第12話
「長らくお休みいただいてすみませんでした……」
ほのぼの亭のバックヤード。
朝礼で集まった面々に、田村は深々と頭を下げた。
「そんなことないですよ。怪我したって聞いて心配してたんです。無事復帰してこられて本当に良かったです」
腕にギプスをつけた田村に、河合は穏やかな笑みを浮かべる。
「田村さんこの通りなので。しばらくは重いものを持つ仕事はみんなで分け合ってやりましょう。店長も明日から復帰されるので、無理なくやっていきましょう」
面々に向かって声が掛けられ、始業の挨拶が終わる。
田村は、バックヤードから出ようとする河合を呼び止めた。
「あの……今日は、虫壁さんは……?」
「ん? 辞めましたよ?」
「え……?」
思いがけない言葉に、声が詰まる。
「息子さんから急に電話かかってきて。入院することになったんですって」
「入院……」
「そりゃもうすごい剣幕で……まあ、色々あったし、そりゃそうかって感じですけど」
肩をすくめた河合は、ポリポリと頬をかきながら続ける。
「明日店長が復帰してきたら、根ほり葉ほりしてください。ほんと、大変だったんですから」
バックヤードから出て行った彼女を見送った田村は、しばし茫然とした後自分のロッカーを開く。
目に入ったのは、バッグに付けた白い織模様のお守りだ。
お守りを手に取った田村は、不自由な手で包むようにお守りを持つと、ひとつ、息をついた。
(了)




