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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
白銀の聖剣と漆黒の聖鞘

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うっかりな聖剣エトナさんⅧ

『おい、お前ら。今の内にさっさと下がれ!』



 木の枝を切り落とすのに集中している勇輝に変わり、心刀が思念で神殿騎士たちに呼びかける。



「なっ!? この声は一体!?」


『うだうだ言ってる場合じゃねえ。一度、態勢を立て直すんだよ。せっかく、あんたらのところの黒騎士の隊長が命懸けで得た攻略法があるんだ! 今の内に下がれ!』


「え、援護ご苦労!」



 ようやく神殿騎士たちが撤退を開始する。しかし、それで安心できるわけではない。何せ、木の枝はこの瞬間も襲って来ており、勇輝の綱渡りな防御と速度もいつまでもつかわからない状態だ。


 トレントの歩く速度に比べれば早い者だが、それでも神殿騎士たちの足取りは重い。攻撃範囲から出るのには、まだ時間を要する。仮に抜け出たとして、見つけ出した攻略法で倒せるほどの魔力と体力が残っているかは甚だ疑問だ。



「まだ……動く……!」



 身体強化事態に慣れて来ただけでなく、幸か不幸か、魔力制御・最大解放を発動した回数もそれなりに多い。


 そのおかげか、思考速度と体の速度の差で動けなくなるという副作用は、まだ出ていない。だが、使いこなせていない以上、いつ発症するかという恐怖は常に存在している。


 そんな中、届く枝の本数が減って来ていた。高速で切り飛ばしていたこともあってか、攻撃の頻度が減り始める。


 このままなら、脱出を待たずにガンドで仕留めることができる。人差し指に意識が向くが、唐突に攻撃が苛烈になった。


 慌てて心刀を振るうが、何発かが神殿騎士たちの足下の地面を捲っていく。



「こいつ、体を回転させてっ!?」



 トレントは攻撃できる枝が無くなり始めたとみるや、体の向きを変えて、無傷な枝で攻撃頻度を増やしてきた。


 一度、ガンドを放とうと魔力を収束させようとしたのが運のツキ。体内の魔力の循環の乱れが、勇輝の行動を遅れせてしまう。



「ぐあっ!?」



 ついに神殿騎士の一人の胴に木の枝がクリーンヒットした。地面と平行に横っ飛びで吹き飛ばされていく。二、三度地面を跳ねた騎士は、何とか立とうと藻掻いていたが、なかなか立ち上がれないでいる。



(まずい、守り切れない!)



 どう足掻いても、今いる場所と吹き飛ばされた神殿騎士の間を往復しながら枝を切るのは不可能だ。


 運が良いことに吹き飛ばされた方向は、枝が少なくなっている側だ。それでも狙われれば逃げるのは難しい。


 そのまま集団を守り続けるか、個人を助けに走るか。或いは、攻勢に出て被害が出る前に倒すか。


 選択肢がいくつも存在する中で、勇輝は心刀を手放した。



『ちょっ――お前っ!?』


「すぐ戻って来る。タイミングは任せた」



 自信を狙って迫り来る枝に合わせて、勇輝は足裏を乗せる。


 本来ならば、苦悶の表情を浮かべる一撃を利用し、勇輝は倒れた神殿騎士の下まで弾丸のように跳躍した。


 集団を見捨てたわけではない。両方の命を救うための最適な行動だ。


 勇輝の心刀の固有能力は、鞘の中に刀が納まるように刀自体が転移するか、鞘の側が転移するというもの。その際に転移する側に触れていた人物や物を同時に移動できる。


 それはつまり――。



「今だっ!」



 恐るべき速度で四つん這いの騎士の下へと接近した勇輝は、手を触れる寸前に叫んだ。右手が騎士の背中に触れると同時に、視界が一瞬で切り替わる。


 わずかな時間とはいえ、心刀が落下していた分だけ、地面に近い場所に体制を崩した状態で出現する。


 膝を地面についた勇輝は、立ち上がりざまに心刀を抜き放ち、再び、木の枝を切り飛ばす。だが、不思議と副作用が出る兆候がない。むしろ、少しずつ早く動いていた感覚が無くなっていくくらいだ。



「魔力、切れ!?」



 ここに来て、想定外の状況に勇輝は頬を引き攣らせる。ポーションを飲んでも追いつかないほどの魔力消費をすることが久しぶりだったこともあり、完全に失念していた。

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