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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
白銀の聖剣と漆黒の聖鞘

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魔王の力Ⅵ

「なるほどな。やっと合点が行った。魔王は殺せず、いつダンジョンが蛇となって襲って来るかわからない。前者はともかく、後者は冒険者にとって死活問題だ。避けられるトラップなら対策はできるが、ダンジョン自体がいつ発動するかわからないトラップになってると聞いたら逃げ出す奴は多そうだ」



 ウッドは顎を撫でながら、聖剣を見下ろす。その目には怒りも悲しみの感情も籠っておらず、ただ事実として受け入れ、動揺することのない真っ直ぐな視線を投げかけていた。



「多そうだ、じゃないぞ。少なくとも、ファンメル王国の民の多くは自らの職に加えて、ダンジョンや魔物からの収入で楽に生活している部分がある。それが半減したとすれば、経済ダメージが計り知れないことになるはずだ」


「わーってるよ。だがな、俺としてはその解決方法――何となく予想がついてるんだ」


「何だって?」



 ウッドの宣言にマックスは食って掛かる。リブラ枢機卿も、それは想定外だったようで目を見開いていた。



「結局、その蛇化したダンジョンって言うのは、魔王の残りカスみたいなもんなんだろ? だったら、お前の腰にある聖剣様でダンジョンに攻撃してやれば、残りカス自体が封印されるんじゃねえのか?」



 沈黙。


 聖剣は魔王を封印する力がある。当然、魔王に効力があることは実証済み。それならば、魔王から分かたれた力に対しても有効である。


 ウッドの推測は、実に論理的かつわかりやすいものだった。



「素晴らしいですね。まさか、そこまで辿り着くとは思っておりませんでした」


「よせよ。形だけの賞賛をもらっても気持ちが悪いだけだ」



 リブラ枢機卿は小さく拍手する。対して、ウッドは顔を顰めて、リブラ枢機卿を睨み返した。まるで、下らない世辞より詳細を聞かせろと催促しているようにも見える。



「――ダンジョンの蛇化、或いは魔王化とでも呼べばいいのでしょうか。それを黙っていた理由は、あなたの推測の通り冒険者を始めとする多くの人々、ひいては多くの国々に混乱を引き起こしかねないからです」



 短期的に見ればパニックや暴動が起こり、絶望して命を絶つ者も現れることが予想される。長期的に見れば国家が立ち行かなくなり、最悪、国としての形を保てなくなる可能性すらあるだろう。


 ダンジョンが生活に密接に結びつき、無くてはならないものだからこそ起きてしまった悲劇と言える。



「そして、これはあなた方。また、歴代の勇者とその仲間たちを貶すつもりはないことを前提に言います。もしも、そのダンジョンの中に潜れと言われて、集中力をまったく削がれない自信はありますか?」



 ――そんな自信は絶対にない。


 勇輝は心の中で即答する。いつ化け物の胃袋の中に変化するかわからない状態で、まともに戦えるはずがない。必ずそこには恐怖が存在し、確実に精神を削り取ってくる。


 聖剣で何かを行えば、ダンジョンの変貌を抑えることが可能ならば、勇者に知らせずに戦闘に集中してもらった方が良いというのは、まったく以て正しい考えだ。


 効率と仁義。そのどちらかを選ぶ際に、歴代の枢機卿と聖剣は前者を取ったのだろう。真実を知った今、それを批難することは難しいと勇輝は感じた。



「……リブラ枢機卿。あなた方の配慮を踏みにじってしまったこと、深くお詫び申し上げます。しかし、それを知ったからには王国の民を始めとする罪なき人々を救うために、全力以上の力が奮えるというもの!」


「あーあ、こりゃ止まりそうにないな。この前まで勇者になることを拒否してた奴には、とてもじゃないが見えないね。ま、それが良いところなんだけどよ。で、そこら辺どうなんだ? 聖剣をダンジョンに突き刺せば解決、とかあんのか? さっさと言えよ」



 ウッドは呆れた声を漏らした後、そのまま聖剣へと問う。


 その余りにも乱暴な言い方に、一部の枢機卿は眉を顰めるが、成り行きを見守るに留めていた。

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