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賢者の剣  作者: 陽山純樹
英雄の下に集う者達

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兵器を抗う力

 クロワの作戦についてはそれほど時間を使うことなく完了し、いよいよ本格的な魔界攻略に軸足を移すことになった。そうした中で俺達の扱いは――


「俺とソフィアは単独で動く、か」

「ああ、二人はそれこそ一騎当千の実力を所持している。よって可能であれば単独行動で動いてもらいたい」


 場所は会議室。作戦が決まったクロワは俺を呼んで話をする。俺が作る組織の人員については今回バールクス王国所属という形になり、一つの隊という扱いに。俺としては納得いく結果なので問題はない。

 で、基本的に種族ごとに隊を編成して動く様子。もっとも精霊については瘴気の関係もあるので精霊だけの隊、というよりは人間達の隊に対し援護を行うという役割に落ち着いた。


「今回の作戦、同時攻撃はするが隊の間で連携する必要はない。そこについては幸いだな」

「それぞれが独立して動くか……俺とソフィアはそうした中で単独行動により敵を倒すと?」

「さすがに一人で兵器を破壊して欲しいわけじゃない。二人は戦況を見て動き方を変えて欲しいため、ひとまず後方で控えていてもらいたい」


 遊撃というわけか。立ち位置としては無難かな。


「兵器を全て破壊した後、僕が率いる本隊がビゼルの居城へ急行する。その戦闘にも参加して欲しい」

「わかった……が、一つ問題があるよな」


 俺の言葉にクロワは頷く。


「最大の問題は兵器を全て潰すことができるか……もし一つでも残っていれば、大惨事が起きる」

「……狙いは十中八九、クロワがいる本隊だろうな」

「ああ、派手に暴れた以上、僕を狙ってくるな。兵器を破壊されても、僕が消えれば戦いには勝利だからな」


 ふむ、クロワの護衛か……とはいえ護衛といっても、この場合はもしもに備え――つまり兵器が使われた場合に備えてどうにかする必要性がある。


「仮に複数残った場合は……」

「今回参加する者達が狙われる危険性は低い。僕が率いる部隊などを狙い撃ちにするのが妥当か」


 クロワさえ倒せばいいわけだから、ビゼルとしてはそちらを優先的に狙うよな。最悪の事態は想定しておかなければならない……待てよ。


「なあ、クロワ」

「どうした?」

「兵器が発射された後、防ぐという選択肢は現時点でないよな?」


 問い掛けにクロワは訝しげな表情を示し、


「それをさせないために現在作戦を立てているわけだが……」

「それでも絶対とは言い切れない。ビゼルはどうも用心深いし、情報に乗ってこない場所に兵器を隠し持っていてもおかしくない」

「確かにそうだが……ちょっと待ってくれ、防ぐ手段があるのか?」

「あくまで仮の話だよ……ただ」

「ただ?」


 聞き返したクロワに対し俺は一時沈黙を置き、


「やりようはあるかもしれない……こちらの世界に戻ってきて、一つだけ候補がある」

「……正直、あの兵器を正面から防ぐなんて手段の候補があるだけでも相当だと思うが……」


 クロワの表情が苦笑に変わる。俺達は兵器の力を目の当たりにしているからな。それを見てなお防げるかもしれないと言及するのはクロワにとって驚くべきことなのだろう。


「その候補については『神』との戦いで関わってくるものなんだが……エーメルが模擬戦で仲間に語っていたことが当てはまるな」

「どういうことだ?」

「つまり――兵器すら防げない技法では役に立たないって話だ」


 俺はそう告げると、説明を加える。


「実は天界の長、デヴァルスに天使の力を結集した武具を作ってもらうよう依頼をしてある。それをレスベイルに力を宿すことになっている……現段階では武器か防具かも決まっているわけじゃないけど、上手く使えば防げる可能性もあるんじゃないかと思ってさ」


 ゲームでは盾だったし、防御的なものであるとありがたい感じもする。

 と、ここでクロワから疑問が。


「天使の武具……確かに可能性はあるかもしれないが、間に合うのか?」

「問題はそこかな。リリトと相談してみようか」


 そこでひとまず話し合いは解散となり、俺は天使リリトが待つ組織内の建物へ。そういえば、組織の名前とか決めておかないといけないな。

 リリトは探したらすぐに見つかり、天使の武具のことを相談してみると、


「それについてはデヴァルス様が動いています。一度戻ったのはその辺りも関係しているはず」

「ということは、今回の戦いに合わせて準備をするつもりなのか?」

「そう解釈して構わないかと。もし条件が整えば、私の方に連絡が来るようになっています」

「そうなるとデヴァルスが立ち会って強化するのではなく、リリトがやるのか?」

「デヴァルス様の話によると、準備が完了すれば私でも可能な手法らしいので」


 天使の力を結集するという点で相当ハードルが高かったはずだけど、どうやらその辺りをデヴァルスはクリアできるらしい。

 ここについては吉報を待つことにしよう。ただレスベイルに力を集めても実際に運用できるかは不明。せめてどのくらいの効力があるのかを確認したいのだが――


「わかった。そういうことなら待たせてもらうよ」

「はい」


 会話は終了。こちらでできることはほとんど終わってしまったな。


「あとは組織作りについてどうするか、だな」


 組織に入って欲しいと思う人物はまだいるが、果たして来てくれるのか。魔王との戦いなどで関わった人達だから、ひとまず話は聞いてもらえると思うけど……こちらも吉報を待つことにしよう。

 他にやっておくべきことは……思案しながら部屋へ戻ろうとすると、俺に声を掛けてくる者が。


「ルオン殿」

「エイナか……どうした?」

「魔界での戦いに備え準備が急ピッチで進められているのだが……その中でも少々ソフィア様が不満を言い始めた」

「……不満?」

「長く旅をしていたからな。窮屈な部屋に押し込められて相当参っているらしい」


 ……それが彼女の本来の立ち位置だと思うんだけど。


「で、暇があったらルオン殿も様子を見に行ってもらえないか。ただし婚約前ということで、二人きりになるとかは難しいと思うが」


 ――たぶん、正式にその辺りのことが決まって厳重になったのかもしれないな。


「思うんだけど、押し込められ人が近くにいることでソフィアは不満を言っているんじゃないか?」

「だと思うがさすがに私も見張りをどかせてくれとは言えない」


 そこは仕方がないな。


「陛下については組織作りの方に注力しているし、ソフィア様にあまり構っていないこともあるだろうな」

「あー、なんだか蚊帳の外になっているのか……わかったよ。それと一つ質問だけど、ロミルダやアンジェは一緒にいるのか?」

「そうだな、基本的には三人でいることが多い」


 それなら会いに行っても重臣の方々だって納得してくれるだろう。


「わかった。それじゃあ機を見てお茶でも一緒に飲むとするよ」

「ああ、それならよさそうだ……苦労を掛けてすまない」

「苦労と思っていないから心配しないでくれ。あ、ただお茶とか詳しくないから教えてもらえると助かる」

「了承した。最高のお茶を用意しよう」


 用意されても俺の方が味なんかわからないと思うけどな……そんな会話をしつつ、準備は進んでいくこととなった。



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