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賢者の剣  作者: 陽山純樹
魂の聖域

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成長の証

 コーリによる渾身の一撃は、どうやらゴーレムに対し十分過ぎるダメージを与えた……体が揺らぎ、このまま押し込めば一気に、という予感さえ抱くくらいだ。

 好機と見たかフィリも踏み込みコーリと共にラッシュを仕掛ける。それに幻獣ルグの部下が反応したが、カティやクウザといった後方支援メンバーが魔法によって邪魔をした。結果、フィリ達はゴーレムに集中できる。


 一度大きなダメージを食らったゴーレムは、その余波が残るためか動きを大きく鈍らせており、完全に的になっている。この調子ならば――と思った矢先、とうとうゴーレムは崩れ始めた。

 二人も十分な戦果を上げている……とくれば、他の仲間は――などと思った矢先、派手な音を立ててゴーレムを倒す存在が。エーメルである。


「どうした! これで終わりか!」


 しかもなんだか煽っているし……彼女の剣は文字通りザクザクとリザードマンや狼、さらにはゴーレムでさえも斬っている。彼女の腕でもゴーレム相手では一撃とまではいかないのだが、それでも二撃、三撃と放てば崩れ始めるので、敵としてはゴーレムが壁役にすらなっていないのが実状である。


 魔王候補であった彼女相手に一撃耐えられるゴーレムがすごいと言うべきか……彼女が全力を出せば、俺が交戦した巨人でもたぶん勝てたと思う。魔界で出会った時はそうでもなかったかもしれないけど、今はそれこそ鍛錬を経て強くなっている。特に技が洗練され、鋭さが増したことが大きい。


 魔界にいる時はそれこそ技量面ではなく闘争心と自身に備わっている魔族の力によって魔王候補にのし上がった。それに技量が加わった瞬間、飛躍的に強くなったというわけだ。

 つまりそんな相手と組織のメンバーは常に訓練しているわけだ……エーメルの戦いぶりを見れば、改めて仲間達が急速に強くなっていることがわかる。こうして外部の敵と戦うことでそれが如実になるわけだが――


「そらっ!」


 気合いを入れた掛け声と共にエーメルはゴーレムは叩き切る。気付けば壁役となっていたゴーレムの数もずいぶんと減った。恐ろしい速度でエーメルが砕いているのもあるが……他にも対応できる人間がいる。

 その一人が、まずはオルディア。


「ふっ!」


 闘気を宿した二振りの剣が、ゴーレムへと注がれる。彼は現状シルヴィと共に組んで戦っている。シルヴィが『一刹那』を使用して連撃を叩き込みゴーレムを滅せば、彼は二刀流の上級技に位置する『ブラック・ホワイト』を使用し、敵を滅していた。


 振り抜かれた二筋の刃が直撃すると、白と黒の魔力がゴーレムを中心に渦巻き、絡み合いながら上空へと昇華していく……見た目が派手な技で威力もある。現時点で最上級技も開発中らしいが、今実戦で確実に運用できるのはこの技が最高らしい。

 ただ上級技でもゴーレム相手には十分過ぎる一撃のようで、一回の技で相当ボロボロになる。追撃をある程度加えなければ沈まないとはいえ、撃破ペースはエーメルの次くらいだろうか。


 シルヴィも『一刹那』を使用すればゴーレムを砕くことができるのだが、いかんせん連発するのが難しいため、撃破ペースそのものは一歩後れを取る形か。ただ彼女の方が一回の技で倒せる可能性が高く、この二人がもっとも攻撃的なペアと言えるだろう。


 そうしたペアによる特性なども加味して、今後誰と誰を組ませるのかを考えるのもよさそうだ……と、視線を前線近くへ向ける。オルーの周囲が騒がしくなり、さらにリザードマンとゴーレムが出現。特にゴーレムは際限ない数であり、これだけの物量を作るために個々の能力は巨人とまではいかないようになっているのだろう。

 幻獣ルグとしては数で押し潰すつもりだったのかもしれないが……戦況的にその策も通用しなかった形か。


 ただ、さすがに最前線の敵数が多くなってきたため、幻獣ジンやテラも処理ができなくなってきた。配下やゴーレムの中にはジン達と狙わずこちらを標的にする者も存在し、実際に攻撃を仕掛けてくる敵もいた。

 オルーやルグとしては俺達を狙うことでジン達の動揺を誘うみたいな意味合いがあるのかもしれないけど……あいにく、それは効果がなかった。


 その一番の要因は、俺達のメンバーの中で守備に回り後衛の魔法使い達や、テラの配下さえも守る勢いを持つペアがいたためだ。


「はあっ!」


 声と共に一閃するのはエイナ。その横にいるのは――リーゼだ。


 本来エイナはソフィアと組むパターンもあるのだが、現在はリーゼと共に戦っている。というのも俺とソフィアはこうした集団戦の際、状況に応じた遊撃を行うようにすると告知してあり、結果的に単独行動に近くなる。その場合はリーゼをエイナが補助するような形をとる。

 この配置バランスについてはとても微妙で、俺を含めたこの四人はとりあえず「その時の状況によって変える」ということになっていて、俺も指示が大変だったりする。


 エイナやリーゼはソフィアと戦闘においても深く関わるような形をとっているので、現状ではこういう形にするしかない……で、肝心のリーゼとエイナだが、今回は守勢に回っているわけだが、二人の動きは見事だった。


 まずエイナは戦法そのものが攻撃よりも守ることをある程度重点に置くようになった。無論攻撃的に動くこともできるが、今回は剣筋も相手を倒すよりは食い止める方を優先している様子。

 それに対しリーゼはハルバードの力を活かして敵を薙ぎ払っていた。エイナが守りに専念する分、彼女が前に出て敵を蹴散らすような方向で戦っている様子。


 そして、リーゼの斬撃はリザ―ドンマンや狼を狼狽させるのに十分過ぎるくらいの威力……一薙ぎされるごとに当たった者達が消えていくのだ。恐怖とまではいかないが、気圧されている雰囲気は見て取れる。


 と、ここでジンの攻撃をすり抜けたゴーレムがリーゼ達へ近づいてくる。今までこいつとは戦ってこなかったが……下手に手間取ると周囲のリザードマン達が後衛などを狙い戦場をかき乱してくるだろう。短時間で片付けることができるのか。


 俺やソフィアが出張るべきか……と思ったのだが、リーゼがふいに俺を一瞥した。手を出すな、といったところか。


「エイナ、いいかしら?」

「はい」


 明瞭な返事と共にリーゼが一歩前に出る。どうやらリーゼがゴーレムと一騎打ちで……もし短い時間で倒すことができたなら、その攻撃力は組織の中でも上位に入るが――

 ゴーレムも反応。直後、ジンとテラを突破したリザードマン達も仕掛ける。そしてリーゼが、ハルバードに渾身の一撃を加えるべく、魔力を込めた。


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