「ずうっといっしょ」下
約21000文字の後編です。
正直趣味全開でしたね。やりすぎた気もします。
しゃり…しゃり…
(…やっぱり、夢か。)
目覚めたばかりの頭で、そう理解する。
あの夢で見た記憶は、まだエルマリン諸島に移り住む前の、パルプーナでの出来事だ。
僕が風邪をひいて、彼女が看病してくれた、何回かの内の1回。
どうして今思い出したんだろう…
しゃり…しゃり…
「あれ…?」
目を開けて気付く。
僕が今見上げているのは白い天井だ。
病室に付いていたライトも見える。
そうだ、僕はスカイのお見舞いに来て…それで眠くなってしまって…
なんとか寝落ちする前の記憶を思い出す。
しゃり…しゃり…
(そういえば…この音はなんだ?)
ゆっくりとした一定のペースで聴こえる、規則的な音。
起き上がり、辺りを見回す。
記憶通り、ここは病院で合ってる。スカイの病室だ。
僕が寝かされていたのはスカイのベッド。
そして、横の椅子に座っていたのは…
しゃり…しゃり…
「スカイ…どうして…?」
「あ…ふふ…!」
彼女は僕を見て柔らかく微笑む。
スカイは椅子に座り、りんごを果物ナイフで剥いていた。
今までの様子とは違う。明らかな自発的な行動。
「寝かせてくれたのも…スカイ?」
「んー…?えへ…」
…やっぱり会話は出来ない。
でも、何かが進んだ…変わった。そんな感じがした。
「…あーん。」
「スカイ?」
りんごを切り終わり、それをスカイは差し出す。
僕が手で受け取ろうとすると、彼女は何故か、りんごを引っ込めた。
「…なんで渡してくれないのさ?」
「んー!」
何か…嫌がっている?ようだ。
そういえば、あーんして食べさせてもらった事があったなあ…
もしかしたら、僕が口を開けるのを待っているのだろうか。
「しょうがないなあ…あーん…」
「…!あーん!」
口を開くと、そこにりんごを入れてくれる。
やっぱり、食べさせてあげたかったらしい。
そうだ。最初に看病された時も確か…
りんごを受け取ろうとしたら…『あーんってしてください!口開けて下さい!』って言われたような覚えがある。
…もしかして、僕にしていた看病を思い出している?
りんごを差し出す彼女を見ていると、僕にはそうとしか考えられなかった。
「…退院ですか。確かに体の異常はありませんし、貴方となら食欲もある。さらに自発的に動く事まであったとなれば…」
その後、僕は主治医に相談しに来ていた。もちろんスカイの事についてだ。
今回、僕が目の前で寝た事がトリガーとなり、スカイは自分が看病していた頃をほんのちょっぴり思い出したのだろう。
それで考えたのだ、もしかしたら過去の経験や記憶を追体験させていけば記憶が戻るのではないのだろうかと。
「確かに普通の記憶喪失ならそれで治る可能性がありますが…彼女の場合は…」
医師の言葉を遮る。
難しいのは分かってる。胞子を吸って、苗床になる寸前から治った前例なんてない。
それでも、彼女はスカイなんだ。
僕の愛した、大事な、大事な彼女なんだ。
「やらせてください、出来る事はしたいんです。」
「…そうですね。このまま病院に居ても刺激が少ないでしょうし、きっとスカイさんも暇でしょう。それよりも貴方の案の方がずっと良い。明日にでも退院出来るよう、準備を進めておきますよ。」
「ありがとうございます!」
僕らが治療法の前例になってやる。
そのぐらいの意志を込めた言葉はしっかり伝わった。
次の日、退院の準備が出来たとの連絡があったので、すぐに病院に来た。
「お、お待たせしました…」
息を切らせて病院の受付に行く。
「充分早いですよ。連絡してからまだ10分も経ってませんし…よし、それじゃあ、スカイさんの病室に行きましょう。」
病院内を歩き、スカイの個室に着く。
部屋を開けると、車椅子を持つ看護師が居た。スカイはベッドで寝ているようだ。
「すみません…スカイさんがまだ乗ってくれてなくて…スカイさん、起きてくださーい!」
…スカイは看護師の言葉をガン無視している。
「退院は起きてくれるまで待ちましょうか…」
医師はそう言うが…僕はスカイに近づく。
「スカイ、おはよう。迎えに来たよ。」
「ん…」
僕が声を掛けると、彼女はむくりと起き上がる。
「スカイ、立てるかい?」
「うぅん…」
「じゃあ掴まって、引っ張ってあげるから。」
スカイをベッドに腰かけさせ、しゃがんで目線を合わせ、体に掴まらせる。
ちょうど、僕が腕でホールドされた様な状態だ。そしてそのままゆっくり立ち上がって彼女を引っ張り上げる。
「ほら、立てた。」
「ふふ…!」
一度立ち上がると、ふらつくこともなく、スカイはまっすぐ立つ。
…顔もどこか自慢げだ。
そんなスカイの事を、お医者さん達は驚きの表情で見つめる。
「スカイさん…私達の前では立つどころか、自分の力で起き上がる事も無かったはずなんですが…これが愛の力という奴ですかね。」
医師が大真面目にそんな事を言うからつい笑ってしまう。
「そうだったら嬉しい限りですよ。」
「ん!」
スカイが急かすように声を出す。
「分かった、行こうか。ちゃんと着いてきてね?スカイ。」
僕らは病院を出た。
「スカイ、ここが僕らが拠点にしてた宿だよ。覚えてる?」
「うーん…?」
ツインベッドの小さな部屋だ。
しかし、寝具はこだわられており、見た目よりもかなり居心地が良い。
「そっちがスカイのベッドで、こっちが僕の…」
そう指を指して説明している最中に、彼女は僕の布団に飛び込む。
ばふん!
