第十八話:七皇の陰謀
プリシア王国の 大聖堂から 響き渡る 鐘の音が、王都に 新たな 一日の 始まりを 告げた。
しかし、「人類の盾」と 称される この国家の 平穏で 繁栄した 表向きの 姿とは 裏腹に、ドーラ城の 最も 高い 塔の 頂は、重苦しい 陰鬱な 空気に 包まれていた。
太陽の 光が 決して 届かない、最高機密の 会議室。そこには、大理石の 椅子が 七つ、完全な 円を 描くように 並べられている。 こここそが、暗闇から プリシアの すべてを 支配する 絶対的な 権力者たち――
『七皇』の 集う 場所であった。
「……向こうの世界に 送り込んだ 連絡員が、完全に 消息を 絶った」
沈黙を 破り、低く 濁った 声が 響く。 声の 主は、聖騎士団 総長・レオドリス。彼は 拳を 固く 握りしめ、普段の 冷静な 面持ちの 裏に 隠された 怒りを 滲ませていた。
「我々が 遣わした 守護天使は 消滅させられた ようだ。あの世界で……『聖剣』の 魔力が 覚醒した」
「無能が」 逆立った 銀髪に、カミソリのように 鋭い 瞳を した 女が、蔑むような 笑みを 浮かべた。
「魔王を 侮りすぎなのだ。いくら 転生し、向こうの世界で 人間などという 卑小な 存在として 生きていようとも、万物を 統べる 者の 本質が そう 簡単に 潰える わけが なかろう」
「聖剣は 神の 権力の 象徴。プリシアの 民に 崇拝と 畏怖を 植え付け続けるための 道具じゃて」 柔和な 姿とは 裏腹に、その 瞳に どす黒い 計算を ぎらつかせた 老人が 言葉を 続ける。
「そんな 至高の 武器を、魔王の 手に 渡したままに しておく わけには いかんな」
七皇の 中心に 座る、最も 強大な 権力を持つ 男が、大理石の 机を 指先で 軽く 叩いた。 その 小さな 音だけで、部屋の 雑音は 一瞬にして 掻き消える。
「魔王は 聖剣を 手に したが、同時に 現代世界の『ルール』に 縛られている。周囲の 秩序を 崩壊させぬ 限り、奴も 気軽に 全力を 出すことは できまい」 首領の 冷徹な 声が 響き渡る。 「通常の 軍隊で 届かぬというのなら、我らの『切り札』を 使うまでだ」
残りの メンバーの 視線が、一斉に 背後の 帳へと 注がれた。
「――『女勇者』を 召集せよ」
闇の 奥から、一人の 少女が 姿を 現した。 なびく 長い 黒髪。会議室の 僅かな 光を 鈍く 弾く 漆黒の 鎧。そして 何より、揺るぎない 正義感を 宿した 強い 瞳。 彼女は 片膝を つき、恭しく 命を 待った。
「プリシアの 女勇者よ」 七皇の 首領が 厳かに告げる。
「お前の 今回の 任務は、国境の 防衛ではない。世界の 境界を 超えることだ。現代世界――『ササキ・ゼルト』という 名を 騙り、潜伏している 魔王ゼルドの 元へ 向かえ。いかなる手段を使っても、聖剣を 奪還し、奴を 討ち果たすのだ」
「御意。プリシアの 栄光のため、聖剣は 必ずや 持ち帰ります」 女勇者は 凛とした、しかし 鋼のような 決意を 秘めた 声で 応じた。
七皇の 唇に、一斉に 邪悪な 笑みが 浮かぶ。 女勇者の 足元で 古代の 魔法陣が 輝きを 放ち、次元を 超える 転移の 準備を 始めた。
――そして、もう一つの 世界。 ササキ・ゼルトはまだ 知る由も なかった。 アニメに 囲まれた 平穏な休日が、すぐ そこまで 迫る 嵐によって 終わりを 告げようと していることを。
最後までお読みいただきありがとうございます!
もし気になった点や「ここを直した方がいい」という箇所がございましたら、ぜひご意見をいただけますと嬉しいです。皆様のフィードバックをお待ちしております。




