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竜の寵児は祈りを捧げる~無垢な王女とコーヒー好きの王子/祈っていればいいだけの人生です~  作者: みつまめ つぼみ
第2章:怒竜の咆哮

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41.火竜の息吹

「貴様、赤竜か! なぜ貴様がここに居る?!」


 混乱するリーダー格のマントの男が叫んだ。


 赤竜は胡乱な目付きで男たちを退屈そうに眺めた。


「私が出てくることがそんなに意外かね? その程度の事も予想できなかったとは、いやはや貴様たちを過大評価し過ぎたようだ――愚かな貴様たちは触れてはならぬものに触れた。故(ゆえ)に私がここに居る」



 マントの男たちが気圧され、後ずさる。

 赤竜ほどの竜ならば、今この瞬間にでも彼らは消滅させられてもおかしくなかった。

 どうにかして状況を打破しなければならない。


 三人が即座に散開し、撤退に走った――その足を、フレド、ティナ、アーネが火力を抑えた≪火竜の息吹≫で吹き飛ばしていた。

 男たちは脚を失い地に転がり、何が起こったのかを理解しようと努めた。


「簡単に逃げられると思うなよ?」

「幻覚とはいえ殿下に恥辱を味わわせた罪、死を以ても生温いと知りなさい」

「……二人とも、口が穢れますよ。ただ滅すればよいだけです」


 フレドも、ティナもアーネも、侮蔑の眼差しを隠そうともせず、冷静に地に伏した男たちを見下ろしていた。


 リーダー格のマントの男はゲルダ達の戦力をよく知っている。

 竜の寵児の戦力六人の中でも弱く、戦力外と見做した三人に、格下を見下すかのように扱われた事に矜持が傷つけられていた。


「雑魚共が……今すぐその口、後悔させてやろう!」


 マントの男たちが黒い炎を纏い、己の足を再生していく。その場で立ち上がり、フレドたちと対峙した――その両手足を、突如として背後から現れたフィル、トビアス、ナディアが火力を抑えた≪火竜の息吹≫で吹き飛ばしていた。