という布団が彼女を受け止める音が室内に伝わる。
「説明聞いてよ…そっち僕のベッドなのに…」
そんな言葉もお構いなしに、彼女はベッドメイクされて整っていた布団を蹂躙していく。
「くんくん…ぇへへ…ふふ!」
僕の布団にくるまって、ずいぶんと幸せそうに笑う。
「…まあ、いいか。」
いい笑顔で幸せそうだが、思い出してくれそうな気配はない。
そうして、スカイが満足した後、今度は冒険者ギルドに行ってみる。
「スカイ、ここがギルドだよ。よく魔石とか素材を売りに来たよね?」
「んー…」
外観を見せるだけでなく、中に入ってみるが…やはり反応は薄い。
掲示板を見に行ってみる。
「ガルドマッシュの事ばっかり書いてあるなあ…」
ついこの間の事だし仕方ないだろうが、状況などを書いたお知らせばかりだ。
「………」
あ、スカイが退屈そうだ。
掲示板から離れ、階段で別の階に行く。
「ほら、情報収集でよく来てた図書館だよ。この本とか知らない?」
魔物の対策によく使っていた本を見せてみる。
「うぅん…」
「覚えてないかあ…」
その後も中々進展はなかった。
かつてお気に入りだった飲食店ではよく食べていたが…純粋に美味しいからだと思うし、やっぱり記憶を取り戻しているようには見えない。
「スカイ、ちょっと歩こうか。」
「ぅん…」
宿に戻るか迷ったが、眠るにはまだ早い時間だ。
それにスカイにとって良い刺激になるかもしれない、そう思って海岸沿いの砂浜を散歩する事にした。
「ねえスカイ。この島に来た理由って覚えてる?」
「ぇ…?」
後ろを着いて来ている彼女に聞いてみる。
「ぅぅ…」
小さく考えているような声はするが、答えは分かっていないらしい。
…覚えていない、が正しいのだろうが。
ちなみに、正解はより大きな迷宮で強いモンスターと戦いたかったからだ。
僕らはパルプーナではかなり腕の立つ冒険者だった。
それで様々なダンジョンを探して挑んでいたのだが…正直、大陸の迷宮では物足りなかったのだ。
それである時、高難易度のダンジョンがあると噂を聞いて、エルマリン諸島に僕らは来たわけだ。
…結果で言うと、実力不足だったんだろう。
僕のせいで彼女は後遺症を患い、1人で生活するのももう難しいだろう。
全部僕の責任だ。
「スカイ、綺麗だね。」
砂浜と海を眺めてそう呟く。
エルマリン諸島の海はパルプーナに負けないぐらい綺麗だ。水は透き通って、泳ぐ魚が鮮明に見える。
今のスカイでもその綺麗さは分かるだろう。そう思って聞いたのに返事が来ない。
不思議に思ってスカイを見ると、じっとこちらを見つめて立ち止まっていた。
「スカイ?」
近付いて顔を覗き込む。その顔はさっきよりも少し赤くなっていた。
「スカイ…風邪でも引いた?今日はもう宿で休もうか。」
彼女の手を引こうとして…手は熱くない事に気付く。
赤いのは頬の辺りだけだ。
もしかして…褒められたと思って、ただ恥ずかしがってるだけ?
そう思ったら確かめない訳にはいかない。
スカイを見つめ直す。彼女の青い眼をじっと見つめる。
「スカイ、好きだよ。」
反応はない様に感じた。
しかし、よく見ると青い瞳が微かに揺れた。少しは彼女に届いている…かもしれない。
「スカイ、君の姿が、君の声が、君の優しさや強さが僕は好きだ。」
また、瞳が揺れる。
「君の芯の強さが、頼もしさが、君のそばの心地良さが僕は好きだ。」
また少し、頬が赤くなる。
「僕は、君の…沢山のかわいい所が大好きなんだ!」
そう言い放って抱きしめる。強く、でも痛くないように。
2度と離れてやらないと伝えるぐらいの強さで。
ずっと一緒にいてやるという想いを込めて。
抱きしめられた彼女は、プルプルと小さく震え…
「ぁ……わ……」
声にならない声と共に、ゆっくりと抱きしめ返して来た。
ああ、あったかいなあ…
慣れ親しんだ温もりを感じ、目を閉じて彼女に頭を預ける。
「わ、わた…」
「…?スカイ?」
何か、伝えようとしているのだろうか。
顔を上げ、彼女の顔を見る。
「わたしも…」
「ッ…!?」
彼女の目は僕の方を向いた。
まっすぐ、光を持って。
「わたしも、すき。」
「スカイ…」
スカイの視線はまた下へと戻る。
それに、続く言葉は無い。
少しして、スカイを抱きしめていた腕を戻すと、彼女も離した。
念のため瞳を見つめるが…ただ、ぼーっとした青い瞳があるだけだった。
でも、気のせいじゃない。少しづつ良くなってる。
彼女の頭に刺激を与え続ければ…本当に元通りのスカイに戻ってくれるかもしれない。
そう思うと、希望が湧いてきた。
「どう?2年振りぐらいの船だけど。」
「やー…」
僕とスカイはパルプーナ行きの船に乗っていた。
彼女が人生の大半を過ごしていたのはパルプーナだ。
スカイの記憶を刺激するには、やはり長い年月を過ごしていた場所の方が良いと思ったのだ。
それに、「善は急げ」という言葉がある。
僕の自論だが…思い立ったら即行動するべきだ。それなら、もし失敗しても別の案を試す時間を作れるから。
…まあ、失敗しないのが1番だが。
「スカイ、パルプーナが見えて来たよ。」
「むー…」
船の手すりに掴まって景色を楽しむ僕とは対照的に、スカイは壁の側でうずくまっている。
まるで拗ねてしまった子供のようだ。
…そういえば、昔、スカイはパルプーナからエルマリンへと向かう時の船で酔ってしまったのだ。
もしかしたらそれで、船に苦手意識が出来てしまったのかもしれない。
「ほら、スカイ。僕を見て?」
スカイに近づき、しゃがむ。
「…むぅ。」
ちらりとこちらを見るがすぐに甲板に視線が戻る。やっぱり怖いんだろう。
落ち着かせる為にゆっくりと抱きしめる。
「ほら、怖くないよ。僕がずっと着いてるから。」
「……!えへへ…」
スカイは表情がやっと柔らかくなる。こういう顔の方がずっと似合っている。
スカイをゆっくり立ち上がらせる。
「船の中でランチでも食べようか。それでパルプーナまで時間を潰そう。」
こくりと彼女は頷いた。
「ふへぇ…」
「…気持ち良さそうだね。」
マッサージチェアに座ったスカイは力の抜けた声を出す。
今日乗った船は豪華客船…とまではいかないが、ちょっと良い船だ。
【くつろぎスペース】なる部屋があり、乗客なら自由に利用出来る。
「もうそろそろ着くんだから寝ないでね?」
「はーい。」
僕はくつろぎスペースを出て、レストランに戻る。
そしてカウンター席で飲み物を貰う。
大きなガラス越しに見える外の海に、目的のパルプーナがかすかに見えた。
「…あれ?」
座って飲み物を飲んでいた時、急に気付いた。
スカイが、普通に返事してた。
一息にジュースを飲み干し、彼女のところへ戻る。
「ねえスカイ!さっき返事したよね!?」
僕はマッサージチェアを覗き込み…
「くー…くか~…」
そこには熟睡するスカイがいた。
「も、もう寝てる…寝ないでって言ったのに…」
「むにゃ…」
到着予定時間までは30分ほど。
どうせ僕らには大きな荷物も無い。
到着したらすぐに下りることができる。
僕は隣のマッサージチェアのに体を預け、楽な姿勢でスカイを見つめる事にした。
「ほら、スカイ降りるよ。」
「うぅ〜…」
パルプーナに到着し、船を下りようとした所で…僕はスカイが動いてくれなくて困っていた。
まだマッサージチェアから降りない。
このまま着いてこないと出航出来ないだろう、つまり他の人の迷惑になる。
「うーん…じゃあ、ちょいと失礼。」
「わぁ!?」
僕はしゃがみ、スカイのひざ裏と肩を支えて横に抱っこする。
つまりお姫様抱っこというやつだ。
「これなら良いでしょ?」
「えへ…」
安心したような柔らかい笑顔を彼女は見せる。
そして、ふと思い出す。
いつか忘れてしまったけど、前にもお姫様抱っこをした気がする。
いつだっけ…?
