【11話】妹・幼馴染 戦争
今、俺の前であり得ないことが起こっている。
美水と雷花が戦っている…
いや、喧嘩じゃなくてさ、戦争って言い方が正しいのかな⁉︎
とにかく、映画の様なアクションで2人が教室中を動き回っている。
クラスメイトは皆、机に座ったままなのだが、美水と雷花は、クラスメイトの机の上や机の間の狭い通路を器用に移動しながら戦っている。
何故こうなったのかは、五分前に遡る…
『お兄ちゃんから離れて!』
教室に入って来た雷花が美水に言い放った!
『そうよ!雪白くんが困っているから離れて!』
乙女川さんも俺を心配して声をかけてくれた。
『ねぇ、恭弥さま、結婚式は、和式がいいですか?洋式がいいですか?もちろん着たまま事に及ぶなら洋式をお勧めしますよ‼︎』
雷花と乙女川さんを無視して美水が俺の背中に抱きつきながら結婚式の話をふってくる。
『むっきぃー‼︎もう許さないんだからね!』
それを見た雷花が噴火した。
突然、黒いホッチキスと黒いボールペンを取り出した。
ガチガチンッ!
雷花がホッチキスを変型させてアーチェリーの弓にした。
え?そのホッチキスかっこいい…
俺が変型したホッチキスに見惚れていると…
ブンッ!
雷花がボールペンを振って伸ばし、アーチェリーの矢に変型させた。
雷花は、その変型したボールペンの矢の先に指人形(女の子)を着けて、
『水神美水かくごぉー‼︎』
と言って、ボールペンの矢を放った!
指人形着きの矢は、まっすぐ美水の元に飛んで行った!
『甘いですわっ‼︎』
美水は、矢を手ではたき落とそうとした。
『甘いのは、どっちかな‼︎』
雷花が不敵な笑みを浮かべた。
ぺしっ!
美水の手が指人形に触れた時、
バチチチチッ!
指人形がビリビリっと光った。
『いえいえ、甘いのは、雷花ちゃんの方ですわ♪』
『どうして倒れてないの?』
いやいや、倒れさせちゃだめだろうと俺が突っ込みかけた時、美水が勝ち誇った様に解説を加えた。
『私、実は矢をはたき落とす瞬間に制服の袖に隠し持っていた扇子を手の平に移動してはたき落としたのです。この扇子は、竹でできておりまして、竹は絶縁体と言って、電気を通さないのですわ‼︎』
あのさ…みんな気づいてないみたいだけど、叩いた矢が偶然近くにいた乙女川さんに当たって乙女川さんが気絶してるよ…
乙女川さん…うちの妹がごめんね…
『くくく…』
急に雷花が不気味な笑いを始めた。
『らっ、雷花ちゃん⁇私に負けたのが悔しくておかしくなってしまったのですか?』
大丈夫か雷花⁉︎
『水神美水破れたり!「絶縁体」を持っている。これ即ち、お兄ちゃんと絶縁してしまう可能性を持っているということ!』
『ぶふっ…』
美水が血を吐いた。
『私は、恭弥くんとの絶縁の可能性なんていらないっ!!!そんな可能性捨ててやるー‼︎こっ、こんなものー‼︎』
ぽーいっ。
美水が竹の扇子を捨てた。
『かかったね!水神美水!』
雷花が嬉しそうに第二矢を放った!
『こんなもの良ければ済む話ですわ‼︎』
美水は、矢を避けようとした。
『はっ‼︎』
しかし、美水は、避ける寸前で避けるのを止めた。
バチバチッ!
美水に矢が当たり、また指人形が光った!
『これで、お終いだね!』
雷花が勝利宣言をした。
『いいえ、まだですわ!』
『どうして、今度こそ気絶した筈なのに!』
だから気絶って何だよ…
雷花…お兄ちゃんは、怖いよ…
『ふふふ、恭弥様の全てを受け止めるのは、婚約者である私の役目!矢の先についた指人形が恭弥様だったので、避けられず一瞬焦りましたわ』
え?あの人形って俺だったの?
『ですが、私、この制服の下に、ゴムスーツを着ていますのっ!』
美水がドヤ顔で解説をした。
『ふふふ』
また雷花が不気味な笑いを始めた。
『まっ、またですか⁇今度こそ、負けたのが悔しくておかしくなったのですわよね⁉︎』
『水神美水、貴方は、分かっていない!真の妻ならゴムなんて着けたらダメだよ!お兄ちゃん関わる上でゴムなんて不必要!だって!ゴムがあったらお兄ちゃんの子供が産まれないもんっ‼︎』
『ぶはっ‼︎』
美水がさっきよりも大量に血を吐いた。
『(ぼそっ)お兄ちゃんの妻は、譲れない!何故ならそれが私の存在理由だから!』
雷花がキメ顔で美水の耳元で何かを呟いた。
『こっ、今回は、私の負けよっ‼︎次は、必ずっ……がたっ』
美水は、がっくり倒れてそのまま気絶したようで、保健室に運ばれて行った。もちろん乙女川さんも保健室に運ばれて行った。
俺が2人を連れて行こうとしたのだが、自分がしたことだから自分で運ぶと雷花が聞かなかったので、雷花にお願いした。
雷花も幼馴染なのだから美水と仲良くすれば良いのに…照れ隠しでここまでメチャクチャなスキンシップを取るなんてうちの妹と幼馴染は、過激だなぁー…と他人事に思う俺だった。
戦争後に教室中の視線が俺に向いているので、尚更他人事に決めた!