 再び地に転がる男たちは、またしても虫けらのように見下ろされていた。


「貴様らが立って歩く? 冗談だろう? 虫けら未満は地に這いつくばっておけ」

「毎晩私たちを堪能していたようですが、その代償は己の全てで支払って貰いましょう」

「貴方たちが生まれてきたことを後悔するように、と殿下から注文を承っています。一切の容赦は期待せぬ事ですね」



 混乱した仲間のマントの男が叫ぶ。


「何故だ! なぜ貴様らが生きている! なぜこの場に居る! 先程まで確かにこの場には居なかったはずだ!」


 赤竜が溜息をついて説明してやる。


「貴様ら崇拝者如き、我が魔導でどうとでも騙せる。高位竜種を侮り過ぎだね。私が公爵級の悪魔とも戦った竜だという事を忘れていないかな?」


 てくてくと後からやってきた、純白のローブを纏った亜麻色の髪の少女が、暢気に赤竜に問いかける。


「えーと、先にリーダーじゃない人たちに祈りを捧げればいいんだっけ? あってる? 赤竜おじさま」


 赤竜は慈しみに満ちた笑みで少女――ゲルダに頷いた。

 それを見たゲルダが、立ったまま二人のマントの男に対して祈りを捧げる。


「創竜神様、この憐れな者たちに愛の心を取り戻させください」


 ゲルダの胸に輝くネックレスの宝玉が眩く光り、二人の男たちに照射される。

 竜の寵児であるゲルダが一週間祈りを捧げて力を込めた宝玉から、聖なる光が迸り男たちの魂を包み込んだ。

 それは創竜神の奇跡に近い力だった。人の心を失ったはずの男たちの魂に、人らしい愛と良心が取り戻された。

 それと共に男たちの胸に、激しい悔恨と自己嫌悪が襲い始めた。

 今まで行ってきた悪行の記憶が、己を内から責め立てて行く。


 二人の男たちは苦悶の表情を浮かべ、ただひたすら己を責めた。


 ――なぜこのような悪辣な事をしてこれたのか、なぜこのような外道に手を染めて平然と笑えたのか。


 命乞いをするものを笑いながら踏みにじってきた。その相手の痛みと苦しみに共感し涙し、己を苛んだ。

 同時に己の中にある悪魔の甘い誘惑が男たちを悪の道へ引きずりこむ。引きずり込まれるほど悔恨が増し、悪魔の誘惑を振り払おうと必死になった。

 だが男たちほど深く悪魔に浸食された魂は、その誘惑を振り切る力など持たない。

 魂が引き裂かれるような苦しみを二人の男たちは味わいながら、それでも人として在ろうとした魂はやがて力尽き、その身体は塵となって風に消えて行った。



 ゲルダが目を開けて赤竜に尋ねる。


「……んーと、これで良かったのかな? あの人たち、ちゃんと救われた?」


 赤竜は満足そうに頷いた。


「ああ、ちゃんと”人として”死ぬことが出来たよ。悪魔崇拝者の末路としては、とても救いがあった方だろう」




 残されたリーダー格のマントの男は戦慄していた。

 少女は何も知らされていないと理解した。

 赤竜は敢えてこの手段を執った。悪魔崇拝者が最も苦しむ手を選んだのだ。手を汚す事すら疎み、自らを罰して消滅させる道を選んだのだと知った。

 何も得られず、何も成せず、食われて悪魔の力になる事も許されず、誰かの手を汚させることすらできず、自ら魂を消滅させられた。

 文字通り”生まれてきたことを後悔しながら滅ぶ”事を強いられた。

 悪魔に力を与える絶望を抱く事すら許されず、最期まで愛を持った人として消滅したのだ。


 マントの男がフードの奥で歯噛みした。


「貴様ら……それで神の側のつもりかっ?! そこまで無残な真似を、よくも笑いながらやってのけられるな?! 我らですらここまでの事をやろうなどとは思わぬぞ?!」



 ゲルダがきょとんとした顔で小首を傾げた。

 彼女は”これが最も魂が救われる道だ”と教えられている。無残と言われても意味を理解できないのだ。

 赤竜を見上げ、再び尋ねる。


「ねぇおじさま。この人は”特に念入りに”祈ればいいんだっけ?」


 赤竜が微笑んで頷いた。


「ああそうだ。お前の祈りで”救って”やるといい」



 マントの男が恐慌状態になり叫んだ。


「嫌だっ! そんな最期を迎えるのだけは御免だ! ――侯爵閣下! 全てを御身に捧げます! 今だけ我が身体に閣下の御力をお貸しください!」


 叫ぶと同時にマントの男の身体を黒い濃厚な炎が押し包み、みるみる黒光りする巨大な異形の姿へと変わっていった。

 山羊の足に人の胴体、牛の頭――下級の眷属と同化する事で、男は五体を取り戻して立ち上がり、激しく吼えた。

 己の全てを投げうち、普段は顎で使っている下級の眷属と同化してでもあの最期を遂げたくない――その思いがこの姿だった。

 理性も何もかもを投げ捨てる代わりに強大な力を得る、後戻りのできない悪魔崇拝者最後の手段だった。



 ゲルダはきょとんとした顔で小首を傾げる。


「ありゃ、救えなくなっちゃったのかな? えーっと、この場合はどうするんだっけ?」


 赤竜が愉しそうに微笑んだ。


「一番迷惑をこうむったトビアスにでも、全力の≪火竜の息吹≫を付与してやるといい。おいちゃんが術式制御のサポートをしてあげるから、遠慮なく全ての力を込めて構わないよ? 後は彼に任せておきなさい」


