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魔法文明論  作者: ゼリー
二章 純水と宝石と闘争の日々
31/37

25 ナサカさんとの対戦ですわよ

「隣いい?」

「おや、貴女が来るなんて珍しい」


 ナバナは意外な訪問者に目を丸くした。

そもそも最終順位戦と違い、この新人戦は一般公開していないのだが、彼女に禁止を突き付けても止めようがないので無駄なことだし。何より自分の心情に嘘は付けない。


「ちょっとね、・・・どう?」

「・・・まさかゲートを使うなんて聞いてないですよ」

「私もね、知らなかったよ?」

「・・・え?」

「しょうがないじゃん」

 何がしょうがないかわからないが…。

「どうするの?」

「どう、というと?」

「あの子の今後。考えてるんでしょ?」

「・・・ゲート使いなんてもう貴女しかいないのでは?」

「やだよ、だから学院に預けたのに」


 彼女の気まぐれは今に始まったことではない。


「ですよね。とりあえず気は勧まないですが“レイキ”に会わせてみようかと思っていたところで」

「ああなるほど。ちゃんと先生やってるんだね」

「すっかり板についてしまいましたね」

「あの頃はガツガツしていたからずっと学会にいるのかと思っていたよ」

「はは、もういい年ですから。それに上を見たらキリがないですから」


 そう、届かないと分かってしまった。分からされてしまった。

 その上で挑戦するという選択肢が自分にはどうしても芽生えなかったのだ。


「その割には鍛えてるよね?」

「わかりますか?」

「うん」


 そこをきちんと気付かれると嬉しくなってしまう。

「今日は最後まで?」

「ううん、弟子だけちょっとね」

「貴方がそこまで興味を持つなんて珍しい」

「初めての弟子だから」

「そうですか」


 ナバナはその言葉に羨ましいという嫉妬のような、孤独だった彼女に関わる人が出来て良かったような。

 そんな相反した気持ちが混ざり合って何とも言えない気持ちになった。



-----



 カガミもなんとか一回戦を勝ち抜いたようだった。

 相手は二年生だったのですごいなぁと思う。

 そして、いよいよマリの二回戦、ナサカとの因縁の対決だ。

「マリーがんばれー!」


 マリは手を上げて応える。


「上がってきたようだな」

「当然ですわ。貴方こそ褒めて差し上げますわ」


「はじめ!」


「見せてやろう、闘い方というものを!『舟』」


 地面から岩?土?でできた舟が浮かび上がる。

「見掛け倒しじゃないことを祈りますわ『水球』!」


 マリの水が舟に向かって飛ぶ。

「『水弾』」

 パシャッ!

 水が水に当たり、その場で弾ける。


「土使いかと思いきや、水も使えますの?」

「フッ、専門だ!見ていろ、来たれ!」


 ナサカが手を高く掲げ、そこに全身から魔力の光が集まる。

 そしておそらく魔道具だろう指輪が怪しく光り輝いた!


 ザバアアアアアアア!!


「なんですの?水!?」


 あっという間に足首辺りまで水がフィールド上に溜まる。

 時折ピチピチした魚が飛び出してくる。


「それは空間収納ですわね!」

「ご名答」

「しかも…」

 マリが水を舐める。

「塩辛いですわね…。つまり収納先は海ですわ!」

「フッ、だがここは結界で仕切られた空間。それが分かったところで有利にはならないぞ」

「確かにそうですわね、しかし私に水で挑もうだなんて…。いいでしょうその挑戦受けて立ちますわ!

『水球』」

 先日言っていた水球だ!26個ある!

「『水弾』」

 相手も同じく水弾を生成!でも数が少ないけど。

 マリの水球に対し、半分程度、だが一つ一つが大きい!

 結局相手に当たることなく、お互いの水は弾けて流れる。

「『うねる波』」

 膝上ほどまでたまった海水が波に形を変え、マリを飲み込む。

「させませんわ」

 正面一人分の海水の操作を奪い取り、波を落ち着かせる。


ザザーン!