僕は考え事をしたまま、お姫様抱っこで彼女を運んでいく。
「おっと…大丈夫?スカイ。」
「うゆ!」
船から下りる階段を歩いていると、危うくスカイを落としかけた。
僕の腕でしかスカイを支えていないからだろう。バランスが少し悪く、安定しない。
このまま歩くとまた姿勢を崩しそうだ。
前は確か、スカイが肩か首の辺りにでも掴まってくれれて…安定感が良かった気がする。
「よっ!…ふふっ!」
「…スカイ?」
僕が何かを言う前に、彼女は両手で僕の首辺りに掴まる。ちょうど僕の思っていた通りに。
「ありがとう、スカイ。」
「ん!」
懐かしのパルプーナ、と言うほどの年月は経っていないが、多少は変わっているだろう…
そう思っていたのに、いざ見てみるとほとんど違いが無い。
海から町までを繋ぐ、少しでこぼこした道も、町の広場も、指輪を買った宝石店やお気に入りだった軽食屋も、何も変わっていなかった。
「スカイ、美味しい?」
「ずずずー…」
一度スカイを下ろした後、軽食屋で飲み物を買った。
試しにお気に入りだった飲み物を渡したら夢中で飲んでくれている。
…ここまで町並みが変わっていないとなると、スカイに残っているであろう記憶もかなり刺激が出来そうだ。
「んー…」
スカイはストローの付いたコップをこっちに出してくる。
「おかわりはダメだよ、それ甘いんだから。」
「…ちがい、ますよ。」
スカイが、また喋った。
僕は思わず目を見開いてしまう…が、出来るだけ平静を装う。
何故なら、スカイが喋ったという事は、頭の会話する機能が回復してきた証拠のはずだ。
そこで「今喋ったよね!?」なんて言うと自然な会話にならない。
彼女はふとした時に、自然な反応を返す。
それで考えた、自然な会話をし続けた方が治りが早くなるのではないかと。
やっぱりこれも、ただの仮説だが。
「じゃあ、飲んで良いの?」
「…そーですよ。」
彼女と同じストローで、同じジュースを飲む。
美味しい、甘いりんごジュース。このお店で飲み物を買う時はよくこれを買っていた。
「うん、美味しいよ。ありがとう。」
コップをスカイに返す。
「ずずー…」
スカイは喋らずにまたストローに口を付けた。
「間接キスだね?」
反応は薄い。
でも、また一歩前進だ。
「ほら、スカイ。一緒に寝るよ。」
「むぅ…」
彼女は布団に入らない。
…あまり機嫌が良くなさそうだ。
何故だろう、あの後は家に帰り、ご飯を食べて、思い出のある物をいくつか見て、お風呂に入れて…
「あ、もしかして髪の洗い方…乱暴だった?」
思い当たる物といえばそれぐらいだ。
スカイはどちらかといえばズボラ寄りである。
髪の洗い方にこだわりは無いと思って自分と同じように洗ってしまった。それがダメだったのだろう。
「ごめんよ…次から丁寧に洗うからさ…」
近付いて来たスカイを撫でる。
彼女はまるで猫のように気持ち良さそうな、幸せそうな顔をする。
「ほら、布団入って。夜は冷えるんだから、風邪引くよ?」
「はーい。」
めくった毛布に彼女は入る。
毛布に入った彼女をすかさず抱きしめる。
「あったかいねえ…」
「そー、ですねぇ…」
何となく放った一言にも彼女は反応する。
…この、適当に会話できる感じ。前と一緒だ。
まだ1週間ちょっとしか経ってないのに、何故だか涙が出てきた。
「だ…だいじょ、ぶ?」
「うん、大丈夫だよ。スカイ…一緒に寝ようね。」
スカイをしっかり抱きしめて、僕は目を閉じた。
「ほら、トラジ!早く来ないと置いて行っちゃいますよー!」
…気付いたら僕は浜辺に居た。
また夢か?
そんなふうに抱いた違和感も、やっぱりすぐに消えてしまった。
スカイはよく似合う白のワンピースをはためかせながら砂浜を走っていた。
「ちょ、ちょっと待ってよー!」
スカイの方が僕よりも速いのに、時折彼女はこんな風に追いかけっこを始める。
走りづらいだろうに、器用なものだ。
…まあ、僕が追い付けるように手は抜いてくれるのだが…それでも結構全力で走らないと追いつけない。
「トラジ〜!こっちですよー!」
「だ…だから、待ってってば…」
距離は縮まらないが、それでも諦めずに走り続ける。
「はぁ…はあ…」
しばらく追いかけっこして、とうとう息切れして立ち止まる。
「もう体力切れですかー?」
そんな僕に彼女は近寄ってくる。
覗き込む姿は、完全に油断した様子だ。
「捕まえた!」
スカイが僕にかなり近付いた所で、ガバッといきなり抱きしめる。
「あ!ズルいですよ!息切れしたフリでおびき寄せるなんて!」
「ズルじゃない、作戦だ!それに息切れは本当だし!」
彼女はまだ「ズルだ!」とかはやしたてているが、僕と同じように顔は楽しそうだ。
ただふざけているだけだろう。
「そうだ、スカイ。ちゃんとここに呼んだ意味があるんだから!ちょっと待ってて。」
「はーい。」
僕はスカイからは見えない位置で、小さな箱を取り出す。
手のひらに収まるサイズのヒンジの付いた箱…この中には指輪が入っている。
頑張って選んだ大事な指輪、今日僕は彼女にプロポーズする。
「スカイ。」
スカイからハッキリ見える位置に箱を出す。
「え…あ…も、もしかして…?」
箱を開き、指輪を見せる。
彼女は驚き、赤面したのち…目がうるうるしだす。
「す、すみません…嫌だから泣いてる訳じゃないんです…」
ボロボロと、大粒の涙がこぼれ落ちる。
「大丈夫、わかってるよ。」
彼女は涙を拭って、まっすぐこちらを見つめる。
「ごめんね、遅くなって。」
「…大丈夫ですよ。ずっと待ってましたから。」
「スカイ、僕と結婚して下さい。」
「はい…!」
スカイは今も嬉し涙を流しながら、左手を差し出す。
僕は箱から指輪を取り出し、彼女の薬指へと近づけ…
「カー!」
カラスに奪われた。
「な…!?」
「…ふえ?」
僕とスカイは理解が追い付かず、その間にカラスは手の届かない高さに飛び上がってしまう。
「この…【小さな火球を飛ばす魔法】!」
カラスに手を向け、魔法を撃つが…
「カー」
こちらを煽るような鳴き声と共に避ける。
「この野郎…」
「やめておきましょうよ、カラスは頭良いですし…どんな魔法も避けると思いますよ?」
…確かに、と思った。
何故なら、今も空を飛ぶカラスは、既に僕が手を向けるだけで回避行動をとり始めたからだ。
流石に避けられない程速い魔法は僕には撃てない。
…なら、避けられても少しは効果のある魔法を使おう。
「【小さな爆発を起こす魔法】!」
カラスのすぐ横で小さな爆発が起きる。
「ガァッ!」
カラスは爆風に影響され、空中でふらつく。
そしてクチバシから輝くもの…指輪が落ちてくる。
「よし!」
まっすぐ落ちてきた指輪を見て、そこから着地点を予測し確認する。
…そこは海だった。
「え…?あっ!」
「あー…」
ポチャン、という音と共に指輪は海に沈んでしまった。
「トラジー、もう諦めましょうよー。あなたがプロポーズしたって事実は変わらないんですし、私はそれで充分ですよ?」
「でも…君に似合うと思うんだよ!君への気持ちを込めて、オーダーメイドで作ってもらったんだよ…一度も着けてもらえないなんて…嫌なんだよ…」