「わかったー!」


 ゲルダの右手が元気よく天を突いた。


 すぐに≪増幅≫と≪収束≫を兼ねた≪火竜の息吹≫を、トビアスの利き手である左手に付与する。

 既に全員に、創竜神の加護と≪火竜の加護≫が付与されている。本来なら今のゲルダに制御しきれるものではないが、赤竜が手厚くサポートを行い、流麗に術式が成立していた。

 燃える拳を確認したトビアスはゲルダに優しく微笑んだ後、その姿を常人の視界から消した。



 次の瞬間、数えきれない程の青い火花が散ったと同時に、異形の怪物が真っ青な炎で全身を燃やしながら、トビアスの蹴りで空に打ち上げられていた。

 上空高く打ち上げられた異形の怪物に向かって、トビアスが鋭く左拳を振り抜いた。


 大地が大きく揺れ、街を包み込むかのような巨大な青い光の帯が上空に伸びた。空気を切り裂いて耳をつんざく竜の咆哮のような音が鳴り響く。

 光に飲まれた異形の怪物は、何もできずに塵一つ残さず消滅した。





****


 余りの光景に、私は呆然としてしまった。

 だって、すっごい地面が揺れたし、とっても大きな光の帯だったし、赤竜おじさまの防御結界と創竜神様の加護があるのにすっごい熱かったし!

 音も初めて聞くほど大きくて、しばらくは耳が聞こえなくなって、くらくらしてた。

 赤竜おじさまが「怒った竜の咆哮のようだったね!」と楽しそうに笑っていた。


 私はおじさまの声でようやく耳が聞こえるようになったと気づき、抗議の声を上げる。


「おじさま、笑い事じゃないよー! あんな凄い事になるなんて聞いてないよ?! 空全体が≪火竜の息吹≫で覆われてたよ?! 学院とか街とか大丈夫だったの?!」


「はっはっは! そこはきちんと防御結界を張ってあるさ。ちょっとゲルダのネックレスから力を借りたけどね」


 私は自分の首にかかっているネックレスを見てみた――そこには黒い石が嵌め込まれていた。


「あれ? 白くなくなっちゃった。光が消えちゃったのかな?」


 赤竜おじさまから受け取った時でも、淡く白く輝いてたのに。

 あれは巫女の祈りの輝きだった、という事かな?


 赤竜おじさまが楽しそうに笑った。


「ははは! トビアスが本気で拳を打ち込んだみたいだからね! あれだけの≪火竜の息吹≫からみんなや建物を守るのに、込められていた祈りを全部使ってしまったよ」


 トビアスを見ると、直径二十メートルくらいの大きな穴の中心で左拳を振り上げた姿勢のままだった。

 ……うーん、校庭が抉れちゃったな。学院の人から怒られる前に、後でおじさまに直してもらわないと。


 とにかく慌ててトビアスに駆け寄り、声をかける。


「トビアス! 大丈夫だった?!」


 トビアスは瞑っていた目を開き、ゆっくりと拳を下ろした。


「……熱くて死ぬかと思いました。ちょっと轟音で耳をやられましたが、なんとか動けます。ですがあんな術式だとは聞いていませんでしたよ?」


 トビアスはゆっくりと埋まっていた足を地面から引き抜き、制服に着いた埃を払っていた。


「なんかねー、拳の威力とか闘気や殺気に応じて炎が大きくなるんだって。私もあんな大きな炎になるとは思わなくてびっくりしたよ」


 トビアスは納得した様に頷いていた。


「……なるほど。殺気に闘気に怒り、全てを込めて全力で打ち抜きましたからね」


「怒りも?! どんだけ怒ってたの?!」


 トビアスがにっこりと笑う。


「それはもちろん、生まれて初めて感じた程度には怒っていましたよ?」


 私は小首を傾げて尋ねる。


「なんでそんなに怒っていたのかな? みんなもそうだけど、その理由が私だけさっぱりなんだけど?」


「今は分からなくてもいいんですよ。いつか分かる日が来ます」


 優しく微笑むトビアスの翡翠の瞳を見上げながら、再び私は小首を傾げた。


 うーん、そういうものなのかなー?

 なんだかずーっと教えてもらえない気がするんだけど。

 自分で気付ける日が来るってことかなー?


