深まる疑念Ⅳ
先程とは打って変わって、顔を赤らめながらも何かを期待するような視線を送る桜。
それが余計にプレッシャーとなって勇輝に襲い掛かる。掛布団の下でシーツを握りしめ、手の平に滲んで来た汗を拭き取った。
「えっと、その、何ていうか……」
言葉が浮かばず、何とか合わせていた目も泳いでしまう。新婚旅行デートなどと言われた時以上に、顔が真っ赤になっているのを感じる。
自覚するほど脳が混乱し、息が浅くなっていく。それでも、勇輝は思考を止めずに言葉を探し続けた。
桜は勇輝が困っている様子ですら楽しむかのように微笑んでいる。そして、決して何も言わずに勇輝の言葉を待っているようだった。
「お、俺とデートしてくれませんか?」
「うーん。それは良いけど、リシアさんも言ってたでしょう? もうちょっと、良い誘い方があるんじゃないかな?」
「ぐっ……」
単刀直入に告げたが、桜に即却下されてしまう。冷静に考えてみれば、その通りだ。あまりにも直球過ぎて、何も響かないだろう。
今、桜に言わなければいけないことを整理する。すると、デートに誘うよりも先に言わなければならないことを忘れていると気付いた。
「――こ、この度は自分勝手な行動で桜を心配させてしまったのでそのお詫びにデートをエスコートさせていただきたいのですがどうか付き合っていただけないでしょうかっ!?」
我ながら何とも情けない誘い文句だと思いながらも、勇輝は息継ぎすることなく、頭に浮かんだ言葉を言い切った。
そのせいで後半は目を瞑ってしまっていたのだが、ここに来て目を開けるのが怖くなってしまう。
窺うようにゆっくりと薄目で桜を見ると、目の前には彼女の人差し指があった。
「えいっ!」
「あたっ!?」
おでこにそのままグサリと指がめり込んだ。思わず、体を仰け反らせて両手で額を抑える。
別にそこまで酷く痛みが襲ってきたわけではないのだが、身構えていなかったこともあって、オーバーリアクションをしてしまった。
「もう、勇輝さんってば、こういう時はダメダメなんだから。でも、ちゃんと、さっきのことを謝ってくれたので、その点は良しとします」
腕を組んで、わざとらしく頬を膨らませた桜は、審査員のように勇輝を採点する。
「でも、今日はとりあえず、ゆっくり休むこと。アメリア様が転移魔法で来てくれるのは明後日だから、デートは明日でも大丈夫だからね」
「……え、デートしてくれるの?」
「逆にあの流れを受けてしないと思ってたの? 一応、勇者や魔王のことを調査するお仕事で来てるけど、実際はこんなに忙しいはずじゃなかったから、一緒に街中を散策できると思って楽しみにしてたのに」
当初の予定では、帰るまでの一週間で調査に協力するという話だったのは事実だ。当然、その内の全部が調査として予定されていたわけではない。
運が悪かったのは、次から次へと問題が発覚したことだろう。それが無ければ、勇輝がここで寝込んでしまうことも、街を散策する暇が無くなってしまうことも無かったはずだ。
「えっと、じゃあ、明日は改めて、よろしくお願いします、ということで。でも、この前、アルトたちと行ったところくらいしか俺にはわからないけど……」
エスコートをすると宣言してはいたが、実際はカルディアの街についてはほとんど何もわからないというのが正しい。
口から出まかせ、といわけではなく、あくまで勇輝としては可能な限りエスコートするつもりではあった。
「いいじゃない。わからないところを二人で悩みながら一緒に歩くって。何でも先が分かっている状態で歩くのは楽かもしれないけど、ワクワク感がないでしょ?」
――だから、明日は楽しみにしてる。
そう告げた桜は、勇輝の頬にそっと触れた。
【読者の皆様へのお願い】
・この作品が少しでも面白いと思った。
・続きが気になる!
・気に入った
以上のような感想をもっていただけたら、
後書きの下側にある〔☆☆☆☆☆〕を押して、評価をしていただけると作者が喜びます。
また、ブックマークの登録をしていただけると、次回からは既読部分に自動的に栞が挿入されて読み進めやすくなります。
今後とも、本作品をよろしくお願いいたします。