海に入り、何度も目を凝らす。何か輝いている物が落ちてないか、探し続ける。
夕方だった空はすっかり暗くなり、少し冷えてきていた。
しかし、伸ばした指先にも、靴を脱いだ足にも、まるで感触は無かった。
「トラジ…じゃあ、今日はやめましょうよ。また風邪引いちゃいますよー?」
「ぐっ…風邪は嫌だけど…」
でも、諦めきれない。それに明日には流されて何処か別の場所に行ってしまうかもしれない。
しかし、スカイが僕を心配する気持ちもよく分かる。
「じゃあこうする、一度家には帰るよ。それで身体を温めた後にもう一度探させて。頼むよ…」
スカイは少し悩む様子を見せ…うなずいた。
「分かりましたよ。お風呂に入って、ご飯を食べたら、もう一度探しに来ましょう。でも、見つからなかったらキッパリ諦めて下さいね!」
軽くうなずき、海から上がって、2人で家に歩き出す。
「…また夢か。」
ここ数日、やけに過去の夢を見る。
元々、そんなに夢を見る体質でもないのだが…
「…スカイ?」
意識がはっきりしてきて気付く、腕の中にあったはずの重みが無い。
ベッドにスカイの姿はなかった。
彼女が家の中に居るか確かめるため、とりあえず寝室から出る事にした。
扉を開けると、鼻をくすぐるいい匂い。減ったお腹を刺激する、とても良い香りだ。
「おはよう、スカイ。」
「おはよー」
彼女はキッチンで、フライパンを火にかけていた。
2つのお皿の片割れにはベーコンにソーセージ、そして目玉焼きが乗っていた。恐らく今焼いている物と同じだろう。
「朝ごはん作ってくれたんだ。ありがとう。」
「簡単、ですから。大丈夫、ですよー♪」
…今の彼女は、いくつかの単語を扱えるようになった。
1語1語、刻むように途切れる不自然な喋り方だが…まあでも、良い傾向だと思う。自分から料理もしているし、何より会話が成り立っている。
苗床にされかけた冒険者が、うわ言以外を口にした前例は無かったはずだ。
スカイは明らかにそういう例から外れている。本当に良い傾向…のはずだ。
スカイがよそった後、皿2つをテーブルへ持って行く。
「「いただきます。」」
手を合わせてから食べ始める。
…うん、美味しい。目玉焼きぐらいなら問題なく調理出来るようだ。
2人とも食べ終わった後、皿をシンクに持って行って洗う。
…今日はどこにスカイを連れて行こうかな?
パルプーナに帰ってもう1週間程経った。
思い出のありそうな場所は既に行った後だ。
今までの感じからして、もっと深く記憶に刻まれている物でないと彼女は思い出せないだろう。
お気に入りの店、よく行っていた場所よりも、もっと魂に刻まれていそうなもの…
「あ。」
今朝の夢で丁度いい物を見たじゃないか。
あの日は町中でデートをした後、砂浜へ行ってプロポーズをした。
つまり、その時のデートコースをまわって行けば、かつてのデートを思い出してくれる…かもしれない。
今の時間は…10時くらい。当時、デートしたのは11時頃。今から準備すればほぼ同じ時間に出れるはずだ。
「スカイ、今日も出かけようか。」
「えー…?」
彼女はちょっと嫌そうな顔をした。
「デートしよう、スカイ。ここしばらく忙しかったから久しぶりにさ。」
「…!準備してきますねー♪」
僕は2年前とそっくりそのまま同じ言葉を口にした。
そして、彼女の反応も2年前と同じ。
…やっぱり2年前の流れを上手くなぞれば思い出してくれるんじゃないだろうか。
その仮説を現実にするため、とりあえずデートの準備を始めた。
「次、どこ行くんです?」
「そーだなあ…宝石店でも行く?」
「…期待、しちゃって良いんですか?」
「今日は買わないよ。」
僕らのデートは既に後半に突入している。
予想通りというか、なんというか…スカイは2年前とほぼ同じ反応をしている。
僕が前とほぼ同じ事を言っているとはいえ…ここまで同じ反応をされると、もはや2年前に戻ってしまったとすら錯覚してしまう。
「いらっしゃいま…おお!お久しぶりです!」
宝石店に入ると、どうやら店員さんに覚えられていたようだ。
「お久しぶりです、前は相談に乗っていただきありがとうございました。」
「いえいえ、店員として当然の事ですよ!それに、彼女さんにお似合いで良かったです!」
店員さんはスカイの手を見てそう言う。
また気になる事があれば何でも聞いてくださいね、という言葉で店員さんは会話を終えた。
「あの…ちょっと来て、もらえます?」
僕が指輪のショーケースを見ている間にスカイが何か見つけたらしい。
「いい感じのやつあった?」
そう聞くと、彼女に手を引かれる。止まったのはネックレスの置かれたショーケース。
「これ、なんですけど…」
彼女はあるネックレスを指差す。
「なるほど…綺麗だけど派手な訳じゃないし、あまり大きくもないから普段から着けてても邪魔にならなそうだね。」
「そう、ですよねー!」
スカイはその調子でネックレスや髪飾りのショーケースを見る。
…その後ろ姿を見つつ、僕は内心焦っていた。2年前と急に流れが変わったからだ。
前回のデートでは一緒に指輪を見て、良さげな物を一緒に探し、スカイがお店を一旦出た所で、僕が事前に好みを聞いて作っておいた指輪を受け取ったのだ。
ただ今回は…まずスカイが指輪を見ていない。前は見なかったネックレスなどを重点的に見ており、指輪に興味を示していない。
完全に流れが変わってしまったのだ。ここから修正するには…
「あの…」
「ああ、スカイ?どうかした?」
ショーケースを見つつ、考え事をしていたら肩を叩かれた。
「私、喉乾いちゃって…飲み物買ってきますね?」
「ああ。気を付けてね。」
一応ここ数日でスカイが簡単な買い物ぐらいは出来るようになった。1人でも問題ないはずだ。
…そして、ここで僕1人になるのは元の流れ通り。
僕が何かをするまでもなく、修正された。
つまりここでスカイのプレゼントを手に入れて、それをあの砂浜で渡せば…元の計画通りだ。
「店員さん、このネックレスもらえますか?」
「はい!」
僕はスカイが最初に興味を持っていた、緑の宝石の付いたネックレスを買った。
僕らは砂浜に到着する。
「……綺麗、ですねえ。」
「…そうだね。」
しかし、二年前のデートと違い、彼女は走り出さない。
「…走らなくて良いの?」
「別に、良いじゃないですか。走っても、走らなくても…」
「それも…そうなんだけど…」
ゆっくりと手を繋いで歩く。
綺麗な海のそば、時折吹く風でスカイの髪やワンピースが揺れる。
…何も起こらない。僕らはただただ海岸を歩くだけ。
数十分、1時間と時間が過ぎる。
2年前の出来事を再現出来るチャンスなんて全然来ない。
自分でも焦っているのがよく分かる。次の策を考えようとして何も思い浮かばない。
スカイの様子を見る。
今も手を繋いだまま、のんびりと横を歩いてくれている。
しばらく見ていると、彼女は視線に気付いて、柔らかく微笑みながらこちらを見つめ返す。
その姿は、なんだかとても幸せそうだった。
…これで、良いのかもしれない。
僕はスカイと一緒に暮らせて、スカイもそれを喜んでくれている。
記憶が戻りきっていなくても、魔法が使えなくなってしまっても、一体何の違いがあるというのだろう?