 辺りを見渡すと、みんなもようやく耳が治ってきたみたいでこちらに駆け寄ってきていた。


「殿下! ご無事でしたか!」


 駆け寄ってくるナディアに、私はニカッと笑って見せる。


「もっちろん! 赤竜おじさまの傍で私が怪我をする訳ないじゃない? ――でも、戦う前に”なんとなく”感じてたより、全然弱い敵だったね」


 フィルが微笑みながら応えてくれる。


「相手が赤竜に飲まれている間に、なにもさせずに封殺しましたからね。下手な動きをすれば赤竜に即座に消滅させられる状態でしたから。まともに六人でやりあっていたら、かなり苦戦していたはずですよ」


 なるほど……赤竜おじさまが出てくるとこんな感じになるのか。

 一方的すぎて相手が弱いとか、自分が強いと錯覚してしまうんだね。

 そんな錯覚を持っていたら、きっと格上を見誤って戦ってしまって負ける事になる。

 赤竜おじさまが自分で戦いたがらないのは、この辺にも理由があるんだろうなぁ。


 私は赤竜おじさまを見上げて尋ねてみた。


「ねぇおじさま? どうして今回は私たちと一緒に戦ってくれたのかな?」


 赤竜おじさまは苦笑を浮かべた。


「幻覚とはいえ、お前の望ましくない姿を醜悪な者共に見せる事になったからね。その責任を取りに来たのさ。できれば最後の一人もきちんと”救って”やりたかったが、思ったより臆病者だったね。残念だよ」


 ふーん……なんだかよくわからないけど、責任かー。赤竜おじさま、そういうの凄い気にしそうだしなぁ。

 最後の人もきちんと救ってあげれば、人としての最期を迎えられたのかなー。

 ”なんとなく”創竜神様が怒っている気もしなくなったし、深く考えるのは止めておこうかな。あ、でも――


「ねぇおじさま? ”私の望ましくない姿”って――」

「それを殿下が知る必要はございません」


 氷雪の嵐を背負ったナディアにまたしても止められてしまい、私はすごすごと引き下がった。

 なんでみんな教えてくれないのー?!





 悪魔崇拝者がトビアスの精霊眼に術式を仕掛けていたのが確定したので、それを理由にヴェルマン伯爵に悪魔崇拝者の疑いが濃厚、となって調査するようにフィルが兵士さんたちに指示を出してたみたい。

 赤竜おじさまが「ちょっと行ってくるよ」と兵士さんたちと一緒に調査に向かっていった。

 学校の警備さんたちは、最後の≪火竜の息吹≫で大地が揺れた事や大きな音にとても驚いていたらしいんだけど、みんな怖がってすぐには近寄ってこれなかったって言ってた。

 どうやら街の人たちや学院に向かっていた生徒たちも怖がって近寄れないらしく、学院も数日は色んな調査の為に休校ということになって、私たちは一旦神殿に戻っていった。





****


 ――朝の王宮、礼拝堂前。



 私は日課の礼拝の為に、ナディアたちと共に礼拝堂に向かう。

 礼拝堂の前にはフィル、そしてトビアスの姿。


 ヴェルマン伯爵邸から悪魔崇拝者の証拠が見つかり、ヴェルマン伯爵の極刑が決まったらしい。

 居候先を失ったトビアスに対して、フィルが”学院卒業まで、このまま王宮に居候すればいい”と言いだして、今のトビアスは王宮住まいだ。

 さすがに長期間の滞在となると国王陛下の許可も必要だったみたいだけど、陛下からは無事に許可が貰えたそうな。

 なのであの日以来、朝の礼拝堂前には二人の男の子が並んで立つことになった。


 私は元気よく二人に声をかける。


「おっはよー! 二人とも」


 青空のような瞳と翡翠の瞳が私の姿を捉えた。

 二人の男の子が笑顔で私に応えてくる。


「おはようございます、ゲルダさん」

「おはようございます、ゲルダ」


 私はトビアスに尋ねてみる。


「信徒のフィルが礼拝するのは分かるけど、神を信仰してないトビアスまでなんで礼拝堂に来るの?」


 トビアスがにこりと笑みを浮かべて応える。


「私は本気で貴方を奪うと決めましたからね。フィルとの二人きりの時間など、簡単に許すわけにはいきません。それに、信仰していなくとも祈りを捧げる事くらいは許されるはずです」


