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そして布は幼女を護る  作者: モッチー
第1章「受け継がれちゃう伝説」
22/209

あれれー?

 過去ばかり見ていてもなにも変わらない。前を向いて進まなければ。

 という結論に至ったところで少し落ち着いた。

 しかし幼女神様にも困ったものだ。

 なにかあった時に責任なんて取れないし、あまり俺以外の人には無闇に称号を付けないよう言っておかなかなければな。

 俺ならいつでも受け入れているので存分にやってくれて構わないが。




 その後も何度かミラちゃんだけで戦闘を繰り返し、本人が慣れてきたこともあってか3階層において安定した勝利を収められると確信したところで4階層へと降りた。

 このダンジョンの現在のモンスター分布情報によると、3階と4階に大きな変化はないそうなので腕試しを中断し、一気に突破して本命の5階へと向かう。

 ここまで来たら狙いはひとつだ。

 俺としても幼女神様のお告げに従って早くレベル10にしておきたいので、さっさと探して次々に暗殺スライムを狩って行くことにする。

 みんなも異論はないようだ。


 結果としては特に問題もなかったが、8匹を討伐した時点で終了となった。

 というのも結界を展開するのに必要なMPが足りなくなったのと、この階層にいる暗殺スライムをすべて倒してしまったからだ。これでは本日のスライム狩りは諦めざるを得なかった。

 新しいモンスターが沸くまで時間がかかるようなので、次回まで最低でも丸1日は待つ必要があるという。

 普通に攻略している分には厄介な早さだけど、こういう場合には随分と遅く感じてしまうな。

 そんなわけで、俺たちは元来た道を引き返して地上へと向かう。

 明日までお預けだ。


 でも目的は達成できたから良かったよ。


 おめでとー。


 最後の8匹目を倒した時、俺のレベルはようやく10に到達していた。

 ギリギリな感じだけど今日中にここまで上げられたのは僥倖と言えるだろう。

 これでMP不足を解消できる。


 では幼女神様、お約束のものを。


 じゃあ、すきるを、みてねー。


 おや、新しいスキルが出現したのかな?



【念話・上位】(6)(念話)

 イメージする映像を相手に送れる。



 いつの間にか新しい念話が出ていた。

 前回取得した【念話】で終わりかと思っていたけど、どうやら上位まであったようだ。たしかに下位もあったからな。出現条件はレベルだったのだろう。

 説明文からすると言葉だけではなく想像した絵なんかを送れるようだけど、特にこれといった使い道が思いつかない。

 それで、このスキルを取得すればいいのかな。SPは7あるから足りるけど。


 そっちじゃなくて、もっと、したー。


 言われた通りにスキル一覧をスクロールさせて行く。

 ついでに現段階で取得可能なスキルを確認しておこう。



【念話・上位】(6)(念話)

 イメージする映像を相手に送れる。


【防護結界・大盾】(4)

 指定した方面に結界の盾を展開する。使用中はMPを消費する。


【看破】(6)

 隠蔽を無効化する。使用時にMPを消費する。


【援護攻撃】(2)

 装備者の攻撃時に追加攻撃を行う。威力は装備者の能力に依存する。


【属性付与】(2)

 装備者の武器に属性を付与する。付与を可能にする属性を選択。

   【属性付与・炎】 【属性付与・水】 【属性付与・陽】


【属性耐性】(2)

 属性耐性を得る。取得する属性を選択。

   【属性耐性・炎】 【属性耐性・風】 【属性耐性・月】


【MP譲渡】(1)

 装備者にMPを譲渡する。装備者より装備のMPが下回ると不可。


【修復】(1)

 欠損した部分を元通りに直す。修復度は使用するMPで変化する。


【洗浄】(1)

 装備と装備者の汚れを払い清潔にする。清潔度は使用するMPで変化する。


【自動洗浄】(2)

 自動的に装備と装備者を清潔にする。洗浄速度は遅い。


【治癒】(1)