彼女は彼女、僕は僕。
ただの婚約者。その事実は変わらないんだ。
無理に今すぐ全部思い出させようとしなくても…良いんじゃないかと思い始めた。
冒険者をやっているのは趣味、別の仕事だろうと構わない。彼女とさえ一緒にいれるのなら。
そうだと決まったら、もう前回の流れなんて関係無い。今、僕が言いたい事を素直に伝えてしまおう。
「綺麗だね、スカイ。」
その言葉にスカイは少し驚いたような顔をする。
「君がたとえ、どんな風になっても僕は君を愛し続けるよ。」
彼女を軽く抱きしめる。
「ずっと…ずうっといっしょだよ。」
どの程度伝わったんだろう。
どのくらい今の言葉を覚えてくれるのだろう。
そう思って耳元で発した言葉は想定外の言葉で返された。
「もう、再現しなくて、良いんですか?」
「え…?」
彼女の肩から頭を離す。
彼女の顔を見る。
スカイは僕を見つめる。
…揺らいでいない。青い瞳はまっすぐ、こちらをハッキリと見つめている。
「スカイ…記憶、戻ったの?いつの間に?」
「少し、ですけどね、大事な、トラジとの、思い出、ですから。最近まで、上手く、思い出せませんでしたけど、でも、ずっと、トラジが大事な人なのは、覚えてましたよ。」
まだ喋り方は不自然だ。
でも、彼女の強い意志を、確かに感じ取れた。
「そっか…良かった。」
「反応…薄くないですか?大事な彼女が、良くなってるって、分かったのに…」
スカイは少し拗ねたような顔をする。
「何でだろうね…スカイならきっと大丈夫って信じてたからかな?」
「…そーですか。」
拗ねた顔をキープしつつ、彼女の顔は赤くなる。
「かわいいね。」
「…いつもそう言えば、なんとかなると、思わないでくださーい。」
そう言いつつ、スカイの顔は照れ臭そうな、優しい微笑みが浮かぶ。
2人で砂浜に座って海を見る。
「綺麗、ですねえ。」
「そうだねぇ。」
夕暮れの空の下、いつも通りの平穏が訪れたような気がした。
そのまま、僕らの間で静かな時間がしばらく流れた。
辺りは暗くなって、観光客達も姿を消した。
このまま2人だけで星を眺めたい。
そう思って寄り添う僕らの静寂は破られる。
「あれ!2人とも久しぶり!」
その静寂をぶち破る声は海から聞こえた。
「…やあ。」
海から出て来たのは、髪の黄色い、胸あたりに布を巻いただけの人間の女性…に見えるが、下半身に付いているのは足ではなく、綺麗な尾鰭だ。
つまり、人魚である。
本来レアなはずの人魚、しかし、僕ら2人は興奮もせず、冷静に…むしろ嫌そうな顔で対応する。
「急に、どうしたんです?ナルマさん。私たち、いい所だったんですけど…」
「ごめんね!邪魔だったよねー…でもゴメン!どうしても聞きたい事があったの!」
わざわざ聞きに来たのだし、きっと大事な用なのだろう。
そうであってくれ。
「それで?いったいどうしたの?」
仕方ないから聞こう…そう思って発言を促す。
「子供の名前って…何が良いと思う?」
人魚の口からそんな言葉が飛び出す。
「……は?」
スカイから素の困惑が溢れでる。
確実に分かる、僕らに聞くことではない。
「…それはちょっと力になれないかなあ。」
人魚の彼女は絶望感漂う顔をする。
「お願いだよー!!私、頭良くないから名前もいい感じの付けられないんだよぉ…!」
そうは言ってもなあ…という表情でスカイと顔を見合わせる。
「じゃあ…今までどんなの、考えたんですか?」
せめて傾向を聞く、可愛い系なのか、カッコイイ系なのか。
「思い出すね?…えーとね、キュイでしょ、ネジラでしょ、それからー…」
ナルマはそのままいくつも候補を言ったが…傾向も分からないし、『これだ!』となる名前が無い。
というか、今だに男女どちらに付けたいのかすら特定出来ていない。
「ナルマ、それって男の子の名前?女の子の名前?」
「え?女の子に決まってるじゃん!人魚なんだから!」
人魚族は女性しか産まれない、特殊な生態らしい。
前に直接聞いた覚えがある。
でも…女の子らしい名前、あんまり無かったような…
「ナルマさん…やっぱり私たちじゃ、駄目だと思うんですけど…」
「うんうん、スカイの言う通りだよ。僕らもネーミングセンス無いから無理。じゃあナルマ、僕らは帰るから…」
これ以上付き合わされても状況は変わらないだろう。
サラッと立ち去ろうとするが、引き止められてしまう。
「わー!!!待ってよ、待って!お願いだよー!!」
「そんな事言っても無理ですよ!本当に名前付けるの苦手なんですから。」
ナルマはぐぬぬ…と唸る。
「で、でも君たち!私に恩があるでしょ!だからお願いだよ〜!」
「まあ…確かにあれはナルマのお陰だったな…」
恩。それは僕らが指輪をなくした時の事だ。
「トラジ…本当に探すつもりなんですか…?そういう約束でしたけど…もう寝ましょ?」
彼女の誘惑を振り払う。
「君に今日着けてもらうのをずっと楽しみにしてたんだよ…そう簡単に諦められないよ。」
そう言って靴を脱ぎ、海の中に入って探し始めた。
ひんやりとした水は普段は気持ち良く感じるけれど、今は足が無駄に冷えて、気になってしょうがない。
月明かりのお陰で視界は悪くない。しかし、水の中に沈む指輪はまるで見つからない。
しゃば…しゃば…と小さな水音を立てつつ、手を突っ込んで指輪を探していると、ポチャン…ポチャン…という音が聞こえた。
後ろを振り向くと、そこに見えたのは水色髪。
「うう…冷た…」
もちろんスカイだ。彼女も靴を脱いで海へと入っていた。
「スカイ、探してくれるの?」
「ま、まあ、デザインもよく見えなかったですしね!それにせっかくのプレゼント、欲しいじゃないですか!」
そう言って水底を彼女は覗き込む。
…その彼女の顔を見て、少し嘘が混じっている気がした。
「何か隠してない?」
「えっ!?…いや、そんな事ないですよー?」
視線を上げた彼女の顔を、ジッと見つめ続ける。
観念してスカイは軽いため息を吐いた。
「…じゃあ、正直に言いますよ?あなたから指輪、着けて欲しかったんですよ。今はただの恋人ですけど、あなたに指輪を着けて貰えたら…もう私はあなたのモノって周りにアピール出来るじゃないですか?変な人に絡まれるのも嫌ですし…だから私も手伝って、早く見つけたいんです。…それに、憧れがあったんですよ…そういうプロポーズに…」
ぽかん、として表情のままスカイを見つめる。
…ちょっと歪んでいる気もするが、意外に乙女っぽい普通の理由に僕は反応を上手く返せなかった。
「…なんですか?その顔。私にだってそういう憧れはありますよ!」
怒ったように彼女は言う。
「それに私…あなたにだったら何されたって…良いんですよ…?」
突然、色気を放ちながらスカイはそう言い放った。
僕はドキッとして、頬が赤くなった気がした。
