17.お腹が空きましたわ
「ふう……、酷い目に遭いましたけど、やっとまともに動けるようになりましたわ!」
毒耐性が強に育ったこともあって、マジョリーカはしばらくしたら完全に元通りの体になっていた。
動けない間も、巨大魚などに襲われることが無くて助かった。おそらくだけど、ここにいた魚たちが猛毒持ちだったために、無理して襲ってくるヤツがいなかったんだろう。
さっきまでの苦しさを思うと、ここで狩りをするなんて、よっぽどの初心者か、毒大好きの変態ぐらいのものだよね。
マジョリーカは毒耐性(強)を手に入れたので、ここで狩りを続けることはできるだろう。でも猛毒の魚を食べたいとは思えないし、別の場所に移動した方がよさそうだ。
よっぽどお腹が空いて死にそうっていうのなら別だけど。
「もったいないけれど、しかたありませんわね」
味は良さそうな感じだっただけにとても残念だ。
すぐ近くには、赤い縞々のヒラヒラした毒魚しかいない。違うヤツを探さないと。遠くの方まで見回してみると、それはすぐに見つかった。黄色っぽくてキラキラ光る細身の魚だ。
遠目で眺めた感じだと、赤い毒魚よりも素早そうな感じがするけど、マジョリーカに狩れるだろうか。
静かに近づいてみる。黄色い魚は赤い縞々の魚よりも体長は長い。でも痩せているので印象としては同じくらいの大きさに見える。マジョリーカより大きいのは変わらないので、やっぱり大魚だ。
またもや海藻に擬態して忍び寄る。ここで一度、周囲の安全チェック。大丈夫、近くに巨大魚はいない。
安全ではあるんだけれど、ある意味不安になってくる。
「まさか、この黄色い大魚も毒持ちってことはないですわよね?」
それは自分で実際に齧ってみないと分からない。
さらに黄色い大魚の群れに近づく。まだ射程には入ってない。黄色い大魚は海藻を食べているのか、それとも海藻についた小さな生き物を食べているのか、どちらにしても海藻を突つくのに必死で、まったくこちらの事を気にしてない様子だ。
さっきの赤い毒魚と比べて、カンは鋭くないのかもしれない。それならばと、さらに前進して距離を詰めてみる。やっぱりこちらの事を気にしているようには見えない。
これなら腕を伸ばすだけで捕まえられるかもしれない。
バシュッ!
一気に両腕を思いっきり伸ばして、こちらに向かって泳いでくる黄色い大魚を、がっちりと掴みにいく。
さすがに気づいた。
すぐさま反転して逃げ出そうとする大魚、しかしマジョリーカの両腕の方がはるかに早い。両腕の先に散りばめられた吸盤、そこから生えた無数の鋭い爪が、大魚のうろこに突き刺さる。
相手はマジョリーカよりも巨体だ。当然力だって上なのだ。両腕だけでの力で拘束できるはずがない。
マジョリーカは引っ張り合いをするのではなく、ジェット移動スキルを使って、素早く大魚に身を寄せた。そして八本の足を使って大魚を押さえつけにかかる。
「絶対に逃がしませんわよ!」
マジョリーカの口が、動きを止められた大魚に襲い掛かる。




