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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第12巻 陰陽の狭間を駆け抜けて

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潜伏Ⅶ

 なるほど、と隆三は言ったきり、彼らと同じように黙ってしまう。


「なぁ、桜。大鬼ってことは、さっきの小鬼に比べて大きいんだろうなって言うのは予想できる。でも赤い鬼ってそんなに危ないのか?」

「赤い鬼は気性が荒いの。それと勇輝さんなら知ってると思うけど、生態がその……あっちの国で言うゴブリンに近くて……」


 そこまで聞いて勇輝は理解する。ここに来るまでにほとんど()()()()()()()()。それは、つまり()()()()()()だろう。

 ゴブリンが人々の間で最も毛嫌いされる理由は、他種族の女を攫って嬲り、子を孕ませるからだ。赤鬼もまた凶暴性に加えて、どの色の鬼よりも色欲があることで嫌われている。


「生還した女性の証言では、攫った初日は喜びを抑えきれず宴を開くそうです。そして、二日目の陽が昇ると共に……あれが始まるとか」


 巴の言葉を聞いて勇輝は眉を顰めた。

 二日目に凌辱があることを知っているということは、つまりその情報を伝えた女性も鬼たちの毒牙にかかってしまったということを意味している。どれだけの想いで、そのことを語ったのかと考えると胸が痛くなる。


「人数は?」

「概算で……二十人ほどの娘たちが攫われてしまいました。その他の女子供は別の場所に避難させることができたのですが」


 観念するかのようにギルドの職員が説明を始める。

 正午過ぎに村のどこかからか鬼たちが襲撃をしかけてきた。ギルド職員も総出で対処したものの、範囲が広かったこともあり、手が回らなかった場所がほとんどであったという。

 この地域を治める大名の従者の家があり、そこからも武士たちが武装して対応したが、あまりにも急な攻撃だったため対応が遅れてしまった。それでも何とか拮抗状態を作り出し、村人の誘導と避難に一時的とはいえ成功させたのは彼らの成果が大きい。


「善処はしました。ですが、大鬼が出てきて状況は不利になりました。身の丈は一丈を超えていて、槍は刺さらず、刀では斬れず。逆に鬼が腕を振るえば人が何人も宙を舞うのですから恐ろしい」

「我々も武器を持ってこそいるが、刃が食い込まねば太刀打ちのしようがない。できることと言えば、それこそ走り回って敵の攻撃を避けることくらいよ。半刻も時間を稼げたかどうか……」


 言葉だけ聞けば逃げ回った臆病者と捉えかねないが、防具もつけずに着の身着のまま刀だけで対峙していた彼らは只者ではない。一撃喰らえば即死の可能性もある中で、一時間も敵の視界に留まって生き残るのは至難の業だ。

 もちろん、彼らは複数人で対峙していたので後退する余力もあっただろうが、その分、後ろから迫る小鬼にも対処していたことを考えると戦いなれていることが伺える。


「もうこれまでか、と腹を括って一か八か体をよじ登り、目に刀を突き立ててやろうかと思っていた時にだ。いきなり、素手で女の子が大鬼に殴り掛かってな。あの巨体が吹き飛ばされたもんだから、俺たちも小鬼も仰天して固まっちまった。髪が赤いもんだから敵なのか味方なのかもわからんかったしな――――って、どうした?」


 おや、と勇輝たちの視線が交差する。ついさっきまで、そんな幼女と一緒にいたように感じるのは気のせいだろうか。


「いや、構わん。続けてくれ」


 片手で顔を覆って天を仰いだ隆三は、もう片方の手で先を促すように振る。きっと喜んでいいのか、落ち込んでいいのかわからない複雑な心境なのだろう。何故ならば、ここにアリスがいない時点で彼女の取った行動が、彼女を知る者であれば誰でも予想できるからだ。


「あ、あぁ。とりあえず、大鬼も分が悪いと思ったんだろう。大きく一声吠えると警戒しながら他の小鬼どもとあっちの方へと戻っていった」

「それで、その女の子は?」

「あの子か。一通り家の下敷きになった人たちを助けると、俺たちが引き留めるのも聞かずに大鬼の後を追うって駆けていきやがった」


 ――――あの大馬鹿が。


 声にならない声が隆三の方から聞こえてきた気がした。

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