「ま、まあ探そう!続きは見つけてから!」
一旦気持ちを切り替える。本題を忘れる所だった。海の中へと視線を戻す。
「へぇ〜…見つけたら"続き"するつもりなんですねー」
「………」
認める訳にもいかないので僕は黙り込んだ。
「はあ…」
それからも、指輪はまるで見つからない。
指輪を落とした場所はほぼ覚えているのにも関わらずだ。
「誰か拾っちゃったんですかねー?それだったら、何処かに落とし物として届いてたら良いんですけど…」
「残念だけどそれはないだろうね…見るからに高い指輪だから、相当親切な人じゃないと盗んじゃうと思うよ?」
あの指輪は銀のリング部分に細かく意匠が刻まれており、ぱっと見のデザインはシンプルながら、よく見ても美しい。
宝石として使われている石も魔法をアシストするような効果があり、魔法具としての能力も高い。
誰かに見つけられたら、きっと盗まれてしまうだろう。
しかし、落とした時間、探していた時間、その間に砂浜で人を見かける事はほとんど無かった。
誰かに盗まれたよりも波で流されたり、魚にでも奪われた可能性が高そうだ。
「はあー…もうムリだよぉ…」
ずっと中腰だったから体がかなり痛い。一度休憩しようと、砂浜にあがって寝っころがる。
「最初は『諦められない!』とか言ってたのに…私より先にへばっちゃっていいんですかー?」
スカイはこちらを煽る。
「君だって最初は探すの否定的だったじゃない。自分を棚に上げてそんな事言わないでよ。」
「むー…確かにそうですね…」
ぱちゃぱちゃと浅瀬を歩く音が聞こえてきて…
「私もひと休みしまーす。これでお互い、言い合いっこは無しですからねー!」
横にスカイが転がる。
…僕にはまだ彼女に文句を言う権利がある気がするが…まあもうこの論争はしない方が良いだろう。
「あ…星ってこんなに綺麗に見えたんですねー。」
仰向けになった彼女は空を見てそう言う。
「あー…本当だ。こんなに眩しいくらいに見えたんだ…」
この海岸はたまに来るが、思い出してみるとこんなに遅い時間に訪れた事が無かった。
だから今まで、この星達の綺麗さに気付く事がなかったのだ。
「綺麗だね、とっても。」
「…はい。そうですねえ…」
輝く星々(ほしぼし)の中、瞬く程の時間。星の軌跡が走った。
「「あ。」」
流れ星だ。
『願い事を星に伝えれば叶う』、という話は誰もが知っている。
口に出すのは間に合わないけれど、きっと念じるぐらいは間に合うはずだ。
【スカイと、いつまでも、何があっても、ずっと一緒にいれますように。】
願い事を終え、目を開けると既に流れ星は見えなくなっていた。
「…トラジ、何をお願いしたんですか?」
スカイが聞いてくる。
「君と一緒にいれるようにって願ったの。君は?」
「私は──…指輪が見つかってくれますようにって。自分の事じゃなくて残念ですかー?」
ニヤニヤと笑うスカイの顔をじっと見つめる。
「また嘘だね。本当は?」
「なっ!?…ほ、本当は……あ、あなたと大体一緒ですよ……ずうっと一緒に過ごせますようにって…言わせないでくださいよ…」
スカイのほっぺが赤くなる。
「また…こんな綺麗な星を見れると良いね。」
「そーですね…出来れば最期の景色がこれだといいですね、最期に見るにはうってつけですよ…」
「はは…じゃあ、僕らがおじいちゃんとかおばあちゃんに、なったら絶対に見に来ようね。」
「そーですねえ…」
穏やかな、静かな会話。疲れもあったのかいつの間にか僕らは眠ってしまった。
「君たち!そんな所で寝てたらお腹冷やしちゃうよ!風邪ひいちゃうよー!」
スカイとは違う、聞いた事のない声で起こされる。
「んんー…?誰ですか…?」
寝起きの目を擦ってなんとか声の方を見る。
黄色い髪、貝殻の水着、青っぽい尾びれ。
何処かの本で見た事がある。
「えっ!?人魚!?人魚さんなんでいるの!?」
「トラジ…大きな声出してどうしたんですか…?せっかく気持ちよく寝てたのに…えっ!?人魚さん!?写真撮りましょう!写真!」
スカイも一目見た瞬間、テンションがぶち上がる。
それだけ人魚は希少なのだ。滅多にお目にかかれない。
「ふ、2人とも落ち着いてよー!…でも、そんなに元気ならお腹を冷やしたりはしてなさそうだね、良かった!」
「…え?」
自分のお腹に手を当てる。
お腹はキンキンに冷えていた。
もちろん次の日には風邪を引いた。
「あ、私ナルマ!よろしくね!2人はなんて名前?どんな関係?どうしてそこで寝てたの?」
ナルマと名乗る、黄色い髪の人魚は立て続けに聞いてくる。
「寝起きの人にそんな一気に聞きます~?」
「まあいいじゃない。まず僕はトラジだよ、この子はスカイ。関係は恋人…もうすぐ結婚する予定だけどね。何してたかって言うと…そのプロポーズの為の指輪がカラスに盗られて、海に落ちちゃったんだよ。それで、探してる間に疲れて寝ちゃったんだ。」
「ふ、ふーん…なんか羨ましいなあ、私はそんな関係の人居ないから…」
人魚はしょんぼりとした顔をする。
「ナルマさん、綺麗で素敵なんですし、きっといい人が見つかりますって!元気出してくださいよー。」
「スカイちゃん…あなた優しいね!うん、私もいつか、運命の相手見つけちゃうから!ちょっと元気出てきた!」
"ちょっと"どころではなく、かなり元気そうだ。
「じゃあ元気出させてくれたお礼に…私も指輪探してあげるよ!どんなデザインなの?」
宝石が付いている事やリングに刻まれた文字など、出来る限りの情報を伝える。
「へえー…もしかして、こんな指輪かな?」
彼女はどこからか指輪を取り出す。
それは僕の落とした指輪で間違いなかった。
「そ、それです!いつ拾ったんですか!?」
「うーんと…確か2時間ぐらい前だったかなあ?」
2時間前…恐らく僕らが一度家に帰った頃だ。
そのタイミングで僕らと入れ違いになり、彼女は指輪を発見したのだろう。
指輪が海の中にあろうと、人魚なら関係なく回収出来るだろうし…僕らより簡単に指輪を見つけられたのも納得だ。
「じゃあ、はい!今度は奪われないようにね!」
「あ、ありがとうございます!助かりました!」
ナルマは指輪を持っている手をこちらに出す。
そこから受け取ろうとすると…ひょいっと躱された。
「ナ、ナルマさん?」
「えっとね?指輪はもちろん返すんだけど…ちょっとしたおねがいがあるの。よければ聞いてもらえない?」
まあ彼女はこの指輪を見つけてくれたのだ。お礼として、そのぐらいはするべきだろう。
「分かりました、どんなお願いですか?」
彼女はまるで子供のように顔を輝かせる。
「ありがとう!えっとね、さっき私は良い相手が居ないって言ったでしょ?それでね、私は見ての通り人魚だから地上には上がれないの。だから、あなた達2人には私の運命の人を代わりに見つけてきて欲しいの!」
