009(朝チュン)
――『ううっ』
俺は気が付くと、ふかふかのベッドで横になっていた。
昨日は飲み過ぎたな、記憶がない。宴でシガー前国王にアドバイスしたのは覚えてる。魔法か何かで運んでくれたんだろう。
ん!? ベッドに天がい、メルヘンなベッドだな。
『んんっ』
えっ!? 横に誰か居る……起こさないように掛け布団をずらす。…………終わった…………裸のゼニア姫だ。一国のプリンセスと朝チュンしてしまった!? いや、ヤった記憶はないぞ。とりあえず、逃げよう。
俺は自分の物であろう浴衣を着て、こっそり部屋を出る。
『ソウ?』
ビクッ! 俺は振り返る。終わった……ジャック・ストライフだ。ゼニア姫の部屋から出るところを見られてしまった。
『いや、何でもないんだ』
『昨日は悪かったな。絡んでしまったようで』
『酒癖がわるいのか。シラフだとマトモだな』
『朝からご苦労だな、近衛兵見習い』
『あっ、ああ、まあね。ジャックとゼニア姫は結婚するんだよね?』
『その予定だが…………まさか、ゼニアに何かしたのか?』
『いや、違うんだ。朝チュンだけど記憶がない』
『ソウ、朝チュンってなんだ?』
『えっ!? 朝は小鳥がチュンチュン鳴いてるだろ』
ジャックはゼニア姫の寝室のドアノブを掴み、呪文を唱える。
ジャックが扉を開けたと同時に30センチメートルくらいの鉄球が飛んできて、バキッ! ジャックの顔面にクリーンヒットする。これも魔法か、恐ろしい。
『痛たたた、ゼニア姫、私です、ジャック・ストライフです』
『今は何も着てないの、下がって』
扉が自動で閉まる。これも魔法か。
『大丈夫か? ジャック』
『ああ、大丈夫だ。それより、おかしくないか? ゼニア姫は裸なのに、何でソウが部屋に居た?』
『ヤってないよ』
『当たり前だ』
『昨日の記憶がない。飲み過ぎたかな、アハハ』
『私はゼニア姫を信じる。許嫁でありながら一晩を他の男と過ごすなんて。何もなかった、そうだろ? ソウ』
『ああ、近衛兵として見張っていた』
『昨日の記憶がないのに? 矛盾してないか? それにまだ正式な辞令交付はされてないはず』
『……ジャック、頼みがある』
『なんだ?』
『俺の身の潔白を証明してくれ』
『それはいいが、どうやって?』
『魔法でなんとかならない? 国一の魔法剣士なんだろ?』
『おいおい、魔法剣士は読んで字のごとく、剣がなければろくな魔法は使えない』