【35話】崩された舞台!(美水視点)
『この件の真相を話しましょう』
恭弥様の要望に答えて語ることにしました。
『まず、雪音ちゃんは、私の兄の娘、つまりは、私の姪っ子になります』
『うん、通りで美水によく似ているわけだ』
『私に似て可愛かったですか?』
『あぁ、美水に似て可愛かった』
『恭弥様ったら、正直過ぎですわ。ウフフフフ』
ギロッ!
恭弥様に褒められたことで暴走しかけましたが、雷花ちゃんに睨まれたので、思い留まりましたわ。
『雪音ちゃんのお父様は、毎日とても忙しくて、雪音ちゃんと一緒に過ごす時間もほとんどありません。雪音ちゃんのお母様は、雪音ちゃんを産んで直ぐにお亡くなりになっています。いつも屋敷に一人ぼっちで、友達もいない雪音ちゃんを見ていると、私の幼い頃と重なって、胸が締め付けられました。でも、私には恭弥様がいました。恭弥様と出逢って遊ぶようになってからは、親と一緒に過ごせない寂しさもまったく感じなくなりました。雪音ちゃんも恭弥様の様な方と巡り会えればいいのですが…まだその様な方とは、出会えていない様でした。雪音ちゃんの誕生日に何か欲しい物があるかお聞きしたところ、パパと一緒に遊びたいと言ったのです。なのでお兄様に雪音ちゃんと過ごす時間を取ってもらえるようにお願いしたのですが、どうしても外せないお仕事が入っていたので無理でした。そこで、思いついたのです!本物のパパが無理なら別のパパを準備しようと!それが恭弥様だったのですわ‼︎全ては、雪音ちゃんのため!そう!幼い少女を孤独から救うためだったのですわ!』
『そうだったのか…雪音のためだったのか…でも、それならそうと教えてくれても…』
『恭弥様は、演技が下手なので、ダメですわ!あくまで雪音ちゃんには、本物の父親の様に接して欲しかったのです!妹や従姉妹や姪っ子に接する様な感じでは、ダメですから』
『美水は、優しいんだな』
恭弥様が褒めてくれた。
『へー、そうだったんだー!』
今まで黙っていた雷花ちゃんが、口を出して来た。
『無人島の料理対決の後に気絶したお兄ちゃんを勝手に連れて行って、私と離れ離れにしたのは、お兄ちゃんとただ単に夫婦生活をしてみたかったからじゃなくて、雪音ちゃんって子のためだったんだね!』
『もっ、もちろんですわ!』
『あわよくば、お兄ちゃんとそのまま夫婦になろうとなんて思ってなかったってことだよね⁉︎』
『えっ、ええ…』
『私とお兄ちゃんの住んでる町の隣町が凄いことになっててビックリしちゃったよ。何故か町の境界付近には、壁が作られてて、入る時には、検問までしてたけど…あれは、誰か入れたくない人でもいたのかな?』
『まっ、マサカァー(棒読み)』
『夜には、犬を連れた美空川先生と警備隊みたいな人達がいたけど、誰かを警戒していたのかな?』
『よっ、夜は、物騒ですから!きっと見回りですわ!』
『ちなみに美空川先生は、今頃、ぐっすり眠ってるんじゃないかな。何せ昨日の夜は、長かっただろうからね』
くっ、雷花ちゃんには、全てを見透かされているようですわね!
そう、今回の件は、全て私の独断で行いました。
無人島で料理対決をして、私の料理のあまりの美味しさに恭弥様と雷花ちゃんが気絶してしまった後…2人は、一日経っても目を覚ましませんでした。
その時、私は、閃いてしまったのです。
恭弥様が目を覚ましたら数年経ったことにしよう!
何か聞かれたら、恭弥様が記憶喪失になっていることにしよう。
そして、恭弥様と私は、結婚したことにしよう!
そのための舞台を整えよう!
この時、私は何故か雪音ちゃんの顔が浮かびました。
いつも寂しそうな雪音ちゃん。
雪音ちゃんにずっと何かしてあげたいと思っていたのも、雪音ちゃんの誕生日の話も全部本当の事です。
私は、雪音ちゃんを娘にして、恭弥様と私と雪音ちゃんの3人で楽しく家族生活をしようと決めました。
数人のエキストラ(近所のおば様役)を雇い。
恭弥様の町の隣町一帯を買い占め、邪魔しに来るであろう雷花ちゃん対策のために壁を築き、雷花ちゃんが侵入して来た時のために犬と警備隊を配置しましたが…やはり雷花ちゃんには、無駄でしたか…。
結果…
雪音ちゃんも傷つけてしまいました…
ごめんなさい、雪音ちゃん。
『美水、ありがとう』
いきなり恭弥様にお礼を言われた。
『何がですか?』
『雪音に合わせてくれて!』
『え?』
恭弥様には、いつも驚かされる。
私は、優しくて優しすぎる恭弥様だからこそ雪音ちゃんを合わせたかったのかもしれませんわね。
『さぁ、早く雪音を見つけてあげよう!雪音も待ちくたびれてるかもしれないし』
うふふ。
雪音ちゃん、本物じゃなかったけど、あなたのパパは、とても優しい人ですよ。
すぐにあなたの心のパパが迎えに行くから待っててくださいね!
私もあなたのママ役とても楽しかったですわ!