マリの両側を二股に分かれた波が通り過ぎた。

もう太もも辺りまで海水が満たされている。


「今ので倒せるとは思っていないが、流石だな!」

「そちらこそ、これほどの量を供給するだなんて、まだ二回戦ですわよ?大丈夫かしら?」

「安心しろ、先祖代々伝わるこの宝石でいくらでも供給可能だ!」


 相手は最初に作った舟に乗って海水を操っている。

 マリもその水を利用してはいるが、魔力操作はともかく放出量には相手に分があるようだ。

 さらに舟の分、水から構築した場、と、相手に分がある。


「これならどうかしら」


 マリの腹から胸や肩を通って、両手に光が導かれ、

「『ウォーターカッター』!!」


 勢いよく圧縮された水の直線がナサカに遅いかかる!

「甘い、」


 ナサカは海水で5mは有ろうかという壁を作る。

 圧縮された水は途中で勢いが止まり、海水の壁に吸収される。


「水は水には勝てない」

「・・・それは貴方も同じことではなくて?」

「ふっ、だがお互い人である以上、地の利というものが大きいだろう」

「それはどうかしら」

「しかしだ!その年でその技術、素晴らしいと思うぞ!」

「どうもお褒め頂き光栄ですわ」

「なぁ私も先祖代々続く水の家系…、マリ、お前も我が家に入れ!!」


・・・


「は?」



「カガミ、どういうこと?」

「いや、俺も流れがよくわからないが、要は俺と結婚しろって言ってるんじゃね?」

「なるほど。・・・なるほど?」



「えーと、ずっと突っかかってきていらしたのはもしかして、私のことが気になっていたと?」

「いやっ、同じく魔法を極めんとする者ならば!同じ道を行くのも当然のことで!」

「フッ、フフッ…」


 マリは何故か笑い出す。もう胸元辺りまで水が溜まっている。


「オーッホホホッホ、でも残念ですわぁ!わたくし、せめて自分より強い殿方でないと興味がもてませんわ!!」

 マリはわざとらしく大声で言った。


「七太郎、呼ばれてるぞ?」

「えっ、どういうこと?」



「ならばそれを示そう『渦潮』!」


 海水が渦を巻き、マリが飲み込まれる。

「さらに!渦の中心部に至った対象を!『ウォーターハンマー』!!」

 水で形作られた槌を中心にぶん投げるナサカ。

 バッシャーン!!


・

・

・



「・・・マリ上がってこないぞ」

「大丈夫か?」

「んーあの海フィールドなんか白く濁ってる?」



ザバァッ!!


マリが水底から上がってきて水面に手を着き、立ち上がった。



「カガミ、すごいことに気付いちゃった!」

「・・・なんだ?」

「マリ、水に浸かったのに縦ロールが崩れてない!」

「お、おう、そうだな!」


「わたくしの縦ロールは特製ですの、濡れたくらいじゃ崩れませんことよ」

 声を震わせながらそう言った。



「き、聞こえてる!?」

「マジか!?」



 そして水面を一歩一歩、歩いてナサカに近づいていく。小刻みに震えているところが不気味さを醸し出している。


「・・・なっ!『水弾』」

 パァンッ!


「なかなか楽しませてくれましたわね、礼を言いますわ『氷球』!!」

「なんの!『ウォータージェット』!!なに?舟が動かない!?」

 氷球がナサカの舟を破壊し、海水に沈む。


「うぁっ、お、泳げないんだぁっぷ、あっあっ」

「あらあら、水使いが泳げないだなんてあきれてものが言えませんわね」


「勝者マリ!」



-----



「な、なななななたろうさん・・・」

「七がおおいんじゃね?」

「マリどうしたの?って唇真っ青!!」

「暖かいものをなにか・・・」

「食堂でなにか」

 カガミにガシッと肩を掴まれ「お前は待っておけ、俺のが早い」と言うと走っていった

 冷え切ったマリに七太郎はくっつかれる。

「ああ…七太郎さん暖かいですわ…」






-----

後日談




「ナサカ水の家系って言ってたけど、興味はなかったの?」

「あのですねぇ七太郎さん。そもそもあの方のは自力の水じゃないですもの、邪道ですわね。それと、私は自分で道を切り開いてきたんですもの。レールを惹かれるのはまっぴらですわよ」

「そっかー、マリらしくてかっこいいね!」

「当然ですわ」




-----


「なんで水の中に入って髪型崩れなかったの?」

「オーッホッホホ、この間、髪を下ろした姿を見られたのは一生の不覚でしてよ!

それ以来魔法で固定しているんですの!」

「え!なんで!?魔力もったいなくない!?」

「見られるのが恥ずかしいからでしてよ…」


 恥ずかしがるポイントが分からない…!


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