 装備者の傷を癒す。治癒度は使用するMPで変化する。


【自動治癒】(2)

 自動的に装備者の傷を癒す。治癒速度は遅い。


【消費MP削減】(3)

 装備者が消費するMPを少なくする。削減効果は4分の1程度。


【近距離転移】(3)

 装備者を近い範囲で転移させる。距離は使用するMPで変化する。


【異常耐性】(2)

 異常耐性を得る。取得する異常を選択。

   【異常耐性・毒】 【異常耐性・呪】


【警報】(1)

 攻撃の意思を感知すると警報が鳴る。音・振動・報せる人物を設定可能。


【支配】(3)

 一定の条件下でのみ装備者を操る。支配中はMPを消費する。


【呪縛】(3)

 装備を外せなくする。解呪を受けた場合、MPを消費して抵抗可能。



・レベルアップボーナス


【HPアップ・小】

 HPが50上昇する。


【MPアップ・小】

 MPが50上昇する。


【獲得経験値アップ】

 相手のレベルが高いほど得られる経験値が増加する。


【獲得SPアップ】

 レベルアップ時のSPを倍にする。


【HPブースト・小】

 装備者のHPが50上昇する。


【MPブースト・小】

 装備者のMP50が上昇する。


【防御力ブースト・小】

 装備者の防御力が20上昇する。


【魔防力ブースト・小】

 装備者の魔防力が20上昇する。



 なんかあったぞい。


 すきなの、ふたつ、えらんでねー。


 なるほど、これなら一気にMPを50も増やせるのか。

 装備者であるミラちゃん向けのもあるけど、他に気になるのがあるから今回は見送らせて貰おう。


 ところで、これってどのくらいSPを使うか書いてないんだけど。


 つかわないよー。


 え、じゃあ無料ってことですか?


 ぼーなす、だからねー。


 それを二つも……ずいぶんと気前がいいな。


 より詳しく聞くと、レベルアップボーナスは取得しただけでは効果がなく、ステータスに表示されるボーナス枠にセットすることで初めて意味があるようだ。

 つまりスキルを買って、装備するって感じか。

 ただしセットできる数に限りがあるようなので、あまり多くのボーナスを取得しても持て余しそうだな。


 でも、じゆうに、つけはずして、へんこう、できるよー。


 かゆいところに手が届く親切設計ですな。


 いたれり、つくせりー。


 でも、お高いんでしょう?


 いまなら、おひとりさまに、ふたつを、ぷれぜんとー。


 これは買うっきゃない!


 というわけで【MP強化・小】と【獲得経験値アップ】を取得する。

 【獲得SPアップ】にしようか迷ったけど、この分だとレベル20とかでもボーナスが入りそうだからレベルアップを優先しておいた。

 レベルに上限があったら獲得できるSPも上限があるんじゃないか、という懸念はあったけど、それとなく幼女神様に質問したら、がんばれば、だいじょうぶ、だよー、とのことで安心した。

 この神様は隠し事が多いけどウソは言わないからな。そこは信用している。

 さっそくセットして、っと。



○ボーナス

 【MP強化・小】【獲得経験値アップ】



 で、現在のMPを確認すれば。



【クロシュ】

 MP:50/69



 ちゃんと50上がっていた。

 使い切っていたMPが増加した分だけ回復しているのが地味に嬉しい仕様だな。

 経験値のほうは確認する術がないから仕方ない。効果自体は出ているはずだからいずれ実感できるだろう。

 明日からのレベル上げに、また楽しみが増えた気分だ。


 ついでに新しいスキルを取得しようと思う。

 できれば貯めておくつもりだったんだけど、そうも言ってられない。

 実を言うと、気になっていたことがあるんだよね。

 さっきミラちゃんは3階層で慣れない剣を使っての戦闘を繰り返した。魔法を使用するのとは違い、激しく身体を動かす必要のある近接戦は著しく体温を上昇させただろう。当然、熱を冷ますために生理的な働きが活発になるわけで……。

