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翡翠の王冠  作者: 電動
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第4話 -冥界-


 ………冥界の端

 何故だかわからないがマントの男に腹を裂かれて中を覗かれた、声は出ない…何かの魔法をかけられているのだろうか?中は見えないが裂け目から緑色の光が見える、キレイだ。

 男は何も言わずに腹を閉じた、わけがわからない…傷は直ぐに閉じて無くなった、わけがわからない…

 いや、そういえばアーサーが言っていた気がする、「冥界には死という概念が存在しない」だったかな?つまり死なないし死ねないという事だ。


 「………!!!」


 (すまん、ちょっと確かめたい事があってな)


 こいつ、直接脳内に!?

 テレパスという魔法だ、使い方を知らないから返せないが、今何を言いたいかわからない奴なんていないだろう。

 


 (いいか?まずはモルドレットの所まで行く、そこで槍を手に入れて、それからカワヒメを探す)


 いや良くない、今何をしたのか説明しろ畜生。


 (さぁ行くぞ)


 冥界…真っ暗なイメージしか無かったが全く違った

 謎の四角い建物があちこちに建っていて音はまったくしない、だがどこかに暖かい物を感じる。


 男が歩き出した

 不信感しかないが着いていくしかない。


 四角い建物ばかりで他は何もない、よく見たら鉄格子の扉がついていて、中に誰かいる。

 近づいて覗いて見ようとしたら男に止められた…


 (やめておけ)


 それでも気になる…

 歩いて行く途中にある建物のチラチラと見ていたがやはりどれも人のような者が座り込んでいたり、壁にもたれ掛かったり、祈りを捧げている者もいた

 そう、ここはまるで監獄だ

 アーサーが言っていた『監守』という奴らに捕まってしまったら恐らくこの中に閉じ込められるのだろう、なんとなくわかった。


 そして1つの建物の前で止まった、ここだけ中から光がこぼれている…男は魔法で鍵をこじ開けると中に入った、続いて中に入ると、そこには白銀の鱗の様な鎧を纏った騎士風の男が1人、鎖に繋がれて壁にもたれ掛かって座っている。




 ………その頃外では

 

 「あ、そうだ」


 マーリンが指をパチンと鳴らすと空中に棺の様なものが出現し、ドスンと床に落ちた。


 「なんだそりゃ、死人でも入ってるのか?」


 「う~ん、惜しい、これはまぁ…保険ってやつかな?」


 また自分だけわかったような事を言っている

 二人が扉に入って1時間ほど経ったがまだ出てくる気配はない。


 「時にアルトリウス、三国祭の件はどうなったんだい?」


 三国祭…アヴァロン大陸にある3つの国が年に1度、一同にかいし競う、武の祭典

 遥か昔から、戦争を何度も繰り返してきた三国だが、神竜事件をきっかけに、遂に友好的な同盟を結んだ、これを三国同盟という。


 「わからん、まだ調査中だ」


 なにやら問題が発生しているようだがそれはまた後の話である。





 ………冥界


 (客とは珍しい…お前、見るに死んでここに来たわけでは無いようだが?)


 (モルドレット、槍はどこだ?)


 会話が聞こえてくる、聞こえるようにしているのだろうか?


 (やはりそれか…なるほど、これの子を滅するために槍が必要になったといったところか)


 (そういう事だ)


 モルドレットはニヤリと笑った。


 (残念ながら槍は今神竜と共に俺の中にある、だが俺から槍を無理やり引き抜けば槍は手にはいるが神竜が復活するぞ?)


 (どういう事だ?)


 (ふっ、アルトリウスは致命的なミスをおかした…ミニアドは竜を殺す武器ではなかったのだ)


 (………封印か)


 鼻で笑った

 どうやらこのくらいの音なら大丈夫のようだ。


 (だがお前と竜は冥界に落ちた、ここは人ならざる者の死後の世界であろう?)


 (竜は俺の魂に封印され、竜共々槍に貫かれた俺は死に、ここへ落ちた…俺はもう人ではなかったからな、簡単に言えば俺と竜は槍で共に串刺しになっている状態というわけだ)


 鱗の様な鎧は、実は鎧の様な鱗だったのだ

 彼は人ではない、竜と人の融合体…『竜人』といったところか、故に人が死後に行くとされている天界に昇るのではなく冥界に落ちたのだ

 では地獄はどこに有るのだろう?まぁ今はどうでもいいか。


 (お前の話を信じるのであれば、今はお前自身が竜殺し…いや、竜封印の槍『ロンゴミニアド』の力を有しているという事か?)


 (そういう事だ、正確にはミニアドは槍ではない、何でもない槍に力を宿したというだけだ)


 (……つまり卵を破壊することはできないというのだな?)


 (いや、竜の不死性は同じ竜には意味を成さない…つまり今の俺は封印も破壊も可能な状態にあるのさ)


 (何故そんな事がわかる?)


