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最終話 観測の外へ

未来は、決まっているのか。


それとも――


決めるものなのか。

 光の裂け目が、広がっていく。


 空間が、崩れる。


 音もなく。




 形もなく。


 ただ、“世界が剥がれていく”。


 トシノリは、その中を進んでいた。


 ルルの手を、しっかりと握って。


 「……戻れるのか?」


 小さく聞く。


 ルルは、少しだけ笑った。


 「さあ」


 一拍。


 「でも」


 その目が、まっすぐになる。


 「進むしかないでしょ?」


 トシノリは、軽く笑った。


 「違いねえ」


 足を止めない。


 迷わない。


 それが、自分で選んだ道だから。


 その時。


 “声”が響いた。


 ――対象、離脱確認。


 あの声。


 観測者。


 トシノリは、足を止めないまま言った。


 「まだ見てんのかよ」


 ――観測は継続される。


 無機質な声。


 だが、前とは違う。


 ほんのわずかに。


 “変化”があった。


 トシノリは、前を見たまま言う。


 「好きにしろよ」


 一拍。


 「でもな」


 その声が、少しだけ強くなる。


 「俺は、俺のままだ」


 沈黙。


 そして。


 観測者が、初めて問いを投げた。


 ――なぜ、予測を拒否する。


 トシノリは、少しだけ考えた。


 そして。


 答えた。


 「拒否してるわけじゃねえよ」


 一拍。


 「選んでるだけだ」


 その言葉は、静かだった。


 だが、強かった。


 ――選択は、誤差である。


 「違うな」


 即答だった。


 トシノリは、振り向かない。


 だが、はっきりと言う。


 「それが、人間だろ」


 沈黙。


 長い。


 深い。


 そして。


 観測者が、再び言う。


 ――理解不能。


 トシノリは、少しだけ笑った。


 「だろうな」


 一拍。


 「だから面白いんだよ」


 その瞬間。


 空間の裂け目が、大きく開く。


 光が、溢れる。


 出口。


 “外側”。


 ルルが、トシノリを見る。


 その目は、優しかった。


 「ねえ」


 「ん?」


 「怖くない?」


 トシノリは、少しだけ考える。


 そして。


 正直に答える。


 「怖いよ」


 一拍。


 「でもさ」


 ルルの手を、少しだけ強く握る。


 「それでも進むって決めたんだ」


 ルルは、静かに微笑んだ。


 「そう」


 一歩、踏み出す。


 トシノリも、続く。


 光の中へ。


 その瞬間。


 世界が、変わる。


 風が吹く。


 音が戻る。


 空が広がる。


 “現実”。


 元の場所。


 だが――


 どこか違う。


 トシノリは、空を見上げた。


 「……なあ、ルル」


 「なに?」


 「まだ見てると思うか?」


 ルルは、少しだけ空を見てから答えた。


 「ええ」


 一拍。


 「でも」


 トシノリを見る。


 その目は、柔らかかった。


 「もう、“同じ見方”じゃない」


 トシノリは、少しだけ笑った。


 「そっか」


 空を見上げる。


 どこまでも広い。


 終わりのない空。


 その向こうに、何かがいるかもしれない。


 だが。


 もう、怖くはなかった。


 「……いいぜ」


 小さく、呟く。


 「見てろよ」


 一歩、踏み出す。


 未来へ。


 まだ決まっていない道へ。


 ルルが、隣に並ぶ。


 その距離は、もう変わらない。


 そして。


 二人は、歩き出す。


 観測の外へ。

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