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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第14巻 紅より来たる龍

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神霊Ⅴ

「ふむ、良い名だ」


 満足そうに青龍は頷く。

 その言動を見守りながら勇輝は内心、ほっと溜息をついた。


「(後で襲えるなら今やってるだろう。それなら、むしろ堂々と名乗っといた方が、ブラフであっても、こっちには呪いに対抗できるって思わせられるかもな)」


 気付かぬ内に桜が呪詛返しをしていたということは、当然だが、勇輝も気付いていない。

 それ故に、仮に青龍が呪詛をかけるために勇輝の名を大龍に告げたとしても、大龍自身は警戒するだろう。偶然が重なり、敵同士でありながらも比較的、安全な自己紹介という奇妙な状況が成立してしまっていた。


『さて、ここで主にこれ以上は手を出さぬというのならば、我も力を振るわずに済む。辺り一帯が吹き飛ぶからやめろ、と主に言われているのでな』


 言外に、逆らうなら実行すると言っているようなものだ。ここまでの圧倒的な力を見せつけられては、頷かざるを得ない。


「二度とこちらに手を出さない、と言うのであれば構わない。俺にはわからないが、俺にかかっていたそちらの魔法が無効化されているなら、俺たちとは最初から出会わなかった、ということにできる」

『それは難しいな。確かにお前の体からは、主がかけた道術の影響はなくなっている。その点に関しては大丈夫だが、今後の関わり方に関しては主次第だ。我が好き勝手に約束することは難しい』

「だったら、襲ってきたそいつを然るべきところへ突き出さなきゃならない。国は違えど、犯罪を犯したら捕まるのは――――」


 話を遮るかのように閃光が勇輝の前に広がった。網膜が焼け、鼓膜が震える。

 青天の霹靂とはまさにこのこと。朝日が昇り切って天は群青から水色へと変化しており、緑の天蓋の隙間から見える空には白い雲が一つも浮かんでいない。

 つまり、今の雷は青龍が何の前触れもなく放った警告であった。

 辛うじて見える景色は、残像で判別ができないほどで、耳鳴りで音も認識できない。平衡感覚がズレ、倒れ込みそうになる体を地面に手をついて逃れる。

 少しずつ目と耳の感覚が戻ってくると青龍が告げた。


『正論だが、それが我に通じるとでも? それとも、伝わるようにはっきりと言ってやらねば、わからぬのか?』


 先程までの雰囲気から一変して、青龍は心底失望したというように首を振る。


『命は見逃してやるから、この場を去れと言っておるのだ。今の一撃を食らえば、死んでいたであろうことくらい、わからぬ頭ではあるまい』

「―――――」


 青龍の言う通りの威力に勇輝は冷や汗が背中を伝うのを感じた。先程のふくらはぎに食らった一撃など話にならない。当たれば死が訪れるという確信があった。


「(そうか……。最初にあいつと会った時に魔眼が開かなかったのは、単純に暗示にかかっていたからだけじゃない。青龍の存在を無意識に感じ取って見ないようにしていたんだ……!)」


 事実かどうかはともかく、勇輝はそう結論付けた。実際、今の勇輝には魔眼を開いて青龍を見ようという気は一切起こらない。肌を突き刺す威圧感から、魔眼を開いた瞬間に青龍の放つ光で塗りつぶされることを理解してしまっていた。

 畏怖の感情が体を縛り付ける中、その背後から誰かが近付いて来る音が聞こえた。


「なるほど、さっきから黙って聞いていたが、主がクズなら、その飼い犬もクズと来たもんだ」

「ちょっ、隆三さん。何を――――!?」


 目の前の強敵相手に喧嘩を売る隆三に、勇輝は耳を疑った。しかし、横に並んだ隆三はしっかりと青龍を睨みつけており、その手には魔弓が握られていた。


『……迷宮産の弓か。その程度で我を射抜けるとでも?』

「勘違いすんなよ。こっちがお前の弱点に気付いていないとでも思ったか?」


 ニヤリと隆三は笑みを浮かべる。それを見て、初めて青龍の表情が強張った。

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