 うーん、精霊眼だから本気か冗談か分かりづらい……

 最近は慣れてきたからか感情をある程度読み取れるようになってきたけど、それでも分かりづらいことに変わりはない。


「そりゃあ創竜神様はそのくらい許してくれるだろうけど、恋人との二人きりの時間を邪魔される方の身にもなって欲しいかなぁ」


 もちろん侍女であるナディアやティナ、アーネはノーカウントである。


 トビアスは変わらず楽しそうな笑みを浮かべて応える。


「私と恋人になれば問題は解決しますよ?」


 フィルが不機嫌オーラを出しながら張り合ってきた。


「仮に僕からゲルダを奪えたとしても、僕がお前たちの二人きりの時間を簡単に許すと思うか? 奪われたら奪い返すだけだ」


 それって張り合う事かな……結局、私は恋人との二人きりの時間を邪魔されるという事でもある。

 私はなんだか頭痛を覚えてしまい、軽く頭を押さえた。

 なんでそんなに私に執着できるんだろう?


「君たちさぁ……私には君たちがそんなに必死になる意味が分からないよ。私にそんな価値はないよ?」


「あります」

「あります」


 こちらに振り向いたフィルとトビアスの声が重なった。

 その勢いに思わず、半歩下がってしまった。

 そういう所はほんと仲がいいな二人とも……


 私は姿勢を整え、溜息をついた後に二人に告げる。


「私は竜の寵児、祈りを捧げる人生なんだよ? そんな私と恋人を続けたり、ましてや夫になったりしてたら、君たちが自分の人生を歩めなくなっちゃうよ。私はそんな君たちを見たくはないよ?」


 トビアスがにこやかに応える。


「貴方がお役御免になってから夢を追いかけ直すだけですのでお気になさらず。その時は貴方が私の遺跡巡りに付き合う番ですよ?」


 フィルも優しく微笑んで応える。


「ゲルダさんがお役御免になってから王族としての務めを果たすだけです。父上からその承諾は内々に頂いてると言ったでしょう?」


 うーん、この有無を言わさぬ勢い、何を言っても無駄かな。

 私はドデカ溜息をついた後、二人の横を通り過ぎて祭壇前に跪いた。




 祈りを捧げた後、私はナディアに尋ねる。


「ねぇナディア。学院に行く前に少し時間あるかな?」


 ナディアが懐中時計を取り出し時刻を確認する。


「そうですね……殿下はいつも早めに出立なさいますので、三十分程度であれば余裕があるかと思います」


「じゃあ三人で朝のコーヒーを飲んでから学院に行こう!」


 毎朝の学院での礼拝時間があるから、普段は少し早く出てるんだよね。

 今後はお昼に礼拝を回しても良い気がした。

 その分の時間を、三人で過ごす事に充てても良いんじゃないかな?

 毎日説得していれば、二人とも気が変わるかもしれないし。


 私は先頭を歩いて、陽気に部屋に向かう。

 その後ろをナディアやティナ、アーネと共に、フィルとトビアスが続いて歩く。


 霊脈が回復すれば創竜神様に”このままフィルと婚姻していいか”と聞くこともできるだろう。

 その答え次第では私はフィルたちと別れ、竜の寵児として祈りを捧げる旅に戻る事になる。


 まぁトビアスの事だから、それでも有無を言わさず付いてきそうではあるんだけど。

 フィルも王族の立場を捨てでも付いてきそうな勢いだしなぁ。

 フレドまで一緒についてきたりしたら、結局今と変わらない毎日が続きそうだ。


 きっとそうなったとしても、私はあのコーヒーを手放さずに、毎日ストレートで飲んでいる……なんとなく、そんな気がした。


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