第一話 出所
浦島太郎は長い刑期を終え、シャバに出た。
竜宮城の前で待ち構えていた、亀のような国産ワンボックスカー。そのドアが開き、三人の男たちが降りてくる。蜂、栗、臼、彼らは浦島の前に並び、頭を下げ声をかけた。
「若頭、お勤めご苦労様です」
蜂が煙草を取り出した。浦島が一本咥えると、栗が火をつけた。小気味よい金属音を、デュポンのライターは響かせた。
「カシラは止せよ、もう組も無いんだ」
「……いえ、若頭は若頭です」
「お前が今いる組のカシラに失礼だろ」
「……なら、アニキと呼ばせてください」
竜宮城での長年に渡る禁煙生活が身についたのか、煙草は牛糞のような味だった。
◇◇◇
浦島を乗せたワンボックスカーは、県道を抜け高速を目指す。浦島は栗に声をかけた。
「俺がいない間に親父も死んじまって、大変だったろう?」
「……あ、はい」
「組も看板を下ろしちまって、カタギになった奴もいるんだろ?」
「……まあ、そういう奴も実際、ロクなことしてませんけどね」
浦島が竜宮城で収監されている期間に、組長は逝去して組は解散となった。多くは上部団体を介して別の組に入ったが、足を洗いカタギとなった者もいる。
助手席の臼が振り向いて、浦島に答えた。
「アニキ、俺、今カタギっす」
「おお、良かったじゃねえか」
「へへ、どうもっす」
「おまえ、組にいたときのシノギ(仕事)なんだっけ?」
「薬の売人っす」
「そっか、じゃあ今は何やってシノいでんだ?」
「薬の売人っす」
「……同じじゃねえか」
「へへ、どうもっす」
浦島は別に褒めてないのだが、臼は照れくさそうに笑った。ヤクザが看板を下ろしたところで、結局やることは変わらない。もともと持ってたシノギを継続するほか、生きる術はないのだ。呆れる浦島の心境を察してか、ハンドルを握る蜂が明るく話す。
「アニキ、放免(出所)祝いは期待してください、地元で評判の焼肉屋、予約してるんで」




