第10話 獣車で出発
ラウンジで、朝食を食べて一段落すると、ミツユスキーが話しかけてきた。
「そういえばご主人様、昨日からギルド施設の入り口で、豪華な獣車を引いたケンタウロスが、黒服をきた魔法使いを連れたご主人様をお探しのようなのですが、もしかしてご主人様のお知り合いですか?」
俺は、テーブルを叩いて立ち上がった。思い出した。ケンタ君の事を。色々なことがありすぎて、すっかり忘れていた。
俺は、ミツユスキーを連れて、ギルド施設の外に出た。すると、白と黒のツートンカラーに彩られたゴシックで美しいな獣車を引いた、ケンタ君がそこにいた。
俺は、申し訳なさそうにケンタ君に話しかけた。
「ケンタ君! まさか、あれからずっと待ってたのか?」
「あ、ご主人様~! よかった、こちらにまだ滞在してたんですねー! すぐ戻ってくるはずだったんですけど、獣車を倉庫から出すのに時間かかっちゃったんでーす」
「ああ、別にいいよ。俺だって、お前のことを忘れて一泊しちゃったし。……っていうか、これをわざわざ持ってきてくれたのか?」そう言って、豪華な獣車を指差した。
「もちろんでーす。乗り心地は快適、デザインも逸品でーす!」
「なんて気が利くんだケンタ君! 依頼を受けて仲間も増えたこのタイミングで、こんな獣車を用意してくれた君は最高のアッシーだよ!」
俺なりに、ケンタ君を褒めちぎる。
「アッシーだなんて、素敵な称号をありがとうございまーす!」
(いや、称号じゃないんだが……)
ミツユスキーが、獣車を見て、驚く。
「さすがはご主人様です。すでにこんな素晴らしい足を用意なさっていたのですね。とてもすばらしいです」ミツユスキーは、獣車を絶賛していた。
「まあね!」俺は、自慢するように、どや顔で喜んだ。
獣車に見入っていると、メイデンとファリスがギルド施設から出てきた。
「タカシ様、この獣車は」メイデンは、眠い目を擦りながら獣車に触れ、感激している。
「これ、主様の獣車っスか!」ファリスは、やつれた様子だった。メイデンに関節技を極められていたのだ。無理もない。
「俺たちの乗る獣車だ! それとケンタ君だ」
「よろしくで~す!」
ケンタ君を新しい仲間に紹介する。各々、挨拶をかわした俺たちは、任務への出発の準備をし、昼頃、ギルドを出発した。
ドラゴンの生息地の山脈付近に、ミツユスキーの実家があるそうだ。なので、そこで補給を兼ねて休憩する予定だ。
受けた任務をもう一度確認する。ドラゴンを倒し、シッポを剥ぎ取って近くの渓谷に住む賢者に渡し、難問を解いて薬を調合してもらう。それをミツユスキーの家に届けて任務は達成だ。
賢者ソエルの難問だが、これの回答に失敗した場合、問題の内容は記憶から消されるらしい。問題の内容がばら撒かれないようにする為の措置らしいが、今回は、俺がいるかぎり失敗の心配はない。
なぜなら、最終手段の『仲間銃』があるからだ。いざという時は、これで何とかするつもりだ。その時は、メイデンとファリスに、援護をしてもらう予定だ。
仲間銃の残弾数だが、残りは3発だ。できれば、国王を撃つために2発は用意しておきたい。ファリスの時のようなイレギュラーがあるかもしれない。
それと、指定ドラゴンの尾という素材の調達。これは、依頼を受けた時に知らされたものだが、リザードドラゴンの尾のことらしい。詳細は不明だ。
「ミツユスキー、ドラゴンって強いのか?」ミツユスキーに質問してみる。
「今回討伐するのは、『グランドドラゴン』の亜種、『リザードドラゴン』です。単体なら苦戦は無いと思いますが、早く倒さないと仲間を呼ぶ習性がありまして……」
「増えないうちに倒せって事か……」
「そうなります」
ドラゴンの大まかな内容をミツユスキーから聞く事が出来て、俺は安心した。ついでに、リザードドラゴン相手に、霊剣ファントムの試し切りもしておきたいところだ。
「なあに、増えたらあっしが切り刻んでやるっスよ」
「タカシ様に、怪我はさせません!」
メイデンとファリスは、いつも以上に気合が乗っていた。よほど戦うのが好きなのだろう。今の俺には、そんな2人が、とても心強かった。
しばらく、そうこうする内に、ミツユスキーの実家に辿り着いた。




