Ep.01-12 朝とギルド
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考え事で眠れるはずがないと思っていたのに、気がつくと朝になっていた。飾り板の隙間から入ってきた冬の日差しが、石床に雪の結晶を描いている。
「……朝か」
何か、夢を見ていたような気がする。布団を被ったまま考えてみても、ヘルは全く思い出すことができなかった。外套を羽織り、部屋の中ではあるが今朝は軽く剣を振ってみることにした。足を肩幅に開き、鞘に入れたまま剣を振り下ろす。やはり元々剣を握っていたようで、そこからは自然と身体が動いていった。
「朝ご飯だよー」
ノックと共にそう言われ、軽く汗ばんだ額を拭って階下に降りていく。おはようございます、とフェリやアリアに挨拶をして、温かいミルクとパンの朝食を取った。
「今日はギルドに行くわ。そこでヘルを探す人がいないか確認して、いるようだったらその人たちと連絡を取る」
「そしたら、ヘルさんはヘルさんを知ってる人たちといられます!」
ギルドは世界各地に国を越えて存在し、剣や魔術で身を立てる人に様々な依頼を斡旋する互助組織だ。魔術師ギルド、傭兵ギルド、戦士ギルド、学者ギルドなどと分かれていた時期もあるが、今はまとめて一つのギルドとなっている。フェリとアリアが雪原で狼を倒していたのも、ギルドで依頼があったからだ。
「剣に国の紋章もなかったから、騎士よりも冒険者か傭兵の可能性が高いわ。冒険者はもちろん傭兵も身分証明としてギルドに登録してるのがほとんどだから、ギルドに行けば手がかりがあると見て大体間違いない」
淀みないフェリの言葉に、ヘルは寂しくもあり嬉しくもあり、また怖かった。手がかりが手に入るのは嬉しく、フェリやアリアと別れるかもしれないのは寂しく、誰も知る者がいなかったらと思うと怖い。
「そうそう、一応これをつけてね」
フェリはヘルに指輪を一つ、手渡した。黄色い石のついた、銀色の指輪だ。ヘルが触れると、ぴりぴりと指先が痺れる。
「あ、師匠それを渡すんですか?」
「面倒は減らして然るべきよ」
何かの魔術がかかっているのだろうか、と考えながら指輪をはめてみた。……ヘルには特に、何かが変わったようには思えない。自分にわからない形での効果があるか、指輪そのものに特別な意味のあるものなのだろうか。
「ああ、成功してるわね」
「ちゃんと黄色い目になってますね! でも師匠、結局つけるなら町に入る前からつけさせておいた方がよかったんじゃないですか?」
「……忘れてたのよ」
弟子の言葉にそっと目を逸らして、師匠は指輪について説明した。指輪には瞳の色を変える効果があるということ。指輪を外すと効果も消えること。瞳の色を隠す人はいないわけではないので、まだ変に思われないだろうということ。
「瞳の色を変えるだなんて、すごい指輪なんですね」
「押しつけられた貰い物だから、気にしなくていいわ」
細く小振りな、女性の指にはめられることを前提とした指輪をしげしげと眺める。考えてみれば、よく自分の指にはまったものだ。もしかしたら、それも魔術の効果なのかもしれない。
「それに、本当の瞳の色を知ってるか試すこともできます! 黒い瞳だっていうのは、ギルドの偉い人にしか通らない情報ですから」
アリアが胸を張って言った横で、フェリは「そろそろ出るわよ」と席を立った。女将に礼を言って、部屋から一応荷物を取って引き返す。
「ギルドって近いんです?」
「すぐです、ほら、あれ!」
宿屋から出て周囲を見回すヘルに、アリアが指を差して場所を教えた。
そこには、周囲より二回りほど大きい建物があった。
私生活も一段落つきましたし、年内には次をあげたいと思ってます。
話が動かないなあ……