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第10話
ほのぼの亭から逃げるように走ってきたハナエは、商店街の中ほどで立ち止まった。
はあはあと上がる息、早鐘を打つ心臓を鎮めようと何度も深呼吸を繰り返す。
田村は、どこの病院にいるのだろうか――
膝に手を当てて蹲るハナエに、弁当屋の店主が声をかけてくる。
「虫壁さん、どうかしたの? 大丈夫?」
いつもハナエのブロッコリーをひいきにしてくれている店だ。
見慣れた顔に挨拶しようとした時。
「ひゃっ!」
店頭に置かれた日替わり弁当の実物サンプル。
ラップに包まれたプラの弁当箱に収まった、唐揚げや卵焼き。
梅とごま塩で彩られた白米。
柴漬けにミニトマト。
その隣に、鮮やかに湯がかれた緑色の――
「いやっ! いやーーーーっ!」




