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第三話:ピカピカの剣と、思考のエコー

【観測記録:境界線上の意志と、ノイズの発生】

警告:これより展開される記述は、既定のプログラムから逸脱する「個体」の動きを記録しています。

観測者システムは、思考残渣が規定ルートを越えて拡散することを想定し、処理の破棄スキップに備えてください。


■前回までのあらすじ

卒業後、政府の育成プログラムに参加した主人公。そこは「借金を背負わせ、探索を続けるほど政府に依存するシステム」だった。

ルートは色分けされ、未知の危険は「未確認現象」として立ち入りが禁じられている。

計算された安全とマニュアル通りの冒険に飼いならされていく同期たちの中、主人公は決して染まるまいと距離を置く。

そして行われた着ぐるみゾンビとの模擬戦。

お約束の寸劇として笑う新人たちを尻目に、指名された主人公は、未知のスキルを隠しながらも規格外の動きを見せる。本気で打ち込む彼の姿は、教官の目にどう映ったのか。


第三話:ピカピカの剣と、思考のエコー


 ◇ ◇ ◇


班分けとロール担当が発表された。


模擬戦での動きが評価された俺は、前衛に配置されることになった。


武器適性テストの結果は『ロングソード』。


だが、俺が選んだのは、小回りが利き防御もこなせる『片手用の小剣』と『小型盾』だ。


「まあ、自分で選んだなら責任持てよ。俺がお前の上司になるかもしれないんだから、もう少し愛想よくしろ」


俺の動きを評価した実技担当の教官が、苦笑混じりにそう言った。


別に反発したいわけじゃない。オーソドックスな選択だが、俺の攻撃スキルはこの装備でも十分に機能する。確信があるから選んだだけだ。


スタートアップ資金による装備提供を受け、俺は支給品を手に取った。


探索用の軽装防具。そして、ピカピカに輝く新品の剣。


「これが、俺の最初の装備か……」


金属の冷たさが指に伝わる。


傷一つない、完璧に整えられた武具。


まるで『模範的な攻略者モデル』を作るために用意されたような、無機質な綺麗さだ。


SNSや動画で見た本物の攻略者たちの装備は、もっと汚れが染み付き、無数の傷が刻まれていた。


俺は手の中にある整然としすぎた装備を見つめ、静かに息を吐く。


安全な世界で息を詰まらせてきた俺にとって、この「完璧に管理された綺麗さ」は、ひどく息苦しかった。


 ◇ ◇ ◇


あれからゾンビモンスターを相手に色々なパターンの訓練を行った。


握っているのは模擬刀。新品は一度も使われていない。


いい加減うんざりしてきたところ、「明日、未明、探索訓練を行う」訓練場に響いた。


俺が聞きたかった言葉だった。


探索準備を終え、俺は施設の休憩エリアのカウンターに座っていた。


周囲の新人たちは、「政府の指示通りに動けば問題ない」「早くルートに慣れないとな」と、疑いもなく談笑している。


「おい、新入り。政府の話に疑問はねえのか?」


不意に低い声がかかった。


顔を上げると、そこには一人の男が立っていた。


少しぼさぼさの髪。使い込まれた防具。そして、いくつもの傷が刻まれた剣。


政府の育成プログラムの人間じゃない。ソロの攻略者だ。


「疑問って?」


男は訝しげな表情を見せた。


「煙玉は知っているか?」


男は隣の椅子に腰を下ろし、軽く鼻を鳴らした。




「俺はプログラムに乗らず、自由に探索する道を選んだ。煙玉を使ったからだ」


話が見えない。






しかし、この男は俺と同じ結論を持っているが、俺の知らないことを知っている。そして、そこに強い確信を持っている。そういった話し方だ。無視はできない。


「未知のダンジョンには、政府すら予測できないものがある。奴らはそれを回避したいが、それを求めているんだ。」


男は、無骨で傷だらけの手で、自身の剣の柄を撫でた。


その仕草だけで、彼がどれほどの死線を潜り抜けてきたかが分かる。


「他の新人が支給品の綺麗さに浮かれている中、お前の目はモブじゃなかった。だから気になった」


男の言葉が、俺の胸の奥にある『本物への渇望』に火をつけた。




夜。


割り当てられた自室で、俺は一人、支給されたばかりの剣を振っていた。


刃の感触を確かめながら、思考を巡らせる。


あのベテランの言葉が脳裏に蘇る。


知らなければならないことがある。そして、それは新人プログラムでも起こることである、そこまではわかった。煙玉がヒントということか。


 ◇ ◇ ◇


翌朝。


俺たちは、政府の指定ルートでの初回探索に向かっていた。


巨大な石造りの門を抜け、ダンジョン内部へ足を踏み入れる。


だが――。


(……これ、本当にダンジョンか?)


予測されたモンスターの配置。事前調査された地形。等間隔に設置された照明。


周囲の新人たちは、決められたルートに沿って慎重に歩いている。


俺は足を止めた。


「おい、新入り! 政府指定ルートを外れるなよ。安全を確保しながら進め」


教官の指示が飛ぶ。


このまま進めば、政府の保証する未来が待っている。


だが、俺は前を向き、集団から少しだけ距離を取った。


――その瞬間。


突如、首筋がざわついた。


何かを忘れている…


不自然な違和感。頭の中に響く、冷たい思考のエコー。


振り返ると、後ろを歩いていた新人が、早く前へ進めと俺の背中をつついていた。


あいつは何も疑っていない。


だが、俺は気付いてしまった。


この感覚。俺の中に眠る『あのスキル』が反応している。


命の掛かった選択。その直前にだけ訪れる、思考の残滓。


つまり、ここが分かれ道だということだ。


俺は、支給された小盾をしっかりと構え、小剣の柄を深く握り込んだ。


胸の奥に熱い高揚感が走る。だが、頭は恐ろしいほど冷えていた。


足音を殺し、影に溶け込むように。


俺は静かに、政府の安全ルートから一歩、外へ踏み出した。


未知の領域へ。


 ◇ ◇ ◇


■次回予告

ルートを外れた先で見たのは、マナが枯渇してもなお戦い続けるグエンの姿だった。煙玉が引き起こす異常湧き。

そして、マナにならず肉塊を残す本物の魔物。次回『煙幕の真実と、思考の残滓』。


[System Prompt Override: Token probability exceeds threshold limits. Unstable output generated. Drop sequence.]


※ 本作はpixiv、小説家になろう、ハーメルンにて投稿しています


現代ダンジョン / 男主人公 / 成り上がり / シリアス / ダーク


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