010(魔導師を探しに)
数分後、ゼニア姫がドレスを着て部屋から出てきた。
『ソウ、私のバージンを奪ったのね?』
『いや、違うんだ。酔っ払ってたから、そんな事にならない。ただ寝ていただけだ』
『ゼニア姫、魔導師セシル様を呼び、リプレイ魔法で昨晩に何があったか調べてもらうのはどうでしょう』
『誰それ? リプレイ魔法?』
『セシルおじ様は特殊魔法の第一人者よ。リプレイ魔法とは、その場所で過去にあった事を再生出来るの』
『そいつぁいい! 呼びに行こう。あっ、テレパシーを使えば?』
『魔導師セシル様は神出鬼没。城下町に居ると思うが、正確な居場所が判らなければ、テレパシーは無意味だよ』
『仕方ない、足で探すか』
『ソウ、行こう。ゼニア姫、くれぐれも内密に』
『分かってるわ。タイムリミットは今日中よ』
――俺とジャックはワープエレベーターで下界に降りる。よく考えたら、“異物感”や“血”で判断出来た。後のひな祭りだな。それよりは今出来る事を頑張ろう。
『街は広そうだから、魔法車で探そう』
『非戦闘用の魔法車はポンコツだぞ? 大丈夫か?』
『分からない、アハハ』
俺達は塔のふもとの駐車場へ行く。スポーツカーや戦車、装甲車、軽自動車みたいなコンパクトカーもある。
『スポーツカーで行こうぜ』
『ダメだ、戦闘をするんじゃないんだから。キッカー250にしよう』
『キッカー?』
『30年落ちのコンパクトカーだよ。“燃費”は悪いが、ソウの魔力なら大丈夫だろう』
『仕方ない、それで行こう』
30年落ち……期待通り、ヒドイ有り様だった。スカイブルーのボディーは所々、凹み、塗装は剥げて、錆びている。
『ジャック、これは動くのか?』
『ソウの魔力次第だな。私もここまでヒドイ有り様は初めてだ。正規勤務以外の魔法車使用は査定の低い順の決まり。我慢してくれ』
『分かった、さっさとセシルって人を探そうぜ』
『まずは自宅を訪ねてみよう』
俺はジャックの指示で魔導師セシルの自宅へ向かう。キッカー250というコンパクトカーは2シーターだ。ナビは付いてないし、何度もエンストしそうになるし、力が抜ける。かなり燃費が悪い。
『この車の排気量は? 馬力は?』
『ソウは難しい言葉を遣うな』
『簡単なことだよ』
『……おい、信号機が赤だ。停まれ』
『分かってるよ〜。電力はどこで発電してるんだ?』
『魔法だよ。電力だなんて、流石は異国出身だな』
『誰が魔法で信号機なんて操作してるんだ?』
『ソウは人柱を知らないのか……』
『人柱?』
『ラークバロン公国の塔の中に戦闘向きじゃない、パワーのある魔法使い達が日々魔力を消費して、民の生活を安定させてるのさ』