 要するに相応の汗をかくのだ。

 薄っすらと浮かぶ汗はすぐに蒸発するけど、しかし俺という布がミラちゃんの全身を覆ってしまっているため内側に籠ってしまい、ちょっとしたサウナのように蒸れていたのだ。それが余計に熱を上げてしまう。

 ちなみに幸か不幸か、俺には匂いを感知する器官がないので、そこは割愛する。

 俺を脱げば解決するんだけど、あくまで防具である俺をダンジョン内で迂闊に外すわけにもいかない。

 解決策として時折、裾をまくってパタパタと換気するように涼んではいるけど、すでに流した汗は服を湿らせて肌に貼り付き、不快感をもたらしているはずだ。たまに俺もミラちゃんの肌に貼り付くけど不快ではないですね。俺は。


 とまあ、そんなわけで。

 暑さをどうこうするのは難しいけど、汗は解消できるんじゃないかと思うんだ。

 そう、これがあればね。



【自動洗浄】(2)

 自動的に装備と装備者を清潔にする。洗浄速度は遅い。



 清潔にするってことは汗も汚れとして洗い流してくれるはずだ。

 最初は【洗浄】にしようか迷ったけどMPを消費するし、別に急ぎでもないからこっちにしてみた。

 もっと言えば即座に効果が出てしまう【洗浄】だとミラちゃんに説明しなければならなくなる。年頃の女の子に向かって、汗をかいていたので綺麗にしておきましたよフヒヒ、などとデリカシーのないことは言えないからな。そういう意味でもゆっくりと、しかし確実に効果のある【自動洗浄】のほうが都合がよかった。

 などと言っても結局は不自然に清潔になる現象に気付くだろうから時間の問題だけど、こういうのは面と向かって言わないことが大切なのではないでしょうか。


 【スキル、自動洗浄を取得しました。】


 さて、どのくらいの速さでキレイキレイしてくれるのかな?

 ちょうどミラちゃんの腕が、汗で俺に張り付いているので集中して観察する。

 すると1分ほどで湿り気を帯びていた部分がサラサラとした肌触りになった気がした。

 思ったより早いと感じたけど、まだ深い部分まで洗浄し切ってはいないみたいだ。急ぐ時には使えないかな。

 いずれにせよ、これでミラちゃんも快適になるだろうし、俺も新品同然の美しさを保てるので良いこと尽くめである。



 気分上々で、歌でもひとつ歌いたいようなイイ気持ちでいると【察知】がモンスターの気配を報せてくれる。

 これまでもそうだが俺から注意を促すまでもなくノットが常に警戒しているので、いつものように戦闘態勢に入るとすぐにモンスター3体が通路の奥からぞろぞろと現れた。

 現在は4階層なので大して強いモンスターは出現しない。油断するつもりもないけど鎧袖一触という風に蹴散らせるだろう。

 背後からの奇襲だけは気を付けるように俺は意識をそちらへと向けようとする。

 だが、今回は少し様子が違った。


「……あ、あいつら、骸骨(ブラックボー)戦鬼(ンウォリア―)じゃないか!」

「えぇっ!? それって中級悪魔じゃないの!?」


 狼狽するノットとディアナに釣られて、立ちふさがる3体のモンスターを改めて観察してみる。

 全身が黒い骸骨といった感じで、頭部から角のような突起が複数生えている以外はよくゲームに登場するあの骸骨兵(スケルトン)の姿だ。

 俺が知っているそれはザコの代表的なモンスターの一角で、実際この世界でも骸骨兵(スケルトン)は弱い部類に入る不死族(アンデッド)だという。

 でも、そいつらはどこか違った。

 鋭い輝きを放つ剣を握り締め、しっかりとした足取りでこちらの動向を伺う様はとてもザコとは言い難く、ごつごつと角張った骨格は頑強さを表し、暗い眼窩に宿る紅い光点は底知れない業の雰囲気を発していた。