僕とスカイは固まる。
「こ、好みのタイプは?」
「私と一緒に泳いでくれる人!」
「相手に求める事は?」
「差別しない事!」
「そんな人どうやって見つければいいんです?」
「直感で!」
「…僕らに探させる気、本当にあります?」
「あるよ!」
僕は目の前で思いっきりため息をつく。
「そんな条件、ナルマさん自身が探してもそうそう見つからないですよ。流石に無理です。」
「ええー!?お願いだよ〜!」
「じゃあ何かしら妥協してくださいよー、私たちはどんな人でも見つけられるプロじゃないんですから。」
「うう〜ん…じゃあ分かった!海が好きな人!それだけで良いから!その代わり何人か見つけて来て!」
スカイと顔を見合わせ、「それならまあ…」と結論を出す。
「ありがと〜!じゃあ私、しばらくこの辺りの海に居るから!あなた達が呼んだらすぐに来るから!お願い、よろしくねー!」
感謝と共に指輪を渡される。そのまま彼女は水平線の向こうへと泳いでいってしまった。
「ね、思い出したでしょ!私のお願い、聞いてよー!」
「…ナルマさん、私たちが、連れて行った人たちに、どんな反応したか…覚えてます?」
そう問われ、ナルマはばつの悪そうな顔をする。
「えーと…帰らせちゃった。なんか私が人魚って事、受け入れてくれなさそうだったし…相性も良くなさそうだったし…」
「あなたが何人振ったか、覚えてます?」
「…5人くらい?」
「10人、ですよ?ナルマさん。私たちが頑張って探した人を、10人振ったんです、よ?それでまだ、お願いするのは…流石に酷いと思いません?」
「うう…でも…」
「どうせ私たちが、名前を考えても、またなんやかんや理由を付けて、断るんじゃないですか?」
「…ごめん。」
ナルマはスカイの言葉が効いたようで、しゅん…としている。
辺りは波音のみの静寂に包まれる。
僕はその長時間の静けさに耐え切れず、スカイに耳打ちする。
「…スカイ、流石に可哀想じゃない?今回はちゃんと反省してそうだしさ。」
「…トラジは甘いんですよ、ナルマさんの彼氏を探す時も、そうだったじゃないですか。途中で私が、もうやめようって言っても、可哀想だからって、あなたは中々やめなかったじゃないですか…」
小声で返される。
確か…3人目が断られた辺りからスカイはやめようとしていた覚えがある。
あの時は僕が付き合わせてしまったが…確かに甘すぎたかもしれない。
「じゃあ今回は断れないように条件を付けて、名前を一つだけ考えてあげない?」
考えた条件を伝える。
スカイは『まあそれなら…』と納得してくれた。
「じゃあナルマ、名前を考えるっていうのは協力するよ。」
「ほ、本当に!?ありがとう、トラジ!」
ナルマは先ほどとはうってかわって、顔が輝き始める。
「ただし、条件があるんだ。僕らは名前を一つしか考えない。前みたいに何個も断られるとこっちも嫌だからね。」
ナルマは「そのくらいなら…」と了承したような顔をする。
しかし、条件はこれだけではない。
「もう一つ、僕らが考えた名前を拒否した場合です、その場合は僕らにもう二度とお願いをしないでください。流石に付き合い切れません。」
「え、え゛ぇー!!?そ、そしたら、もしその名前がダメだったらどうすれば…」
その言葉をスカイは遮る。
「ナルマさん…そういう所ですよ。聞く前から、ダメかもなんて考えるの、すごい失礼だと思います。」
「うぐ…ごめん…分かった。ありがとう、それでお願い!」
ナルマはその条件を呑む。
「よし、じゃあ僕らの方で一つ名前を考えるから少し待ってて。ちゃんと本気で考えるから。」
「は、はい!」
僕は振り向いてスカイと相談する。名前に出来るだけ気持ちを込められるよう、偉人の名前や神の名前、花の名前など様々なモチーフから名前を考えていく。
…十数分掛かっただろうか。僕とスカイの間で一つの案に決まる。
「ナルマさん、お待たせしました。これを断ったら、本当にもう頼みは聞きませんからね?」
「う、うん。大丈夫、聞かせて!」
「…【シェスタ】です。考えた名前はシェスタ。モチーフは流星から来ています。歴史の中で、大きな飢餓に国が襲われた時や大きな争いが起きた時。そんか大変な出来事が収まる前にその流星は現れたと言われています。」
ナルマは真剣に聴いている。
「その白い輝きは人々に希望を抱かせ、苦しい思いをする人々の大きな励ましになりました。また、実際に見た人の記録によれば、誰しももう一度見たいと考えるほど綺麗だったみたいです。だから、誰しもが魅了されるような綺麗さと多くの人の救いになる事を祈ってこの名前を思い付きました。どうですか?」
「うん、良いよ…凄く良い…とっても素敵な名前!」
ナルマは気に入ってくれたらしい。顔をさらに輝かせて喜んでいる。
「産まれたら絶対にその名前つけるから!」
「気に入ってもらえて良かったです。…ところでシェスタちゃんはいつ頃産まれる予定なんですか?あと…旦那さんに言わずに名前決めちゃって大丈夫でしたか?」
そういえば聞いていなかったと思い、いつ出産予定なのかを聞く。見た所お腹は膨らんでいないからまだまだ先だろう。
それにまだ旦那さんの事も聞いていないのでそれに関しても聞いてみる。
「うーん…当分先だと思うよ?まず旦那さん見つけなきゃだしね!だからそこは心配しなくて大丈夫!」
僕とスカイは目をぱちくりさせる。
理解が追いつかなかった。
まだ産まれていない子供の名前をパートナーと考えるならまだ分かる、よく聞く話ではあるからだ。
しかし…パートナーを見つける前に子供の名前を考える親など聞いた事がない。
「…僕ら、この先産まれるかすら分からない子供の名前を考えてたんですか?」
「もう二度と、お願いは聞きません…」
スカイは完全に呆れている。
「な、なんでよ!条件守ったのに!」
「存在しない子供の名前を一生懸命考えてたって知ってたら一つも考えませんでしたよ!せめて彼氏が出来てから相談しに来てください!」
スカイは怒る。まあ当然だろう。
いつか子供を見せてもらえる事を祈りつつ、僕らはナルマさんと別れた。
エルマリン諸島には大迷宮と呼ばれる巨大なダンジョンがある。
しかし、魔物と戦う訳だから当然怪我をする人も多い。
個人の回復魔法で治せる範囲なら良いが、そうでない場合も多い。
そんな怪我人の多くを受け入れ、世界でもトップクラスの治療を施すのがこのエルマリン中央病院だ。
「…よし、虫下しを1週間分処方しておきますので、朝昼晩それぞれの食後に飲んでください。もし寄生虫が3日経っても排出されない場合はすぐに来て下さいね。」
「あ、ありがとうございます!」
冒険者が診察室を出ていく。
「ふう…疲れたな…」
