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6-2 遅い帰り

 リリカが結界を直しに行くといってから、すでに時は夜になっていた。

 家の中では、アレクとロゼが帰りを待っていたものの、その遅さにさすがに心配になり始めていた。


「なあ、リリカの奴あまりに遅くないか?」


 ロゼが心配そうにアレクに訊ねた。


「確かに、結界を直しに行くといった割にはまだ帰ってこないもんな」

「誰かに誘拐されてしまったとか、そういうことはないのか?!」

「さすがに、あいつも誘拐されることはないだろ」

 

 余裕を装いつつも、アレクも体をそわそわさせていた。

 リリカが結界を直しに行くといったものの、まだ実際には結界は直されていなかった。いまだ山の中は結界が張られていないまま裸の状態である。

 アレクはリリカが直してくれるからいいだろうと放置していたものの、さすがにここまで遅くなってしまうのは何かあるのでと考えざるを得ない。

 

「リリカが結界を張らずにどこかに行ってしまったのか?」

「確かにドジをする奴ではあるけど、そんな忘れっぽくはないだろ」

「ここで、敵側に寝返ってしまったという可能性はないのか?」

 

 アレクは一瞬考えを巡らせる。


「いや、それはないだろ。そう簡単に寝返るようなやつではないだろ、あいつは」

 

 アレクはきっぱりと答えた。アレクの表情には動揺は一切なかった。

 そのアレクの表情を眺めて、ロゼはふっと笑った。

 

「信頼しているのだな」

 

 ロゼはつぶやいた。

 

「ん?」

「いや、なんでもない。しかし、そうなるとリリカは誰かに襲われたと考えた方がよさそうだな」

「まあ、そういうことになるよな」

 

 ロゼたちは冷静になる。

 戦いに身を置いてきたものにとっては当たり前といっていい光景なのだ。仲間が何者かに襲われてしまった、そういうことは、魔王討伐の際によくある話だった。特にリリカは、見た目がちっこいせいか、よく標的にされがちだった。その時にいつもアレクとロゼともう一人のパーティメンバーで助けに行っていた。

 

「考えられるのは、侵略者がもう一人いたということだろうか。最初の一人はおとりだったとして、本当はそこで結界を破った後にもう一人で奇襲を仕掛けるといった感じか」

「ずいぶんとえぐい作戦を思いついたな。まあデベルならやりかねないな」

 



 ロゼはうなずく。リリカほどの魔導士を倒せる人物は侵略者しかいないだろう。

 それは二人の間でも当たり前に持っている認識だった。腐っても魔王討伐に同行した大魔導士である。そう簡単にやられることはない。


「せっかくの人を捨て駒扱いにしようとする考えはいただけないが、やはり厄介なことだな」

 

 そう言うなり。ロゼはそのまま立ち上がった。

 

「それでは、私はリリカを探して来ることにするよ」

「一人でいいのか?」

「もともとそういう約束ではないか」

 

 アレクは昼の約束を思い出す。リリカを襲うことができるだけの刺客が来ているのだとすれば、それはロゼが戦うには十分な相手だった。ロゼも緊張感を漂わせながらも、顔は笑いを隠しきれていなかった。

 

「相変わらずだな」

「任せろ。私がリリカを助け出して来る」


 それだけ言ってロゼは行ってしまった。味方のピンチとは言うものの、彼女の胸の中では、もうすでに強敵と戦うためのテンションが出来上がっていた。足取り軽いままにロゼは外へと飛び出して行った。


「待っていろよー!」


 外からロゼの叫び声が聞こえてくる。ひとり賑やかな声がだんだんととざかっていく。アレクはその声を聴きながら、一人静かに微笑んだ。

 ロゼが行ってしまうと、家の中にはアレク一人だけが残された。誰もいない部屋の中は妙な静けさに包まれている。

 すっかり3人でいることに慣れてしまったアレクにとっては、そんな静けさが、物足りないように感じてしまっていた。


 首を横に振って考えを吹き飛ばす。

 

「まあ、大丈夫だろ」

 

 半ば自分に言い聞かせるようにつぶやきながら、アレクは2人の帰りを待つことにした。膝の上でキャロットを抱き続けていたアレクは、知らぬ間にそのまま眠りについてしまっていた……


 そうしてじわじわとアレクのもとに影が忍び寄ろうとしていた。


お読みくださりありがとうございます!

(手違いで先に一話分早く投稿してしまったタイミングがございます。申し訳ございません)


ゾンビもので、最初に部屋を出た人ってたいてい……


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