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散る紅葉舞う紅葉  作者: 鴇羽ほたる
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拾えないモノ

お久しぶりです。相変わらずのんびり不定期更新してます。最近、足捻りました。段差って怖いですね(´;ω;`)

 トントントンと歩いて行く。「さよなら」を伝えに行くために。「短い間でしたが、お世話になりました。」って、私の永久の想いをここへ置いていくために。


 ケン坊の話を聞いてから時折思い出すようになった。私が私じゃなくて、彼が彼じゃなかった頃の記憶を。だから分からなくなる。私は私で、でも、遠い昔も私…。私はあの時の残滓だから、この気持ちもきっと、あの妖のモノ。だから置いてくの。最後の最期で、まだ生きたいなんて願わないようにするために。もう悲劇を繰り返さないために。彼を…もう巻き込まないために。


 恐怖も悲しみも寂しさも全て見えないフリをして足を進める。考え事をしながら歩いていたせいだろうか。気づけなかったのだ。


 ふぃと風が吹いて目線を上げれば黒ずくめの人が迫っていた。足元には私の力のせいで死ねない、床に刀で釘刺しにされた黒と真白が悔しそうな表情を浮かべ、こちらへ必死に手を伸ばしていた。


 助けなきゃ。


 そう思うのに動けない。間に合わない。何もかも自分のせいだ。


 あっという間に私は口に布を挟まれ、縄で巻かれ、俵のように肩に担がれてしまった。



 ***



 薄暗い、あの地下みたいな冷たい所へ乱雑に投げ捨てられた。打ちつけた背中が痛い。縄が食い込んで苦しい。


 ゆらりと、私の上に影が落ち、扇の柄で頬を殴られた。呻き声が挟まれた布から漏れただけだった。


「ははは。こうして見ると無様だな。村の人間が怯える化け物だというのに、芋虫のようで滑稽だ。所詮は女子。大した力も無いようだな。」


 誰…だろう?聞いたことのない声だ。ケン坊は、(わたし)の身体は知っているのだろうか?


「うむ。あの愚か者が好みそうな容姿だな。悪くはない。妾にするもまた一興だが、生憎化け物を傍に置く趣味はないのでな。ああ、悍ましい悍ましい。触れるだけで穢れそうだな。」


 知ってる。似たような仕打ちを昔、私は…。違う。今の私は受けたことがない。じゃあ、なんで…?そうだ。あの時、(わたし)は…。


「まあ良い。喜べ。此度新しく刀鍛冶に打たせた刀が此処にある。化け物よ、試し斬りの栄誉を味わうが良い。知っておるぞ。一度付けられた傷は他人には治せないのだったか?故に沢山この刀の味をじっくり愉しめるような斬り方をしてやろう。」


 多分この人は私達のことをきちんと知らない。だから試してみる価値はある。今は半分になっているから、どう配分されてるか分からないけど。でもケン坊が身体で、私が心なら、きっと。


「そうだな。まずは腕を斬り落としてみるか?いや、逃げられぬよう足が先だろうなぁ。」


 しっかりと目を合わせて口の中で唱えた。


『霊魂よ、ひと時で良い。その肉体から離れよ。』


 カシャリ、と手から鈍色が転げ落ち、芯など初めからなかったかのようにぐしゃり、と屑折れるヒト。ボワリと浮かぶ白い魂はどうやら状況を理解できず混乱しているようだ。


 神殿の創設時、首と胴体を別々の場所に封印された少女が妖と同じ力を持っていた、なんて伝承は残っていない。だから多分その子は巻き込まれてしまったニンゲンだ。だって、私には記憶がある。人々が恐れた力を持っている。逃れようのない、逃れる必要のない、私の終わり。


 死にたくない?もっと生きていたい?ダメだよ。我儘はもうダメなんだよ…。


 だって………。もう二度と冷たくなったあの人の側で泣きたくなんか、ないもの。


 正しい過去が隠されているなら、わざわざ広めなくていい。みんなが幸せなまま生きられるように、私は、私は…。

まだまだ続きます。

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