物を軽く解説する。
「あの化け物達の才能を見出したおじいちゃんは2人を、遼じいちゃんに預けたの」
信常の解説は続く。
「その結果があれだよ」
信常が吐き捨てるように言う。
「はあ………」
「ん?待て」
「どしたぁ?」
幽摩が何かに気がついたようだ。
「観客席見てみろ」
「ん〜?ッ!?」
「WOW!!」
「「?」」
俺びっくり、そして村雨と夕立が変なものを見るような目で見てきた。
「えっ?すげぇ!“阿修羅”・志村鏡佑に“風神”・西園寺健太!それに“雷神”・飛田康人の三猛将!」
「それに、“鬼神”・東山オーロラに、“軍神”・野根泰子!」
「あとはあそこにいる“魔王”・織田信龍の三女傑!」
開いた口が塞がらない。
「あの6人………六神将が一堂に会するとはな」
「何人か耳にしたことがあるわ」
「武勇・知略・財政に優れた人達よね?」
「そうだよ、そしてその6人を束ねるのが」
「神楽恵美だ」
「口の利き方がなってないですね」
「おっと失礼、導師様」
話題性は抜群。なるほど、大金が動く訳だ。
『そして、その伝説に挑むは大統領警護隊の精鋭達!』
『再び伝説を刻むのか!遼太郎!それとも、老いの中に沈むのかぁ!?』
『さあ!CTF一戦目!』
『運命のゴングだぁ!!』
─────1戦目は瞬殺でケリがついた。村雨と夕立やった方法とは違う。
合理的、人を殺す為の実に理にかなった攻撃だ。
聞けば鬼山流古武術は戦国乱世に産声を上げた、と言う。戦場の武術。あらゆる状況にしなやかに対処する。
手元の資料によれば遼太郎は、5歳の頃から武術を習い始めた。少なく見積もっても85年にも及ぶ修練がある。
才は信龍でも経験値は埋めようがない。
現に今は5戦目、記録は信龍より早い。
あの爺様と化け物姉妹にかなう奴はそうそういないだろうよ。
おそらくは京花の上が遼太郎さん。そして更にその上が信龍、かもしれない。
「信龍の記録は、30分を切ってる」
「見ての通り休憩無しであの強さだ。さすがは信龍と京花の師匠だな」
「で、でも本当に90を越えてるの?いくらなんでも信じられないわよ」
「以下同文」
気にするは年齢よりもその強さだ。
“柔よく剛を制す”。
の体現者だ。
「もう9人目か、記録更新は確実だな」
観客は1人の老人に釘付けだ。




