エピローグ
本日、2話同時更新しています。
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「ああ、なんて素敵なの……!」
目の前で妹が瞳をきらきらさせてうっとりしている。
「素敵……? まぁ、そう言えなくもないけれど……彼の相手をするのはかなり面倒よ」
私の言葉を既に聞いていない様子で、マドリガーレは自分の思索にふけっていたが。
しばらくして肩を落とすと口を尖らせる。
「ソラとじゃ、とうていこんな物語のような恋愛は、できそうにない気がするわ」
私はソラの元気で明るく無邪気な笑顔を思い浮かべた。
「そうねぇ……でもまだ彼は子供なのよ。十五歳でしょう? 私とパストが思いを通じ合わせたのは二年前で、彼は既に二十一歳だったわ。そのくらいになればソラだって大人になってくれると思うのよ」
私が頑張って妹を励まそうとしたが、ノックもせず許可も得ずに勝手に入室してきた者が、私の頑張りをぶち壊してくれた。
「アリィはそう言うけれど、僕がアリィを生涯の伴侶だと決めたのは十歳だし、プロポーズをしたのは十五歳だったけれどね。そう考えると、ソラはまだまだお子ちゃまだと言わざるを得ない。今後の成長に期待できるかどうかも不明だと思うよ?」
「パスト! 酷いわ、もう!」
「あ、パスト、色々聞かせてもらったわ。あなた、そんな腹黒いところがあったのね」
「腹黒いって、人聞きが悪いなぁ、マーレ」
「でも、アリィお姉さまがしっかりなさっているから心配ないわね。私も……夢見るような恋がしたいなぁ」
「ひとつ大事なアドバイスをしよう」
「なあに、パスト」
「パスト、やめて、あなたのアドバイスなんて怖すぎるわ」
「恋愛は、必ずしも男の方から仕掛けなけりゃならないってことはない。しかも相手が年下ならば尚更」
「そ……うなのかしら? うん、そうね、そうかもね。でもやっぱり女の子の方からいくのは、はしたないかしら? それに恥ずかしいし……」
「ねぇ、マーレ、待って、よく考えてみて」
「そんな悠長なことを言ってられる時間があるかどうか、考えてみてね。きみたちに残された時間を……また元老院が何か言ってくるかも知れないことも、考慮に入れて、ね」
「分かったわ、パスト。ありがとう! 私、よく考えてみるわ! お姉さまもありがとうね。すっごく参考になったわ! 私、頑張ってみる!」
「あ、マーレ、ちょっと待って! ……ああ、行ってしまったわ。あ、なんか廊下でぶつかった音がする……はぁ、酷いわ、パスト、マーレを煽るなんて」
「きみの妹はまだまだ夢見がちな少女だね。それに思い込みが激しいタイプだな」
「あら、婚約前の女の子はみんなそうよ。私だってあなたとの婚約が決まった時に、こんなに早くその期間を卒業しなくちゃいけなくて嘆いたもの」
「えっ、そうなの?」
「そうよ。誰かさんのせいで、夢見るお年頃を堪能させてもらえなかったわ」
「うっ……! ご、ごめんよ、アリィ」
「ふふっ」
「え、まさか冗談?」
「さぁ、どうかしら。それよりも、マーレの思い込みが激しいという点の方が心配ね。あの子は元々、両親の恋物語に憧れて魔法長官を目指したようなものだもの。今度は私達の話に憧れて、ソラにどんなことを求めて暴走するか……」
「くすっ、そうかも知れないね。マーレがどんなことをしてくれるのか、楽しみだよ」
「まぁ、酷いわ、パスト」
「それにしても……ああ、つまらないなぁ、ソラが帰っちゃったよ。次はいつ来るのかな」
「あら、パスト。ずいぶんソラのこと、気に入ったのね」
「そうだね。彼は育成が楽しみな対象だし、魔力の研究にちょうど良いんだよ。次から次へと何か新しいものを見せてくれそうだし、興味が尽きないね」
「またあなたの悪い癖……研究オタクの部分が出てきたのね」
「誤解だよ、アリィ。僕はオタクじゃないってば。ただ、色々先々のことを考えてるだけだよ」
「そう」
「あ、なに、そのどうでも良さそうな返事!」
「ソラは魔法長官になってくれるのかしら。それとも……」
「それは、これからだね。きみが妹の心配をするのは分かるけど、ソラが何を選ぼうと、マーレは自分の力で考えて行動できるよ」
「……そうね、きっとそうよね……」
「僕もソラに教えるのを頑張るから。きみはマーレを支えてあげると良いよ」
「ありがとう、パスト」
「僕達は婚約者だ。協力するのは当然のことだよ」
「ありがたく思うのだけど……なぜかしら、あなたには別の目的がありそうな気がするのだけど」
「いやぁ、気のせいだよ、僕の愛しいアリィ」
「ほら、やっぱりそうなのね」
「本当にきみは第一家の嫁に相応しいよ! きみとこんな関係になれたことが、今でもまだ夢のようだよ」
「二年も経っているのに、まだそう言うのね」
「当然だよ。日々きみがそばにいる人生に感謝しているよ。きみと巡り会えた幸運にも、ね」
「ふふっ、私もそう思っているわ……マーレとソラも、そうなってくれたら良いのだけれど……」
「見守っていくしかないんじゃないかな……人は、幸せになろうと思ったら自分で頑張らなければならないのだから。もちろん運もある。他者の助けが欲しい時もあるかも知れないし、場合によってはお呼びでないような横やりも、結果的には必要だったなんてこともあるかも知れない。でも結局は、何があろうとも自分達でなんとかしていかなくちゃならないだろう」
「そうね……きっとそうなのね」
「だから僕らは彼らを見守っていこう。そして必要な時にアドバイスをしたり、手を貸してあげたりすれば良いんじゃないかな」
「ええ、そのとおりね……私、マーレとソラの幸せを祈っているわ」
「僕もだよ、僕の愛しいアリィ」
「ありがとう、私の愛するパスト」
間章1 薔薇とスミレとマーガレット End
ここまでお読みくださってありがとうございます。
間章1はこれで終わります。
次の章は8日間空けて、6月15日(金)からです。
本編に戻り、ソラとマーレの物語、第2章になります。
題名は『ソラとマーレの綺麗な魔力』。
人物紹介ページとプロローグと第1話の、3話同時更新します。
楽しみにお待ちいただけたら幸いです。




