各々の戦い
事前に誰と組みどう動くかについては予め協議を行っていた……元々俺やソフィアを除いて単独行動をするような作戦を立てるつもりはなかったし、最低でも二人一組となって戦うよう指示を行っており、スムーズに動くことはできる。
その中で先んじてゴーレムへ仕掛けたのは、アルトとキャルンの二人。大剣と短剣という組み合わせだが、その戦法は、
「ふっ!」
まずはキャルンがゴーレムの懐へ潜り込む。それと同時に猛攻を開始。短剣上級技の『ファランクス』だが、その威力にも磨きが掛かりゴーレムの動きを縫い止めた。
肝心のダメージだが、結構傷を作りだしている――俺が戦った巨人のような硬度なら、まったくダメージを与えられない可能性もあったがそうではない。もしそうした防御能力を有していたらキャルンも突撃はしなかっただろう。先にテラの配下が魔法により攻撃を行い、それにより多少なりとも損傷した……よって、彼女はいけると判断したわけだ。
ただし、周囲にはリザードマンがいる……それに応じたのはアルト。ゴーレムへ果敢に攻めるキャルンを妨害しようと横から仕掛けたのだが、それをアルトが一蹴する。
大剣が薙がれた瞬間、リザードマンの体が吹っ飛ぶ。他にも近づく個体はいたのだが、その全てをアルトは一蹴。ただし全力ではなく、敵の力量や能力などを概算し、打倒できるだけの出力に調整している様子。
そして肝心のゴーレムについては、キャルンの猛攻により身動きがとれなくなっていた。堕天使との戦いを経て一撃一撃が強力になり、力で圧倒するような形。
このまま仕留めにかかっても勝てそうな勢いではあるが、キャルンの狙いは別にあるため突如短剣を止めると引き下がった。これには攻撃しようとしたリザードマン達も動きを止める。
「あきらめたか?」
キャルンに問い掛けるリザードマン。だが彼女は答えない……その直後だった。
ビクン、とゴーレムが一度震える。それと共にその体が徐々に崩れ始めた。
「貴様……何をした……!?」
「さあ?」
首を傾げながらキャルンは短剣を構え直す……ゴーレムは最早再起不能。難なく倒せたかに見えるが、彼女の短剣の特性も有効に働いた結果だろう。それはキャルンも理解しているのか、油断なく敵を見据えている。
――彼女の短剣にはいくつか魔法が封じ込められている。その内の一つとして短剣が当たると相手の内部に衝撃を与える効果を付与している。これは体術技にある『竜脈』という防御無視の大技を基にしたもので、それを試行錯誤した結果武器に直接付与できるようになったわけだ。
その効果をオンオフできるようになるまでかなり大変だったみたいだけど……ともあれ、小型ゴーレムの硬度なら内部に衝撃を与えることが可能だということが証明された。俺が戦ったゴーレムと比べればバージョンダウンしているようだが、テラの配下が苦労するほどなので、ゴーレムでも最上級クラスの能力は有している。
けれど組織のメンバーならば対応できる……この調子なら、押し切れるか。
「ちっ! 私に続け!」
そこでリザードマンが指示を出し、突撃命令を行った。見るに見かねてといった感じだろうけど、その選択はさすがに悪手だ。
周囲のゴーレムが他の組織メンバーと交戦していたことに加え、キャルンを強引に押し留めれば倒せると踏んだ結論なのかもしれないが……この突撃は、たぶんアルトとしても望む展開だろう。
「そらっ!」
掛け声と共にアルトは大剣を振るう。刃先から生まれた衝撃波が、今にも襲い掛かろうとしていたリザードマン達の目の前に現われた。
「な――」
誰かが声を上げようとしたみたいだが、遅かった。次の瞬間、刃が爆ぜリザードマン達を飲み込んだ。
アルト達の真正面が粉塵と轟音で覆われる……そこに風が生じ、土煙を上空へと飛ばす。これはイグノスの援護。彼に加えカティやロミルダなど魔法を扱う者達は、後衛でいつでも援護できるような体勢を整えている。
次に見えたのは倒れるリザードマン達。ただその数はずいぶんと減っており、衝撃波に飲み込まれ消え失せた者達もいるようだ。
なら敵はどういう手を打ってくるのか……と思ったが、リザードマン達は剣を構えにらみ合うような表情を示す。一度間を置いて対峙するというわけだ。
「ゆっくり戦うか? まあそれでもこっちはいいが」
アルトは不敵な笑みを浮かべリザードマン達と対峙。その横にキャルンも移動し、烈気をみなぎらせる。
敵側としてはゴーレムや幻獣ルグの配下である狼の援護が欲しいところかもしれないが、あいにく俺達が暴れ始めたため、他の所に気を取られアルト達へ仕掛けることができていないのが実状のようだ。
俺は魔法で接近してきた狼を撃ち抜きながら視線を移す。次に目に入ったのはフィリとコーリの姿。
転生し、実質始めて出会ったゲームの主人公と、その仲間。魔王との戦いから付き合いのある二人がペアを組むのは至極当然の流れであり、そのコンビネーションは熟練した技術を感じさせるもの。
剣術的な能力についてはフィリがバランス型で、コーリは武器が長剣ながらアルトのように一撃を重くするような戦い方を見せ始めた。そして今回……目前にはゴーレムがいるわけだが、果たしてどこまでやれるのか。
「ここは私が!」
そう叫んだのはコーリ。漂ってくる気配は思わぬ強敵に高ぶっていそうな雰囲気。
たぶん自分の技量が目の前の敵にどこまで通用するのか試したくてウズウズしているのだろう。そんな気持ちと共に込められた魔力――それは、勢いだけならアルトの技にも匹敵するほどだった。
ゴーレムは当然反応し、拳を放ち剣戟を見舞おうとしたコーリへ仕掛ける。しかし、それを阻んだのがフィリ。彼は差し出された拳をまずは受け、流す。軌道を逸らすことに成功した。
それはほんのわずかな変化ではあったが、一瞬でも速度を鈍らせたことでコーリが回避できる余裕と、反撃できるだけの隙を生み出すことに成功。そして、彼女の渾身の一撃が炸裂する――!!
「はあああっ!」
大上段からの振り下ろし。技の名称は上級技の『グランドインパクト』だろうか。隙を大きく晒すが強烈な衝撃波を伴った斬撃で、コーリが握る長剣……組織で作られた武器と組み合わせれば、かなりのダメージが出る。
刃が、ゴーレムの体に入る。剣は一気に頭部から胴体を駆け抜け――その体躯に、はっきりと傷跡が刻まれた。




