1 ここはどこですか?
・・・
部屋の扉から出たはずだったのだが、
そこは知らない街だった。
後ろからドンッと衝撃。
「おう、にいちゃん突っ立ってないで先に進みな!」
「あ、す、すみません…」
慌てて小走りで先に進む。
一体何なんだ?
邪魔にならない程度に進んだところで後ろを振り返る。
すると、自分の家や部屋などは影も形もなく、光が明滅している輪のようなものとそこから出てくる人のようなものが目に入る。
光の輪の裏には何もないように見えるが、突如その何もない空間から、老若男女問わず、学生のような男子、会社員?かと思われる人、しゃれた服を着た老人。大きな荷物を背負った青年。様々な人が現れる。
その光景になんとなく姿形こそ違えども、駅の自動改札機のようなものかと思った。そして何故か自分もそこから出てきたのかとも理解した。…納得はしてないが。
しかし実際問題そんなものが開発されただなんて、ネットニュースでも聞いたことが無いし、自分の部屋と繋がっているなんて不具合にもほどがあるだろう。
辺りを見渡すと、どうにも違和感があるというか違和感だらけだ。
地面はコンクリートじゃないし、人々も服装も現代的というよりは少し時代の遡った洋服という感じだ。さっきの光る輪についてもライトは付いてなく、輪そのものが光を発しているようだった。
これは夢かもしれないと頬をつねったがちゃんと痛いし。
あ、そうだ。ネットニュースで思い出したが、スマホを部屋に置いたままだ!
とにもかくにも光る輪に戻れば自分の部屋に戻れるかもしれないと、踵を返す。
ガッ、と腕を掴まれた。
「無賃でゲートに入ってはだめだよ?」
一目見て明らかに管理人(駅員?)の様であった。
「す、すみません」
慌ててポケットをまさぐると財布はあった、良かった。
慣れない手つきで小銭を取り出そうとするが、
「それは共通通貨じゃないね?」
「え」
・・・
「あ、間違って持って来ちゃったみたいです、すみませんもう行きますから」
「ちょっと待ちなさい…」
管理人が止めるのも聞かずにそそくさと立ち去る。
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歩き続けながらどうしてこんなことになったのだろうかと考える。
ただ、部屋から出ただけなのに
たまたま今日家から出ようとしていただけなのに。
周りを見ても、以前見たことのある商店街の風景とは似ても似つかないし。
なによりも
空が、広い。
なるほど、ビルや建物がほぼないのか。
商業施設のようなものは有るが、看板はあれども電光掲示板はついてない。
ああ、光る輪でも思ったがそもそも電気が通ってない?
空が広い理由もそれか、
電線がない。
遠く遠くの山まで見える。
米粒ほどの鳥が飛んでいるのも見える。
ちょっと昔の田舎?いや、それにしてはやはりあの光る輪の違和感は説明がつかないな。
しかしその辺りに出ている屋台の雰囲気などは古き時代を連想させる。
またその香りが食欲をそそるが。先ほどの会話を思い出す。
・・・
首をブンブンとふり、とにかく離れることにした。
しばらく歩くと先ほどの商店街らしき通りを抜け、民家が立ち並ぶエリアに来る。
やはり家も昔の田舎という印象が強い。
木と土でできた家。屋根の形は平らなものが多いが、もちろんコンクリートなどではない。
民家の間を抜けていくと公園のようなものが目に入る。
一息つきベンチに腰掛ける。
久々に歩き続けて正直疲れた。
この後はどうすればいいのだろうか。
お金が使えない以上、生きるためには自分で獲物を取るか、
・・・盗むしかない。
手っ取り早い方法だが、自分にできるのか…?
想像しただけで手が震える。手で手を抑えながらお腹に押し付け、荒くなった呼吸を必死に押し殺す。
いや、今はまだ多少空腹だし喉が渇く程度のこと、その先を考えるのはまだ先で良い。
とにかく街中にいる以上は極端な行動は避けるべきだ、街を抜け、遠くの、そう山のほうまで行けば水も何かしらの食べ物もあるだろう。
今、動けるうちにだ。
ベンチから立ち上がる。
公園から出たところで目に留まったものが、
「自動販売機…?」
とは言っても、お金を入れてというところは似ているが、構造はもっとシンプルな感じである。
「あ、でもそもそも通貨が違うのか…」
そこでよからぬことが頭をよぎる。
万が一、万が一だけれど貨幣の大きさ、重さが同じならもしかしたら使えるのではないか?
日本でもウォンを500円と同じ重さにするという事件があったじゃないか。
正直悩むに悩んだが、この切羽詰まった状況なので試しに一回だけやってみることに決めた。失敗しても成功しても今回だけ。
500円
ガッ、そもそも穴に入らなかった。
100円
チャリン…、投入口に入るだけは入ったが反応は無し。
10円 自分はこれが本命だと思っている。
チャリン…、反応なし
「は~…やっぱりだめかあああ」
後ろに人が通ったので、素知らぬ顔をして関係ありませんよとばかりに口笛を吹く真似をする。
そして、通り過ぎたところを見計らって、
自販機の下を覗き込む
無い、無い、こっちにも無い!
がっくりうなだれて諦めることにするしかなかった。
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再び山に向かって歩き続ける。
とぼとぼと俯きながら、考えながら歩く。
「これはまるで異世界に来てしまったようじゃないか」
…口に出すと自分で自分に腑に落ちた。
異世界。
でもなんだ?だからといってもご都合主義に魔法が使えるわけでもスキルを与えられるわけでもなく、ただ、異世界に来た。というだけである。
しかも通貨が違うとかもはやどうしたらいいのかわからないレベル。
あれ、とも思う。何故か日本語だけは通じている。
むしろそれがさらに混乱を誘う。確かに!確かに、伝わらないよりはいいけれども!
神様的なものがそこだけフォローしてくれたのならもうちょっと何かあっても良いよね。
はぁ…。ため息をつく。
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元の場所でも歩いたことのない位に歩いた。
足に疲労がたまり、今すぐにでも座りたいくらいに。
それこそ横になったらすぐにでも寝てしまえるくらいに。




