【第1巻発売記念SS】帰りを待つ兄妹(シリウス視点)
「追放された元聖女ですが、宿屋の女将始めました!」1巻発売中!
発売を記念したSSになります。
第36話 元聖女と暴竜のちょっと後のお話です。
「ミサキおねぇちゃんいっちゃったね」
「そうだな」
ルーナと二人で王都のある方角の空を眺める。
いきなり押しかけてきた教会と騎士団。
もの凄く怒った様子で暴れたリュウの兄貴。
王都へ飛んでいったリュウの兄貴を追うために魔王様とミサキ姉ちゃん。
次から次へと色んなことが起こって正直わけがわからなくなる。
「みんな、だいじょうぶだよね?」
オレの腕を掴んでいたルーナの手に力がこもる。
「大丈夫に決まってる。ミサキ姉ちゃんだぞ? きっとリュウの兄貴を止めてくれるさ」
精一杯の笑みを浮かべてオレはルーナの頭を撫でた。
オレを庇ってくれたあの時のように今回もミサキ姉ちゃんは迷うことなく行動した。
勿論、子供一人と国が相手じゃ規模が違うしリュウの兄貴も本気のドラゴンの姿でヤバいことになってるけど、遠い場所まで一瞬で移動できる凄い魔法が使える魔王様が一緒にいる。
きっと大丈夫。みんな揃って帰ってくるはずだ。
「だから心配するなよ。オレたちは今できることをやろうな」
残された問題もあるし、ぼーっとしてる場合じゃない。
リュウの兄貴にボコボコにされた教会や騎士団の連中は戦意を失った。
でも、そのまま放置しておくわけにもいかず、ララの姉御達が武器を没収して少し離れた洞窟に移動させている。
見張りをつけてしばらく警戒をしておくって言ってた。
避難してきた人の中にはまだ興奮して血の気が多い人もいるから離しておくのは正解だ。
オレみたいに追い詰められて普段は考えられないような荒っぽいことをしないとも限らないし。
「わかった。じゃあ、マリオおにぃさんのおてつだいする!」
「そうするな。人が増えたせいで炊き出しするメシの量も増えちまったしな」
「ルーナも野菜の皮剥きするよ」
「お前には包丁はまだ早いから野菜を洗う係な。おっきなタライで沢山洗うんだぞ」
「えー」
不満そうに頬を膨らませるルーナだけど、尻尾が左右に揺れてるいるから本気で嫌がっているわけじゃない。
今日は少し暑いし、ちょっとした水遊びみたいなものだと考えると楽しみなんだろう。
いつまでも悩んだり考えたりするより体を動かした方が気が紛れるからな。
もう、じっとしてうじうじ悪い未来を想像するのはやめだ。
ルーナと一緒に厨房へと向かうとマリオさんが無駄のない動きで忙しそうに歩き回っていた。
「マリオさん。野菜の下ごしらえをオレ達に任せてよ」
「おまかせあれ!」
『それは助かります。手が足りずに腕を増やすかどうか悩んでいたところでしたので』
今の発言は冗談だよな?
例え話をしているだけで本気で改造しようとしているわけじゃないと思いたい。
ムカデの足みたいに腕を沢山生やしたマリオさんをイメージして少しだけ気分が悪くなる。
「って、変な想像してる場合じゃないな。さっさとメシを作ってみんなに食べさせないとな」
腹いっぱいになると幸せな気分になれる。
今のオレはミサキ姉ちゃん達のおかげで生きるための知恵を学んだ。
料理の手伝いだってその一つで、野菜の切り方も教わった。
これからもっと勉強してもっともっと出来ることを増やしたい。
だって、それが恩返しになると思うから。
「ううっ……。目に滲みる……」
『あぁ、しまった。玉ねぎを切るコツをまだ教えていませんでした』
この後、目を真っ赤にしたオレは悲しんでると勘違いしたルーナから頭を撫でられるのだった。
くそっ。次こそはリベンジして、帰ってきミサキ姉ちゃんにカッコいいとこ見せてやるからな!
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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