00:プロローグ
2015年。史上最悪の大量殺戮事件が日本で発生した。
場所は神奈川県横浜市の中学校。犯人はその学校に在籍してる女子生徒だった。
―――平和と言う言葉に夢を馳せる塵屑を一掃する―――
それが犯人の彼女、神崎燐火の最初で最後の犯行声明だった。
何を思い、何を目的に動いていたのか。この事件に一区切りついた段階でも、謎のままだった。
残ったのは、校舎内に散らばる無数の肉片と血液と骨。そしてその遺族たちの果てしない怒りだった。
収束することのない怒りと憎しみは、ある者を死に追いやり、ある者の精神を破壊し人を殺させた。
―――だが、それを引き起こした原因となる物は。
―――それはお前らなんだよ。
神崎燐火はこの事件がある程度収束した後、その遺族らを壊滅させることを目標として定めていたらしい。燐火の仮住まいからは計画書が出てきて、それを見た警察官たちを驚愕させ、震え上がらせた。
―――そう、これはまだ序の口なんだよ。
―――お前らが今まで生きてきたことを、この世界に生まれてきたことを、後悔させてやる。
銃声と爆発音と悲鳴と怒号と呻き声と叫び声と血が飛散する音と人間を斬る音とサイレンの音と。
学校内はそんな音だけで崩壊していく。平和の国と呼ばれたこの日本の中で、何かが崩れる音がする。
―――平和は雑魚を強がらせる。
―――だから殺す。それ以外に何の理由がある。
何百人と言う人間が。未来を担うであろう子どもたちと、教師という貴重な人材、そして国を護る日本の警官たちと自衛隊員たちが。
全てが、喰らい尽くされた。あの狂気とも言える少女に。
―――笑わすなよ。
―――未来を担うだと?殺しも出来ないようなただの雑魚たちが?
―――貴重な人材?普段はあれだけ人を馬鹿にしておいていざとなったら命乞いするような屑が?
―――国を護る?あんな平和ボケした連中が?
―――お前らは馬鹿か。お前らの眼は節穴か?お前らの脳は腐っているのか?
この事件のきっかけは、本当に些細なことだった。本当なら、神崎燐火と言う人間は自殺する。そう誰もが思っていた。
学校の生徒たちが、教師たちが、近所の人たちが、親たちが。
―――お前らは殺す。
―――もう一度言う。お前たちは殺す。
―――邪魔者も殺す。
―――もう一度言う。邪魔者も殺す。
そうして、あの日が来た。
平和への宣戦布告。その火蓋が、校舎内での最初の銃声だった。
―――平和への宣戦布告か。
―――いい名前だ。
始まりあるものには必ず終わりがある。その終わりが、人類の滅亡でありますように。
そう願った少女、神崎燐火の悲しい物語である。