【13話】重婚は、犯罪って知ってた?
昼休み、美水の様子を見に保健室に行くと、美水は、まだ眠っていた。
転校して来たばかりでこの学校のことに疎いであろう美水のためを思い、起きたら一緒に教室に行ってあげるため、美水が起きるまで待つことにした。
うとうと…
昼ご飯を食べた後で、満腹感と急な眠気に襲われた。
そう言えば、今日の昼休み、珍しく雷花と一緒にご飯を食べなかったな…
午前の最後の授業の後に美空川先生が、『今日のお昼は、雷花さんは、私との約束があって多分昼休みを全部使っちゃうと思うから、恭弥くんは、先にご飯を食べててね‼︎それにしても水神さん大丈夫かしら⁉︎心配ね…』
と言っていたのをうとうと船を漕ぎながら思い出した。
バチチチチチチッ‼︎
ガッシャーンッ!
『はっ⁉︎』
大きな音で目が覚めた。
俺は、うっかり寝てしまっていたようだ。
いや、間違った。
まだ夢だったようだ。
うん。夢に違いない!きっとそうだ!
『お兄ちゃんは、私がいれば他には何もいらないんだもん‼︎』
『いえいえ、妹じゃ、恭弥様の青春を受け止めきれず持て余してしまいますわ!』
『妹に兄のことで受け止めきれないものなんてないもん‼︎妹が最強なんだもん‼︎』
『いいえ!再開した幼馴染が、昔の思い出と想いを再燃させて、熱く燃え上がるのは、必然!幼馴染こそ最強ですわ!』
『いもうと!』
『おさななじみ!』
バチチバチチ…!
見知った黒髪の女の子と久しぶりに再開した銀髪の女の子が武器を振り回し火花を散らせているこの光景は、きっと夢に違いない!
『もうっ!さっさと失神しちゃえー‼︎』
雷花が持っている武器は、朝に使用していた伸ばしたボールペンの先端に指人形を取り付けた物だ。
今度は、これをホッチキスの弓で飛ばさずに、魔法のステッキのように振り回して使っている。
一方、美水は、
『ふふふ、無駄ですわ!』
デッカいダイヤモンドが付いた指輪で雷花のステッキ攻撃を凌いでいた。
あのさ…美水…そのダイヤモンドさ…でか過ぎじゃない?
『ふふふ、水神美水!貴女は、また絶縁体を使うの⁉︎同じ過ちを繰り返す気?』
雷花が勝ち誇った様に美水を挑発した。
『ふふふ、雷花ちゃんは知らないのかしら?ダイヤモンドの持つ意味を‼︎ダイヤモンドの持つ意味は、[永遠の絆]ですわ![絶縁]の可能性なんてダイヤモンドの前じゃ無に帰すのですわ!』
『がーんっ…』
雷花が衝撃を受けていた。
『でっ、でもっ‼︎その指輪、お兄ちゃんから貰った指輪じゃないもん‼︎妻が着けるのは、夫から貰った指輪だけなんだもん‼︎』
『いいえ、この指輪は、恭弥様の指輪です!何故ならこの指輪を選んでくれたのも買ってくれたのも恭弥様なのですから!』
美水が、これでもかというキメ顔で雷花に言い放った。
『お兄ちゃんは、そんな指輪が買えるほどお小遣い貰ってないもん‼︎だからそれは、嘘だよ!』
『いいえ、嘘などついていませんわ。この指輪が私のお父様の会社で売っている指輪だとしたらどうでしょう⁉︎99.99%OFFでも何ら問題がありませんわ』
『そっ、そんな…お兄ちゃんが私以外の女の子に指輪をあげるなんて…』
『ふふふ、雷花ちゃん、私の義姉パワーを思い知りましたか?これからは、私のことを美水お義姉ちゃんと…そっ、それはっ‼︎』
雷花がプラスチックのオモチャの指輪を美水に見せつけ、それを見た美水が激しく動揺していた。
『これが何か分かった⁉︎これは、お兄ちゃんが雷花にくれた指輪だよ‼︎それにこれをくれる時にお兄ちゃんは、私にプロポーズしてくれたんだよ‼︎』
『なっ、何ですってー』
美水が激しく驚いていた。
ゴゴゴゴゴ…
二人は、一歩も引かず睨み合いに突入していた。
『あのさ…そろそろ昼休み終わるんだけどさ…教室に戻らないか?』
沈黙を破ったのは、俺だった。
『ねぇ…お兄ちゃん…』
急に光のない危うい色をした目で雷花が俺に問いかけて来た。
『お兄ちゃんは、[重婚]って知ってるよね???』
雷花が急に[重婚]について聞いて来た。
『あはは、雷花ちゃん。恭弥様は、博識でいらっしゃるので、重婚ぐらい3歳児の段階で理解していますわ。ね⁉︎そうでしょ?恭弥様?ニコッ』
怖い…美水まで怖すぎる。
笑っているけど、雷花と一緒で目がヤバすぎるよ…
『重婚は、罪なんだよ⁉︎』
『えぇ、罪を犯した夫を叱るのは、妻の役目ですわよね‼︎』
『お兄ちゃんには、罰が必然だね‼︎』
『あらら、雷花ちゃん、偶然こんな所に普通のスタンガンが二丁ありますわ』
『あはは、ほんとだね美水さん‼︎偶然だね‼︎』
バチチチチチチ…
『(お兄ちゃん)(恭弥様)覚悟ー‼︎』
『ちょっと待て!話をき…ギャャャャヤヤー』
ぷつん。
俺の意識が途絶えた。