 (言っただろう?俺は今半分竜なのだ)


 ………こいつはつまり「自分をここから連れ出せ」と言っている、ヒスイにだってそのくらいわかった


 (……いいだろう、しかし向こうで少しでもおかしな真似をしたら…)


 (くくく…まぁ、貴様なら俺を再びここに押し戻して閉じ込めるくらいはできるだろうな)


 モルドレットはこの男の正体に気づいたようだ、そんなになの有る者なのだろうか


 男は右手で空を切った、すると鎖が切れて動けるようになった


 (出る前に寄る場所がある)


 ゆっくりと立ち上がり、ニヤリと笑った。


 (いいだろう、俺は出口をしらんからな)


 ………その後ヒスイの感覚を頼りに20分ほど歩いた、そしてついにその時はやってきた。


 !!!


 格子の向こうに緑色の髪をした美しい女性が1人…


 あぁ…長かった…

 男が近づいて行く…

 

 間違いない、あれは母さんだ…

 ヒスイも近づいて行きたかったが男の邪魔をしては行けないと思った………ん?なんでだ?おかしいだろ、見ず知らずの男が母さんに…まさか…


 (カワヒメ、迎えにきたよ)


 『カワヒメ』と呼ばれた女はゆっくりと顔を上げた


 「あぁ…やっときてくれたのね…あなた」


 !?

 しゃべった!?大丈夫なのかこれ!?


 「これは…マズイな」


 男もしゃべった。


 「あ、ごめんなさい!私ったらうっかり」


 微笑みあう二人…

 しかしどうなるんだろう?監守とやらは現れ…た!


 髑髏の面に黒い布を纏い、鎌をもったヤバそうな奴が猛スピードで迫ってくる、監守というか死神だった。


 「お、おい!どうするんだよ!」


 いつの間にかしゃべれるようになっていた。


 「あら?もしかしてあなた…ヒスイ?ヒスイなの?」


 「そうだ、俺たちの…」


 男はマントを脱ぎ捨て、金色に輝く剣を構えた

 あれは王の剣と同じ…エクスカリバー?


 「愛する息子さ!」


 彼は言った『息子』と、黄金の剣で監守を一刀両断しこちらを向いた。


 「やはりお前か、ゼロ」


 『ゼロ』ヒスイの父親の名前、15年前に失ったはずの両親が二人とも生きていた。


 「二人とも生きててよかった…だが子供だった俺を15年もほったらかしにしてどういう事か説明してもらうぞ! 」


 「まぁ!そんな強い言葉をつかってはいけません!」


 「ははは、お前も戦いになると…」


 「なんです?」


 「いや、何でもないです」


 何となく記憶にある、うちでは父さんより母さんの方が怖かった


 「と、そんなことより」


 また監守が現れた、今度は100…いやもっといる?


 「とにかく母さんを早く出すんだ!その間俺達が食い止める!」


 ヒスイは空間から剣を取り出した、ローナイトのほとんどがこの魔法を使うにあたって、MARと呼ばれる腕輪型の補助具を使うのだが、彼はすでにこれをマスターしておりMARは必要ない。


 「モルドレット!あんたも手伝え!」


 しかしモルドレットは動かない


 「無理だな、見たところその扉は何重にも封印されているようだ、開けるのには少なくとも1時間はかかるだろう…お前もなかなかやるようだが、あの死神はお前より何十倍も強い、まぁ一対一なら余裕だが…あの数は流石に無茶だ」


 「なんでそんな事わかるんだよ、やってみなきゃわかんねぇだろうが!」


 「わかるんだよ、竜の目には色々なものが映るらしい」


 もう監守が目の前まで迫っている。


 「その通り、ヒスイ、本当にすまなかったな!なんつうか…会わせる顔がなかったっていうか…とにかく母さんの事は任せろ!モルドレット!ヒスイを連れて扉へ走れ!」


 ゼロがペンダントの様なものをモルドレットに投げ渡した。


 「そいつは『迷わずの石』っつうアーティファクト(遺物)だ!そいつが指し示す方向へ走れ!」


 ゼロは再び剣を構える。


 「そんな!せっかく会えたのに!」


 「大丈夫だ、すぐもどるさ…さあもう行け」


 カワヒメがニッコリ笑って手を振っている、流石に緊張感無さすぎだが何故か気持ちが楽になった。

 この二人は大丈夫に違いない…と。


 モルドレットが何も言わずにヒスイの手を引っ張って走り出した

 ちらりと振り替えると監守達を次々と凪ぎ払い、とても嬉しそうに戦う父の姿があった。

 それを見て横で母が「がんばれ~」と応援している

 そうだ、この二人は大丈夫に違いない…

 

 ヒスイはもう振り返らなかった、モルドレットの手を振り払い彼の後を追って走った、そしてとうとう扉が見えてきたところで再び監守が大量に追ってきた。

 ゼロがしくじったとは思わない、恐らく奴らは冥界全体にいるのだろう。


 よくあるシーンだ、追い付かれるギリギリで扉を開け、飛び込んだ…


 

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