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賢者の剣  作者: 陽山純樹
魂の聖域

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幻獣の戦い

 幻獣ルグが、来る――遠吠えがそう直感させられた直後、一斉にリザードマンが襲い掛かってくる。


「攻め立てろ!」


 号令が幻獣オルーから掛かる。それに対し彼の周辺にいた個体が、幻獣ジンとテラへ襲い掛かった。

 それに対し、両者は応じる……テラは配下を使うこともない。その理由は、俺達の護衛をさせるためだ。


 こちらは戦闘態勢に入ったのだが、それでもテラ達は守る気のようだ……直後、戦闘が始まる。まずはテラとジン。双方の動きは、完全に対称的だった。


「そらっ!」


 幻獣ジンは前に出て、拳を放つ。体術により戦うようで、その動きはよどみもなく洗練されている。誰に教授されたのかわからないが、人間のような姿をしているためなのか技で対抗するらしい。

 そしてリザードマンもまた同じように技で対抗する――これも人型である故だろうか。こちらは武装をしておりその得物は剣を中心としている。見た感じ魔力が込められているようで、おそらく自らの手で作り出された魔法のようなものだろう。


 先頭を走るリザードマンとジンが激突する。かざされた刃に構わず、ジンは拳を放ち――相手の剣に触れる。その瞬間、刃がいきなり爆ぜた。

 文字通りの爆発。破片が消し飛んだかと思うと、ジンの拳は問答無用でリザードマンへ突き込まれる。それによって、相手は吹き飛び――消えた。


「さすがだな」


 オルーの声が飛んでくる。続けざまにさらなるリザードマンがジンへと襲い掛かるが、やはり放たれた拳が刃を消し、敵の体に拳を叩き込むと一瞬で消失する。

 ふむ、ジンの能力は魔力破壊ということだから、その能力によって剣を消しているということか……? やり方はどうにせよ、ここはさすが長という言うべきか。オルーの配下を等しく一撃で倒している。


 正直、勝負になっていないのだがオルーの表情は変わらず笑みを湛えている。ともあれ立て続けにリザードマンがやられたことで、敵は一度突撃を控え、慎重になった様子だ。

 だが、そこへ追撃を掛けたのはテラ。彼はジンのように前に出るのではなく、遠吠えのような声を発した。


 それはどうやら魔法発動を行う動作――直後、向かってくるリザードマンの足下から光が生まれ、それが一瞬にして天へと昇り敵を飲み込んだ。

 例えるなら、ビームを照射するような感じだろうか。光に飲まれた個体は例外なく全て消滅。見た目は非常に地味なのだが、威力を凝縮し、一撃必殺の威力へと昇華させているようだ。


「見事」


 そんなテラの攻撃をジンは称賛しつつ拳を振るう。気付けば真正面にいるリザードマンが激減していた。一度の魔法とジンの攻撃により、前衛は崩壊状態という有様だ。


 それじゃあ周囲はどうかというと……テラの部下が魔法を放つことで敵を押し留め、なおかつ撃破していた。使用する魔法はテラと似たようなもの。ただ地面から発されるだけではなく、空、真正面と色々バリエーションが存在している。魔法は同じだが多種多様な発生場所によりリザードマン達は見事にかく乱され、対応に戸惑っているようだ。


 そうした隙を活かしてテラの部下達は猛攻を仕掛ける……連携も見事だし、同じ幻獣であっても相手にならないといった感じか。

 一方で、現時点で俺達の出番はない……テラの部下達は見事な防衛を見せ、俺達の手を煩わせることはない……あちらとしては戦わせるわけにはいかない、という感じなのだろうか。


 よって、余裕がある中で戦況は圧倒的にこちらが優勢……なのだが、さすがにこれで終わるわけがなかった。


「――この程度で沈んでもらっては、ここに来た意味もない」


 ふいに幻獣オルーは語り出す。その口調だと、何か考えがあるのか。


「では畳み掛けるとしようか――」


 オルーが前に出る。その直後、さらに森から増援が出現。しかもリザードマンだけではなく、幻獣ルグの配下である多種多様な狼も……ここからが本番か。ただ、


「配下をどれだけ寄越しても、意味はないぞ」


 ジンは告げながら近づいてきた敵を吹き飛ばす。それと同時、オルーの横から新たな敵が姿を現した。


 それは海岸で戦った巨人……の、小型バージョン。小型といっても周囲の木々くらいの大きさはあるので、威圧感は相当なもの。見た目が岩で構成されているのでゴーレムと呼ぶことにするが……あの硬度がそのまま搭載されていたとすると、魔王との戦いなどで遭遇したどのゴーレムよりも厄介だ。


「さすがにあれは、こっちも参加しないとまずいんじゃないか?」


 そんな呟きを発した直後、果敢にもジンが向かって行く。


「配下が相手したのなら倒すのは苦労しそうだが……俺だけは例外だ!」


 そんな叫ぶ声を発すると同時、ゴーレムに肉薄して拳が叩き込まれた。それにより――あっけなく胸部が貫かれた。


『さすがだな』


 テラが称賛の言葉を贈る……なるほど、あれこそ『魔力破壊』能力の真骨頂か。


 たぶんゴーレムを構成する体そのものは魔法で作った岩などではなく現実の物だと思う。仮にそうではないにしても、幻獣ルグの能力はあくまで魔力由来のもの。というか幻獣も人間も、天使も例外なく魔力を使って自身を強化している。それに例外はない以上、ジンの能力における範疇というわけだ。


 結果、どんな相手にも拳を突き立て始末することができる……シンプルな能力ではあるが、それ故に恐ろしいほどの汎用性がある……ふむ、あの技法、どうにか使えないかな?


 俺の手元にも防御無視攻撃は存在するが、魔力そのものを弾き飛ばす技法なんてものは存在していない。これを習得することができれば、切り札になるのは間違いないな。


 ただまあ、ジンがそれを習得しているのであれば、『神』との戦いに備え習得する必要性はないかもしれないけど……考える間にジンはゴーレムを一瞬で粉砕していく。森の奥からどんどん増援がやってくるが、それに怯むことなく、一撃で壊しており圧倒的だった。

 ただ、ジンがいる前衛については問題ないという話であり、俺達を護衛する幻獣テラの配下については、ゴーレムを倒せず苦慮している様子だった。


「どうやら、出番のようですね」


 近くにいるソフィアが呟く。うん、配下では対応しきれない相手……ならば、


「行くぞ、みんな」


 俺の指示が飛ぶ。それと同時、組織メンバーが一斉に敵へと仕掛けた。


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