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カンナ&ゆうな  作者: Toy
21/48

vol.22

いつもベンチに座ると、いつものように、ゆうなはいつもと同じ一日を始めた。

膝を揃えて、その上に手のひらを重ねておく。

身体の芯を意識して、軽くべンチの背もたれに身を傾け、ゆっくりと深呼吸。

森の粒子が肺を通して、ゆうなの身体中に手を差し伸べて染み渡たる。

目を閉じて、朝光を瞼の裏に感じると入るスイッチ

ゆうなの隅々まで張り出した森の触手が、彼女の持つ全ての感覚を中央に引き寄せる。

それが胸のあたりで、まん丸くなる

ゆうなは、それをコントロールできるすべを得ていた。

こころ

でも、ホントはまん丸に思うだけで、形は知らない。

感じるだけで、直視できない・・

そう、それは、まるで小さな太陽

そうなると、ゆうなは心のプラグを森にコネクトできた。

電子が原子を飛び出し解放されるように


ゆうなはその存在が丘の上に現われた時から感じていた。

一度に見た影、ちょうど一週間前と同じ気配

振り向かなくても、映像となって、彼女の心はそれを捉えていた。

ゆうなの心にたぐり寄せられるように近づいてくる男の子

彼の意識がだんだん自分にフォーカスしてくるのがよくわかった。

ゆうなの世界に断りもなく踏み入れてくる存在

今までにない異物感に、意外にも拒否反応を感じなかったのが意外だった。


ゆうなはとってもコーヒーが好きだった。

夏でもホット

ブラックはにがくて苦手、だから角砂糖ひとつを落とし、少しのミルクでかき混ぜる。

すると砂糖はきらめきながら、カップの底で形を崩し、すっとコーヒーに溶け込んでいく。

ゆうなは、その少年がちょうど角砂糖のような気がして、ほろ苦い大好きな香りが

鼻先をくすぐられるような好感を味わっていた。


でもその少年がべンチの後ろの大樹のそばまで来たとき、人の持つ気配とかわり、

思わずかんなは目を見開いてしまう。


その瞬間、同じように夢から現実に引き戻されるような感覚のもうひとり

そう・・カンナ


カンナの存在感を背中で味わうゆうな

顔も見ないゆうなの存在感に魅せられるカンナ

意識しながらもまだ振り向かないゆうな

意識しながらもまだ声をかけないカンナ

時が刻むを止めたしばしの空間

なら、厳密にはまだ出会っていないカンナとゆうな

この微妙な距離感がふたりの始まりだった。

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