 それにノットとディアナだけではなく、レインやミラちゃんさえも中級悪魔と聞いて緊張に表情を強張らせている。


〈強いんですか?〉


 思わずド素人みたいな質問をしてしまったが構わないだろう。正しく、俺は素人なんだからな。それに俺が常識的な知識すら持ち合わせていないことは周知の事実だ。

 視線を逸らさないままノットが答えてくれる。


「あれは悪魔族(デーモン)でも中級に分類されているモンスターでな、そういうのを中級悪魔と呼ぶんだが……簡単に言えばこのダンジョンでは23階層での出現が確認されていたはずだ」


 つまり強敵である。

 間違っても4階層なんかに現れるはずがない。

 またモンスターの出現分布とやらに変動が起きたのだろうか。

 ……いや、今はそれよりも行動するべきだろう。


〈撤退したほうがいいのでは?〉

「可能ならそうしたいところだが……上層への階段はこの先にあるんだよ」


 となると、どうにかして突破しなければならないか。

 この場は退いて、時間を開けてから様子を見るという選択肢もあるけど、深層のモンスターが現れた以上この4階層はもはや未知の領域だ。より強力なモンスターと遭遇する可能性を考えれば、ここは多少の無茶を押してでも強行するべきだろう。

 ノットも同じ答えのようだが、問題はその手段か。


「理由はわからんが、どうやらあっちは待ち構えるつもりのようだ」


 そういえば黒い骸骨たちは一向に動こうとしないな。

 明らかにこちらへの敵対心を剥き出しにして威嚇しているのだが、まるで門番のように通路を塞いでいる。


「こちらとしては都合がいい。この隙に作戦を練るぞ」

「でもノット、中級悪魔と戦うのなんて初めてだよ」

「中級と言っても上級悪魔ほど理不尽な強さはない……はずだ。1体ずつなら勝てる……と思う」


 いつになく心許ない話だ。それだけ彼女も不安なのだろう。

 せめて、もう少し敵の情報があればいいんだけどな。


 しらべたら、いいじゃんー。


 モンスター図鑑を頂けるのならすぐにでも。


 ……あれれー?


 急にどこぞの死神みたいな声を出して、どうかしましたか?


 かんてい、もってるよねー?


 スキルの【鑑定】なら持っていますよ。


 つかわないのー?


 ……あ、そういうこと?


 人間に使えばステータスを覗き見れるなら、モンスター相手でも同じだろう。なんで気付かなかったんだ……。


 い、いや今まではさ、ほぼ瞬殺していたから使う機会がなかったんだよ。


 そーなのー?


 たぶん。きっと。


 そっかー。


 なんて言い訳してる場合じゃないな。

 奴らは攻撃を仕掛けて来ないみたいだし、さっさと【鑑定】しておこう。



骸骨(ブラックボー)戦鬼(ンウォリア―)


レベル:34

クラス:中級悪魔


 HP:400/400

 MP:0/0

攻撃力:84

防御力:53

魔法力:0

魔防力:16

???

???


○スキル

????



 こいつらレベル高っ!

 攻撃力もかなりのものだし、いくつか詳しいステータスが表示されないのは残念だけど、これだけの情報でも今のミラちゃんたちには強敵だとわかった。

 それが3体もいるとなれば、なかなか厄介だ。

 奴らに対抗するには……ちょっと、いやかなりズルいんだけど『アレ』を使わせて貰うとしようかな。


 ふむふむ、なるほど、ここが、こーなって、あーなると。

 

 よし、わかった。この戦い勝てるぞ。

 たしかに敵は強い。このまま突撃しても普通だったら間違いなく犠牲者が出ていただろうな。

 それが普通の冒険者だったらの話だが。


〈私に良い考えがあります〉


 襲いかかって来ないのをいいことに、俺はのんびりと作戦を伝え始める。

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[気になる点] 5話同様 10話で「魔法の属性は炎、雷、地、風、水、氷、月、陽の8種」とありますので 光→陽、闇→月 かなと。 違うものだったらごめんなさい。
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