vol.28(2)
あの時の二人の空気・空間をなぞり楽しみながら、
カンナの腰に腕を回し、暇を持て余しつつうらうら、脚ぷらぷらのゆうな・・
「まだぁ・・カンナぁ。もうおしりが痛~い」
勝手言うなよと、額に汗を浮かべがら、カンナはハンドルの指を弾いた。
チリンチリン・・チリンチリンチリン・・
どこからともなく潮騒を運ぶ潮風に、アクセントをつける自転車のベルが鳴る。
海岸に沿った堤防を下ると、二人乗りの自転車は砂にタイヤが取られて、
ぐらぐら横倒しになってしまう。
その拍子に、疲れ切ったカンナはマラソンのゴールのように浜に投げ出され、
かたや余裕なゆうなはカンナを見捨てて自転車を飛び降りて、
カンナそっちのけで靴と靴下脱い脱ぎ、足裏で砂浜を踏み鳴らした。
「海だあっ、カンナぁ。やっぱ、ふたりだけでしょお!」
カンナは砂に寝そべって、空を仰ぎながら辺りを見回すと、
確かに二人きりの貸切プライベートビーチだった。
「海行こうよぉ。連れてってぇ」と、少女のようにおどけ、せがんで見せるゆうな。
ゆうなの声に弾かれるようにカンナも裸足になり、ジーンズをロールアップにして、
意気揚々と彼女の手を引いた。
波打ち際の波光がきらめき、ゆうなの瞳をまぶしく揺らす。
波長に合わせて行ったり来たり、手を引く側のカンナが、ゆうなに導かれリードされる。
嬉々とはしゃぎ遊び、寄せる波の引き際にギュッと握り返してくる彼女の手につられて、
カンナの身も心もはしゃぎ出す。
夏が去ってしまった紺碧の海
凪の向こうの水平線に浮かんだ季節外れの入道雲
そして今、波間にふたりだけとなった小舟がプカプカ揺蕩っている。
偶然に導かれて出会ったふたり
でも偶然と偶然がしっかりと結びつき、必然となる関係
それだけに壊れやすく、いつ消えてもおかしくない蜃気楼
ふたりだけのオアシスを、しばしそっとしておいてあげようか。