「お疲れ様です、先生。でも休憩はまだ先ですよ、もうひと頑張りです。」
仲の良い看護師が次の患者のカルテを渡してくる。
「…ん?この冒険者は…!?」
カルテの名前はスカイ。
この辺りでは珍しい水色の髪だったからよく覚えている。
確か…3年ほど前だっただろうか。パートナーだった青年と一緒に彼女は運び込まれた。
彼女の症状は認識機能障害。当時の様子ではまともな生活は送れそうになかったが、パートナーの彼は諦めず、故郷で治療をするために退院していったのだ。
まさか戻って来ていたとは…いや、それよりも…
「治った…のか?」
故郷に帰り、その思い出を辿り、少しずつ脳の機能を回復させる。
彼はその案を私に一生懸命語ってくれた。彼らはこの島の生まれではないし、このエルマリン諸島に帰って来たという事は…治ったとしか考えられない。
「次の方、どうぞ!」
自らの目で確認する為に患者を呼ぶ。
「失礼しまーす!」
元気な声で部屋に入って来たのは…やはりあの患者だった。
「お久しぶりです、先生。」
その隣には彼…トラジ君もいる。
「驚きましたよ、まさかお二人が戻って来ていたなんて…」
2人の様子は至って健康に見える。スカイさんの方に関しては後遺症を一切感じさせない。
「まあ私もだいぶ良くなりましたからねー…あ、ところで骨折の治療、お願いしてもいいですか?」
「はい、分かりました。」
今回スカイさんが訪れた理由は指の骨折で、魔力切れにより自力で治せなくなってしまったかららしい。
「では折れた指を見せてください…はい、そのままで。【大体の怪我を治す魔法】」
彼女の指に集中し、回復魔法を使う。骨折も酷くないし治るだろう。
指に水色の光が集まる。それはキラキラ光を放ちながら彼女を癒していく。
「どうですか?これで治ったはずです。」
スカイさんは指を曲げたり伸ばしたりする。
動きに問題なさそうだ。
「おお〜やっぱり病院だと早いですねー」
「そりゃあ医師ですから。逆に勉強しなくとも回復魔法を使える冒険者の方がおかしいんですよ。」
彼女のカルテに今回の事を書いておく。
もう治っているし、薬は必要ないだろう。
「では今日はこれで終わりです、お疲れ様でした。受付にこの紙を出してください。大丈夫だとは思いますが…万が一、指に違和感があったらすぐに来てください。」
「はーい!」
スカイさんは元気な挨拶をして部屋を出て行く。
「先生、ありがとうございました。」
トラジさんはそう言って部屋を出て行こうとするので、私は引き止めた。
「少し、聞いてもいいですか?」
「…何を?」
疑問は最初から決まっていた。
「彼女さんを…どうやって治したんですか?あの胞子を吸った後、あそこまで回復する例なんて私は聞いた事がない。どうか教えてもらえませんか?」
トラジは困ったように髪をかいた。
「そうは言っても…特別な事はしてないですからね。ただただ根気強く、彼女との思い出を辿って、色んな事を再現して…そしたらスカイは少しずつ思い出してくれて、あとは時間をかけてゆっくりと治ってくれた。それだけの話ですよ。」
「…そう、ですか。」
何か、画期的な治療法を見つけられるかもしれない。
そう思っていたが、そんな一筋縄では行かないようだ。
「トラジー?どうしたんです?早く行きましょうよー」
水色の髪の彼女が戻ってくる。これ以上引き止めるのは彼女さんに悪い。
「トラジさん、お話、ありがとうございました。」
「うん、何か参考になりそうならまた聞いてください。じゃあ、また怪我したら来ますねー」
2人は今度こそ部屋を出て行く。
「…先生、お2人の事…どう思います?」
「どう…と言われてもね。2人は奇跡としか言いようがないよ。まったく…」
質問に答え、ため息が出る。
【奇跡】、と私は言った。
しかし…そんなもので病気が治ってしまうのだったら…
「医者は…何のためにあるんだろうな…」
もちろん大多数の人にとって、医者が必要な事は分かっている。
ただ、彼らのように難病を自力で治されてしまうと思わずそう考えてしまうのだ。
「そんな事…良いじゃありませんか、私たちを必要な人がいてくれるんですから。それだけで良いじゃないですか。」
看護師の言葉を聞き、ゆっくりと頷く。
「そうだな…そうかもしれないな…」
そうひと段落した所で、次の患者を示すランプが光った。
「カルテ、持ってきてもらえる?」
「はーい。」
看護師は受付から送られてきたカルテを手渡す。
「名前は…トラジ?いや、まさか…」
扉がガラッ!という大きな音で開く。
「せ、先生!トラジが…トラジが階段から落っこちて意識無くなっちゃったんです!」
男を担いだ女性が扉の前に立っていた。
やっぱり、先程部屋を出て行ったはずの2人だった。
「…はあ。」
ため息ともつかない、微妙な吐息が口から出てきた。
「先生、良かったじゃないですか。私たちを必要とする人が来てくれましたよ。」
「私はこういう意味で言ったんじゃない…」
とりあえずスカイさんを落ち着かせてから、トラジ君の治療をする事にした。
「良かったですねー。頭打って気絶しただけで。」
「良くはないよ…まだめちゃくちゃ痛いし。」
氷袋で痛みを抑えつつ、病院の敷地から出る。
「とりあえず、今日はもう宿でゆっくりしよう…これ以上外に居るともっと良くない事になる気がする…」
「私は別に宿でも良いですけど…せっかくの時間が勿体なくないですか?まだ昼前ですよ?」
良いと言いつつ、彼女は少し嫌そうな顔をした。
やっぱり出かけたかったんだろう。
ここ最近はダンジョン続きで忙しかったし、あまり外食も出来ていない。
普段だったら絶対おでかけしていただろうが…流石に今日はそんな気分にはなれない。
てかマジに頭が痛い。
「ごめんね、スカイ。代わり…って訳でもないけど、また今度デートしよう。お出かけしたり、ご飯食べたりとかさ。」
「…分かりました。…今度っていうのはいつでも良いんですね?」
「うん、いつでも良いよ。」
「…本当ですね?」
僕は苦笑いする。
「本当だよ、絶対、いつまでも。」
彼女は返事にニコッと笑う。
「じゃあ、いつまでも…ずうっといっしょですからね!忘れないでくださいよ!」
スカイは足早に宿へと進む。
「ずうっと…かあ…」
たとえ彼女に何があっても、僕らはずっと、ずうっと離れない。
僕があの日に決めたこと。
こんな幸せな日がずっと続いてほしい。
いや、彼女さえいればずうっと続くだろう。
「ほら、トラジ!ご飯は作ってあげますから、急いでくださーい!」
「あいよー」
彼女の背を追いながら、そんな事を考えた。
マジですみませんでした。
こんだけ待たせた挙句、本筋との関係も薄い話なので重要度は本当に低いと思います。
早めに本編の更新準備するので許してほしいです。




